日本の2030年目標は「46%削減ではなく、50％削減」。バイデン米大統領が「気候サミット」の閉幕演説で指摘。当初は「60％削減」と言い間違い（RIEF）
2021-04-24 19:11:02
気候リーダーズサミットを主催したバイデン米大統領は23日、2日間の会合を総括し、「すべてのリーダーたちが気候変動の脅威に適応するための新たなコミットメントを公表してくれた。サミットは11月の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議（COP26）へのスタートとなった」とサミットの成功を強調した。各リーダーたちへの賛辞の中で、日本の2030年目標について、「50％削減」と評価した。
バイデン大統領は会議の総括演説で、米国自身の50～52％削減（2005年比）の2030年目標の達成のために、米国の労働者、雇用、インフラ、より強く、レジリエントな経済への投資の実施を、改めて強調した。それに続いて、「2カ国の偉大なパートナー国の『野心的な目標』を歓迎する」として、日本とカナダの2030年目標を賞賛した。http://rief-jp.org/ct8/113517?ctid=71
まず、日本については「私のグッドフレンドである日本の菅首相は、（30年目標を）60％に削減すると表明した。（失礼）13年比で50％削減だった。（それでも）現行の目標よりほぼ倍増だ」と語った。バイデン大統領は昔から失言が多いため、「Gaffe Machine（失言製造機）」とも言われる。「60％削減」は明らかに間違った。それを即座に訂正したが、訂正内容は、日本国内で広く理解されている「46%削減」ではなく「50％削減」とした。
「いつものように」バイデン大統領が、さらに言い間違ったのか、あるいはひょっとして日本には「50％削減」を期待していたので、つい、口に出たのか。
そう思って、日本の目標表明の部分についての日本の官邸の発表と、米ホワイトハウスの発表文を比較してみた。
日本の発表は「2013年度から46 %削減することとし、さらに、50%の高みに向けて挑戦を続けていく」。ホワイトハウスの発表文では「Japan will cut emissions 46-50% below 2013 levels by 2030, with strong efforts toward achieving a 50% reduction, a significant acceleration from its existing 26% reduction goal」。https://www.whitehouse.gov/briefing-room/statements-releases/2021/04/23/leaders-summit-on-climate-summary-of-proceedings/
英語では「46%～50%」の幅の中で、明らかに「50％削減達成に強い努力をする」ことに力点が置かれている。バイデン氏は「60％減」は言い間違いだったが、この英文に基づく認識ならば、その後の訂正は正しかったといえる。「46%～50%」と先行きの目標を設定すると、目指すのは最大「50％」とみるのは国際的な常識でもある。
日本と並べて言及したカナダについても、バイデン氏は「もう一人のグッドフレンドのトリュドー首相は、2005年に比べて45%削減するとした」と述べている。トリュドー氏が「40～45%削減」と表明した上限値をとっている。http://rief-jp.org/ct8/113538?ctid=71
問題は、日本の首相官邸が現時点（2021年4月24日夕方）で、サミットでの菅首相の表明についての英訳を公表していない点だ。一国の首相の対外的発言の英語版が2日経っても、HPに掲載されないこと自体、先進国の政府として、お粗末としか言えない。仮にホワイトハウスの発表文と異なり、「46%減」に力点を置いた英文を掲載するようだと、日本への信用問題になる可能性もある。
官邸の官僚たちは、「50%の高みに向けて、挑戦を続ける」と、“文学的表現”で、首相のメンツを保ち、国民に期待をもたせたつもりかもしれない。気候サミットで国際的に「50％削減」と認識されたことを踏まえ、国内でも「50％削減」が目標と強調するか、あるいは、米国に「実は46％減です」と訂正を申し入れるか。一国の首相の国際的表明だけに、あいまいにはできないだろう。
https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/statement/2021/0422kaiken.html
Research Institute for Environmental Finance