HOME5. 政策関連 |日本の温室効果ガス排出量削減の中間目標、「45%減(2013年度比)が有力」との報道。20日の地球温暖化対策本部会合で協議へ。経産省は「抵抗」。菅首相のリーダーシップ問われる(各紙) |

日本の温室効果ガス排出量削減の中間目標、「45%減(2013年度比)が有力」との報道。20日の地球温暖化対策本部会合で協議へ。経産省は「抵抗」。菅首相のリーダーシップ問われる(各紙)

2021-04-10 00:09:38

sugaキャプチャ

 

 各紙の報道によると、政府は2030年の我が国の温室効果ガス排出量目標について、「2013年度比45%減」を軸にする方針を固めたという。20日に開催する地球温暖化対策本部の会合で協議するとしている。22日に米国主催で開催する「気候リーダーズサミット」に向けて、米国からの目標引き上げ要請等も踏まえたとみられる。ただ、経済産業省は35%程度の引き下げにとどめる主張を続けているとされ、菅義偉首相のリーダーシップが試される局面だ。

 

 共同通信等が報道した。政府は、菅首相が昨年10月に、「2050年ネットゼロ」目標を打ち出したことを受け、長期目標達成のための具体策の検討を進めている。一方で「50年目標」を実現するには、中間目標としての2030年目標の改定が求められる。現行の目標は「13年度比26%減(パリ協定のNDC目標)」となっている。

 

 政府は当初、経産省がエネルギー基本計画の改定を夏に予定しているため、30年目標の改定については、11月の国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)までに定めればいいとの考えだったとみられる。しかし、米国は今月のリーダーズサミットの前に、「野心的な」中間目標を打ち出す方針を示し、カナダも追随する方針を示した。

 

 すでに英国は68%削減を決め、独仏イタリア等が加盟するEUも55%削減を決定している。このままでは、G7の中で日本だけが旧来の緩い中間目標のまま、という事態が想定されている。政府はグローバルな気候変動対策の急進展を受け、日本が「ラガード(のろま、ぐず等の意味)」の汚名を着る可能性が濃厚になったことへの危惧を強めたと思われる。http://rief-jp.org/blog/112795?ctid=33

 

 「気候リーダーシップ」を掲げるバイデン米政権からも、日本政府に圧力がかかっているともみられる。気候対応が、まさに政治的危機に転じるリスクが現実化しているのだ。

 

 ただ、報道では「45%減」案を、温暖化対策本部に提示して協議する、との表現となっている。石炭火力発電の維持を重視する経産省が「35%減」にとどめる声も根強いとしている。加えて、目標数値の高低の議論だけでなく、目標を実現する政府の対策の中身も従来とは異なってくる可能性がある。

 

 従来の目標設定では各省庁が自分の所管行政の中での削減対策を積み上げて、政府案とする方式だったが、今回の提案のように、グローバル水準に合わせた目標を設定することになると、各省庁による現行政策の延長線ではなく、新たに追加削減策を上乗せする必要が出てくる。そうなると、政府全体での調整が求められ、まさに菅首相のリーダーシップが問われる。

 

 一方で、「45%減」の場合でも、基準年が2013年度という点が妥当かとの議論が残る。13年度は2011年3月11日の東京電力福島第一原発事故後、一時、原発が全基停止となり、発電量を確保するため石炭火力発電をフル稼働させていた年でもある。同年度の排出量は14億1000万㌧と過去最大に膨らんでおり、同年度を基準にすると削減率を実態よりも高く見せることになってしまう。

 

 国際的に整合性のある目標設定を掲げるのならば、EU等が基準年とする1990年度比での削減率を併記するべきだろう。13年度の排出量は90年度比で10.5%増となっている。