主要7各国（G7）気候・環境相会議、途上国向けの石炭火力事業向け公的ファイナンス停止の提言で、日本が「抵抗勢力」に。強引に例外規定盛り込みへ。小泉環境相が主導（RIEF）
2021-05-22 16:12:14
主要7カ国（G7）気候・環境相会合は20～21日に英国主催でオンラインで開催した。各国は、パリ協定が示す「1.5℃目標」の達成を目指すことで一致するとともに、途上国の石炭火力発電事業等の国際的な投資は、「排出削減対策をしていない石炭火力発電は直ちに停止し、政府の新規の公的ファイナンスも、ODAを含めて年末までに完全に停止することを約束する」ことをコミュニケに盛り込んだ。ただ、日本政府が最後まで強く反対し、「例外規定」を付した。海外の報道では「世界最大の石炭火力ファイナンス国の一つである日本がG7合意を阻止した」と指摘している。
日本からは小泉進次郎環境・気候変動担当相のほか、梶山弘志経済産業相らが参加した。したがって、石炭火力発電の海外輸出と、それに対する公的ファイナンス継続の例外規定の挿入は、環境・経産両省の共同歩調ということになる。
「日本の抵抗」は、主催の英国が作成した「国際的な石炭火力発電事業への公的なファイナンスの停止」提案に向けられた。国際エネルギー機関（IEA）が18日に公表した「『2050年ネットゼロ』に向けたエネルギー部門のロードマップ」でも、「新規の化石燃料供給事業への投資や、新規石炭火力事業のための最終投資判断等を現時点（2021年）で停止」を提案している。
英提案は、「国際的な炭素集約な化石燃料エネルギーへの新規の直接政府支援をフェーズアウトしていく」というもの。さらに「排出削減対策をしていない石炭火力発電は直ちに停止し、政府の新規の公的ファイナンスも、ODAを含めて年末までに完全に停止することにコミットする」としていた。
英Guardian紙によると、「日本の抵抗は2日間の会合を通じて繰り広げられ、最後の段階まで続いた」としている。同紙は「世界最大の石炭火力ファイナンス国の一つである日本は、『もしわれわれがファイナンスを止めれば、中国が海外の石炭火力事業市場に進出するだろう。中国の石炭火力は日本のものより効率が悪い』と主張した」と明かしている。https://www.theguardian.com/environment/2021/may/21/richest-nations-agree-to-end-support-for-coal-production-overseas
日本以外の米国を含むG7諸国は、英提案の石炭火力ファイナンスの停止をコミュニケに入れることで一致した。しかし、日本の強硬な主張とメンツを汲む形で、コミュニケに「各国（途上国）の裁量に基づく限られた環境の場合を除いて（except in limited circumstances at the discretion of each country）」との例外規定を付けることとし、ようやく日本は頷いたという。
英BBCの報道は、英政府の見解として、日本に対して、11月の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議（COP26）までに、再考することを期待しているとするとともに、ある英政府筋の声として「これで本当に地球を保護することとなるのか？自分たち（の利権）を守りながら、地球も守れるいうのか？」と日本の真剣さに疑問を示すコメントを紹介している。
フランスの環境相のBarbara Pompili氏は「G7として国際的な石炭事業への公的ファイナンスの完全停止で一致したことを歓迎する。石炭は『過去のエネルギー』であり、『未来のエネルギーミックスには居場所はない』ことを世界に告げるもの」と合意を評価した。また「日本にとっては難しい決断だっただろうが、日本が一歩踏み出したことを歓迎する」とコメントした。
ジョン・ケリー米大統領気候特使は「 米国は『1.5℃目標』と整合する、石炭火力のフェーズアウトを含む政策を推進する。『排出削減をしていない（unabated）』とはCCS技術を装備していないとの意味であり、米国はこうした石炭火力事業は段階的に廃止する」と述べた。
途上国への石炭火力発電事業を支援し、公的ファイナンスも供与している代表的な国は、中国、日本、韓国のアジア3カ国。このうち、韓国は4月のバイデン米大統領による気候リーダーズサミットに際して文在寅大統領が、すべての海外での石炭火力事業への新規ファイナンスを停止すると公約したとされる。このため、日本と中国の対応が問われている。今回のG7での日本の主張を踏まえると、仮に中国が公的ファイナンスの停止を打ち出すと、日本も反対の論拠を失うことになる。
Research Institute for Environmental Finance