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中国の全国温室効果ガス排出権取引制度(C-ETS)、16日から取引開始。電力事業を対象。最初の取引価格は52.78人民元(約900円)。対象CO2排出量規模はEU-ETSを抜き世界最大に(RIEF)

2021-07-16 20:50:22

CETSキャプチャ

 

  中国が準備してきた全国版のCO2排出権取引制度(C-ETS)が16日、正式に取引を開始した。上海の上海環境能源交易所では午前9時30分から取引が始まり、最初の取引でCO2の排出権が1㌧当たり52.78人民元(約8.17㌦=約900円)で取引された。取引量は16万㌧、取引金額790万人民元(1億3400万円)だった。事前の価格予想のトン当たり30~50人民元を上回った。ただ、EU-ETSのEUA価格は53ユーロ(約6900円)前後で、8分の1の水準。

 

 中国政府は今年2月に同制度の実施を宣言、制度の対象となる電力部門の企業2225社の登録等をスタートさせた。今回はそれらの企業による排出量の多寡を調節するための取引に移行した。http://rief-jp.org/ct5/110380

 

 C-ETSは排出権の取引を上海市の上海環境能源交易所とし、登録プラットフォームは武漢市に設置している。取引時間は平日の午前中の9:30-11:30と午後の13:00-15:00。初取引となったこの日は、北京、上海、武漢で制度開始を祝うセレモニーが開かれた。

 

 取引初日の提示カーボン価格は48人民元。売買オファーの結果、初取引価格は9.9%高で成立した。初日ということもあってか、買い注文が多く、一時制限値幅の上限(ストップ高)水準まで上昇する場面もあったという。

 

 始動したC-ETSはEU-ETSをモデルにしている。ただ、EUのように最初から複数の産業を対象として全排出量の半分近くをカバーする制度とはせず、中国のCO2排出量の4割を占める石炭火力発電中心の電力部門を対象としている。制度の進展を見極めたうえで、建材、石油化学、化学、非鉄金属、製紙、航空の他の業種を、段階的に取り込むとしている。

 

 取引対象となった電力会社は、温室効果ガスの年間排出量がCO2換算で2万6000㌧以上の企業。各社の2019-2020年の排出量を把握、それに基づくグランドファザリング方式で排出枠が定めた。景気の上昇等で排出量が増え、ベンチマークを上回る場合は、ベンチマークを下回る事業者から余剰のカーボン・クレジットを購入する。

 

 取引対象は当面、電力事業に限定する。中国の電力業界の年間CO2総排出量は約40億㌧で、電力業界だけで、EU-ETSの対象産業全体の排出量の約20億㌧の約2倍に相当する。今後拡大を予定する鉄鋼など他の7業種も含めると50億㌧超と膨らむ。対象事業の排出量ベースでみると、C-ETSは世界最大のETSになる。

 

 ただ、取引価格がEU-ETSより大幅に低かったのは、排出枠規制自体がそれほど厳しくないことと、余剰クレジットの買い手企業より、売り手企業が多かったためとみられる。今後、中国当局が電力会社の石炭火力発電所からの排出量規制を強めるとクレジット価格が高まると予想される。

 

 中国では、習近平国家主席が昨年9月に2060年までの温室効果ガス排出量ネットゼロを国際公約し、2030年にはCO2排出量についてもピークアウトするとしている。

 

https://www.globaltimes.cn/page/202107/1228833.shtml

http://www.xinhuanet.com/english/2021-07/16/c_1310065311.htm