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日本板硝子、傘下の英企業の工場で、ガラス製造窯での燃料を天然ガスから水素に転換する実証実験に成功。世界初の「CO2フリー・ガラス」の開発に道(RIEF)

2021-09-06 22:50:19

Pilkingtonキャプチャ

 

 日本板硝子(NSG)は、傘下の英企業Pilkingtonの事業所で、ガラスの製造に水素エネルギーを使った実証実験を成功させ、建築用ガラスを製造したと発表した。水素でガラスを製造したのは初めて。ガラス製造はCO2排出量の多いことで知られるが、「CO2フリー・ガラス」の製造はガラス産業を「炭素集約産業」から脱皮させる技術ブレークスルーとなりそうだ。

 

 (写真は、ガラス製造の燃料を水素に転換した英セントヘレンズのガラス製造工場)

 

 NSGは2020年11月から、英政府が推進するCO2削減の工業燃料転換計画の一つである、英北西部でのHyNetプロジェクトに参画している。今回、英政府の補助金520万ポンド(約7.5億円)の補助を受け、8月後半の3週間の間、実証実験を実施した。HyNetは、同地域の産業、一般家庭、交通機関からのCO2削減に取り組むことで3万3000人 の雇用創出、40 億ポンドの投資、1億㌧のCO2 削減を目指している。

 

 実験はグループ企業のPilkingtonのリバプール市地域のセントヘレンズにあるグリーンゲート事業所で実施した。現行のガラス製造は天然ガスを主燃料としてガラス溶融窯で製造するが、その際に大量のCO2を排出する。そこで天然ガスに代えて水素を燃料としてガラスの溶融を実施した。

 

 実証実験の結果、天然ガスと水素という2つの異なる燃料間の切り替えをシームレスに行うことに成功した。これにより、同社グループで使用しているフロート窯を大幅に改良しなくても、燃料を水素に切り替えることで、従来の製法と同様の優れたガラスの溶融性能を達成でき、ガラス溶融窯からのCO2排出量を大幅削減できることを確認したとしている。

 

 今回、実証実験で水素燃料への切り替えを確認したセントヘレンズの工場では、1952年に世界の板ガラス製造の革命と称されたフロートガラス製造法を開発した場所でもある。SGNでは、ガラス産業史上、画期的な製法を生みだした同じ工場で、水素製造を成功させたことは「世界のガラス産業にとって、もう1つの重要なマイルストーンになった」と評価している。

 

 ガラス製造業からのCO2排出量は窯業(ガラス、陶磁器、レンガ等合計)全体でみると、わが国の場合、産業部門全体の8%前後とされる。炭素集約産業の水素燃料への転換は、ガラス製造以外でも鉄鋼業等で取り組みが進んでいる。

 

 NSGグループは、中期ビジョン「高付加価値の『ガラス製品とサービス』で、社会に貢献するグローバル・ガラスメーカーとなる」目標を掲げている。それを受けた3年間の中期経営計画「リバイバル計画24」では、年率2%のCO2排出量削減を打ち出している。これらの積み上げにより、2030年排出量を2018年対比で21%削減とする、としている。

https://www.nsg.co.jp/ja-jp/media/ir-updates/announcements-2021/ag-production-powered-by-hydrogen

https://hynet.co.uk/hynet-achieves-world-first-as-100-hydrogen-fired-at-pilkington-uk-st-helens/

https://www.energylivenews.com/2021/08/26/liverpool-to-produce-glass-using-hydrogen-in-world-first/?__cf_chl_jschl_tk__=pmd_z0M_0.014D6SDviOF9TwN2sF1oJGBlRoQ5dkS3UzzrA-1630935328-0-gqNtZGzNAmWjcnBszQcl