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ブリンケン米国務長官、気候問題を外交課題と位置付け。「石炭依存や森林大量伐採国は、米国と同盟国の『声』を聞くだろう」と警告。ブラジルや豪州等を想定か。日本は「回避(?)」(RIEF)

2021-04-20 21:36:18

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  米国務長官のアントニー・ブリンケン(Antony Blinken)氏は19日講演し、「主要なエネルギー源を石炭に依存したり、大量の森林伐採を続ける国は、米国やそのパートナーからの声を聞く(警告を)だろう」と述べ、気候変動対策や生物多様性保全に反する国々への外交的働きかけを強化する方針を強調した。市場では、オーストラリア、ブラジル等が「レッドカード」の候補と目されている。

 

 ブリンケン氏は、  バイデン米大統領主催の「気候リーダーズサミット」の開催を前にして、「アメリカのグローバル気候リーダーシップ:危機に挑戦し、機会をとらえる」と題して、メリーランド州アナポリスで講演した。

 

 同氏は気候変動問題を国の安全保障問題として位置づけた。米国は世界の人口の4%で、グローバルな温室効果ガス排出量の15%を占める。従って、国内での対策を十分にやれば、気候危機への対処に大きな貢献ができる、としたうえで、「しかし、たとえ米国が明日にもネットゼロを実現したとしても、他の85%以上の排出を解決することはできず、気候変動との闘いに負けるだろう」と指摘。

 

 そのうえで、同氏は「気候変動に対して十分な行動をとらない他の国に対して、われわれは外交政策で挑戦するだろう。自国のエネルギーの大層を石炭に依存し続けるような国々や、あるいは新規の石炭火力事業に投資したり、大量の森林伐採をするなどの国々に対しては、米国やそのパートナーから、そうした行動がどれだけ環境に有害な影響を与えているかということを聞くことになるだろう」と述べた。

 

 特定の国を名指したわけではない。だが、現状で石炭火力等にエネルギーの大半を依存している国々(日本、中国、オーストラリア等)、石炭火力を新設計画を続けている国々(日本、中国、東南アジア諸国等)、森林伐採を続ける国々(ブラジル、インドネシア、マレーシア等も)の国名が、聴衆に浮かんだかもしれない。あるいは、オイルサンド産業の維持のため、2030年改定目標を低位にとどめたカナダもその一つに入るかもしれない。

 

 同氏が他国の気候対策の不十分さを見過ごしさないと強調する理由には、気候変動問題がすでに外交・安全保障問題に転じているとの認識を踏まえたものだ。気候変動に対する政府の対応力が弱く、かつ資源が限られている国々の間では、すでに気候紛争が起きており、それがさらに激化する勢いだ。

 

 同氏は「気候変動の影響に脆弱ですでに危機に直面する国々は、国際赤十字によると20カ国に達する。そのうち12カ国ですでに武力衝突が生じている」と指摘した。気候変動の激化によって、飲料水資源が枯渇し、人口の増大をカバーできない国が増え、国内での衝突や対立が増大、さらに隣国との紛争激化にもつながっている。

 

 大国同士の軍事対立も気候変動の影響を受けている。同氏は、今年2月にロシアのタンカーが北極海の北回りコースを初めて航行したことを例に挙げた。最近まで北極圏航路は年間数週間しか通れなかったが、北極圏では世界平均より2倍のスピードで温暖化が進行しており、航路の利用期間は増大する。「ロシアはこの変化を踏まえて、北極圏の軍事基地を近代化するなどの動きを見せている。中国も北極圏でのプレゼンスを高めている」と警戒感を示した。

 

 気候変動によって難民の増大も想定される。昨年だけで大西洋では過去最大の13個のハリケーンが襲来した。中南米では680万人の人々が住宅を失い、多くの農地が打撃を受け、飢餓状態を蔓延させた。すでに貧困レベルにある人々が災害の増大で、すべてを失い、難民化することになる。彼らは苦難の旅に臨んで、米国の国境を目指し、米国の安全保障課題を提起しているとした。

 

 ブリンケン氏はこうした実例を指摘したうえで、「国務省は気候危機を、外交政策の全ての要素に織り込むだろう。あらゆる機会をとらえ、気候課題を我々の盟友やパートナーとともに、国際機関等と連携して(行動を起こさない国に)働きかけていくだろう」と続けた。「バイデン政権は『他の国々』の気候変動での進展を、悪い行動を許してもらうための『チップ(免罪符のようなもの)』とはみなさない」とも指摘した。

 

https://www.state.gov/secretary-antony-j-blinken-remarks-to-the-chesapeake-bay-foundation-tackling-the-crisis-and-seizing-the-opportunity-americas-global-climate-leadership/