出水興産、子会社での太陽光パネル製造事業から撤退。中国勢の安値攻勢に勝てず。政府の「エネルギー基本計画案」での太陽光発電主電源化案について3つの構造的課題を指摘(RIEF)
2021-10-13 00:03:31
出光興産は12日、100%子会社で太陽光パネルメーカーのソーラーフロンティア(SF、東京)による太陽光パネルの生産を2022年6月をメドに停止すると発表した。政府が「6次エネルギー基本計画」案で太陽光発電を主電源化するとしているが、同社はその課題として、①設置場所の限界②FIT後の発電所の大量閉鎖とパネルの大量廃棄③系統電力システムの需給安定化問題、を指摘した。いずれもこれまでも指摘されてきたが、政府の対応が不十分で日本の再エネ市場の構造的欠陥になっている。
(写真は、来年6月で太陽光パネルの生産を停止するソーラーフロンティアの宮崎県の国富工場)
SF社は2007年から太陽光パネルの生産に取り組み、2011年に国富工場(宮崎県国富町)での生産を開始していた。同工場はCIS薄膜パネルを年間600万枚程度の生産能力を持つが、競合する中国企業などの安価な太陽光パネルに押されて、苦しい状態が続いていた。
今後は、パネルについては、中国など海外のパネルメーカーによるOEM(相手先ブランドによる生産)の調達でまかなう。出光では、「エンドユーザーに安定した安い電力を供給できるのであれば、国産技術のパネルで国産エネルギーを供給するというこだわりを捨てる」と言明した。SF社自体は「次世代システムインテグレーター」に転換し、国富工場はその中核拠点として活用するとしている。
パネル製造事業からの撤退を打ち出した出水の判断で注目されるのが、日本の再エネ市場の課題を浮き彫りにして、事業転換を図る姿勢だ。プレスリリースでは「我が国が太陽光発電を主力電源化していく上で大きく3つの課題があると認識しております」と政府のエネルギー基本計画案の課題を特筆した。
第一が、設置場所の限界。メガソーラー建設に適した用地はほぼ利用されており、近年は建設による森林伐採や土砂災害など地域社会の環境や景観への影響が社会問題になっている。今後は地域社会と共生した、これまで設置が困難と思われていた場所を開拓していかなければならない。
第二は、発電所の長期安定利用と太陽電池パネルの大量廃棄問題。日本の太陽光発電は500kW以下の小規模な発電所が全容量の4割を占め、これらのうち適切なメンテナンスが施されずにFIT期間終了後に閉鎖される発電所の数は相当数に上る懸念がある、と指摘。そうなると2050年のカーボンニュートラル実現に必要な再エネ電力の供給量に支障をきたす。また寿命を迎えた太陽電池パネルの大量廃棄が社会問題となる。
第三は、太陽光等の再エネ電力を接続する系統電力システムの需給安定化への影響だ。現在、太陽光発電が増えすぎると、電力会社による出力抑制が実施されているが、太陽光を主力電源として更なる導入を進めるには、昼間にしか発電せずしかも天候に左右される太陽光発電を、系統電力システムと共存させ安定電源として活用できる仕組みが求められる。
同社ではSF社をこうした3つの社会課題に具体的な解決策を提示できる次世代システムインテグレーターに転換させるとしている。たとえば、設置場所の課題克服のために、これまで施工費が高く設置対象外となっていた陸屋根の建物に従来の半額の工事費で設置できる新たな工法、既築の大波スレート屋根の葺き替え無しでも設置可能な新工法、駐車場スペースを発電所に変えるビルトインカーポートなどを提供していくとしている。