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2030年の電源別発電コスト試算、太陽光発電(事業用)が原発発電を3割近く下回る。経産省が試算で初めて認める。今夏のエネルギー基本計画に反映の方向(RIEF)

2021-07-12 18:15:03

Solar000キャプチャ

 

 経済産業省は12日、2030年時点の電源別発電コストの最新試算結果を公表した。それによると、太陽光発電(事業用)のkW時当たりの発電コストは8円台前半まで下がり、原子力発電のコストよりも約3割安くなる。経産省が太陽光発電コストを原発より安くなることを認めたのは初めて。石炭火力発電は太陽光より約4割高となる。同省は今夏にまとめるエネルギー基本計画に反映させる。

 

 新たな試算は12日開催した総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)の発電コスト検証ワーキンググループで示した。試算は2030年に新規に発電設備を建設・運転した際のコストを機械的に算出したとしている。

 

 その結果、太陽光(事業用)は8円台前半~11円台後半となる。これに対し、原子力は11円台後半以上で、太陽光のコストが最も安い場合は3割弱安くなる。太陽光(住宅用)も9円台後半~14円台、陸上風力9円台後半た17円台後半と、立地条件によってはともに原子力よりも安くなる。

 

2030年の電源別発電コスト試算
2030年の電源別発電コスト試算

 

 2020年からのコスト低下率は、太陽光(事業用)が3割強、太陽光(住宅用)約5割減、陸上風力5割以下と、そろって大幅に下がる。一方、原発はほぼ同じコストで推移するとした。原発は2015年の試算では10.3円だった。その後、東京電力福島第一原発事故を受けた安全費用を上乗せしたため、20年のコストは1円強増加の11円台後半となっている。

 

2020年の電源別発電コスト試算
2020年の電源別発電コスト試算

 

 石炭火力は20年に比べて約1円の増加。天然ガス(LNG)火力は20年から変わらず、10円台後半~14円台前半で推移するとしている。この結果、経産省がコスト試算した15種類の電源のうち、太陽光(事業用)が最も安く、ついで太陽光(住宅用)、陸上風力、ガスコジェネ、中水力、LNG火力、原子力の順となった。最もコストが高いのはバイオマス専焼(29円台後半)、次いで洋上風力(26円台前半)だった。

 

 ただ、発電量に変動性のある太陽光等を系統接続する場合の「統合コスト」(火力発電の効率低下や、揚水発電のコスト等)を、太陽光や風力のコストに上乗せすると、太陽光(事業用)は15円台~20円台に増大する。陸上風力も20円前後となる。これらの追加コストを考慮すると、依然、原子力が安くなる計算だ。政府が再エネの系統接続で優遇策を講じるかどうかだ。

 

 今回の試算では、「2050年ネットゼロ」の政策実現に向け、再エネ電源のコストダウンを認める一方で、原子力は「実質的にコスト安」だと依然、示したともいえる。LNG発電の割安感も示しており、「再エネ」「原発」「天然ガス」のエネルギーミクスを目指す政策意図が透けて見える。

 

https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/mitoshi/cost_wg/2021/data/07_05.pdf