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フランス、フィンランド等の原発推進派の欧州10カ国、気候対策とエネルギー価格対応を指摘し「原発推進」の共同記事を主要紙に掲載。EUタクソノミーへの盛り込みを主張(RIEF)

2021-10-13 11:53:20

Finland001キャプチャ

 

  フランスをはじめとする欧州の10カ国の環境・エネルギー相が12日付の欧州の主要新聞で、気候危機への対応と最近のエネルギー価格の上昇を受けて、「原子力はそれらのソリューションの一部にならねばならない」と主張する意見記事を掲載した。意見の中心は、EUのサステナブルファイナンスのタクソノミーに原発を盛り込むことにある。日本の岸田政権の布陣も「原発推進シフト」と指摘されるが、欧州の原発推進派の勢いはさらに高まっている。

 

 (写真は、フィンランドのオルキルオト原子力発電所の最終処分場)

 

 ドイツのDie Welt、フランスのLe Figaro、イタリアのLa Repubblica等の各紙に掲載された意見記事は「なぜ欧州は原子力を必要とするか」との見出しで始まる。フランスのブリュノ・ル・メール経済・財政・産業相のほか、フィンランド、ポーランド、ハンガリー、チェコ、スロバキア、ルーマニア、スロベニア、ブルガリア、クロアチアの各関係相が署名している。

 

 気候変動と闘うために、エネルギー独立性を達成するために、最善の資産に立脚するために、欧州経済を脱炭素化するために、我々は真の野心を持てるか、と読者に問いかける形をとっている。そうした問いを発しながら、「原子力は(それらの)ソリューションの一部になるべき(Nuclear power must be part of the solution)」と指摘している。

 

 原発の安全性については、「原子力は安全でイノベーティブ。60年以上、欧州の原子力産業は信頼性と安全性を証明してきた。欧州では14カ国で126の原発が稼働するが、世界で最も規制されたセクターであり、世界で最も高い安全基準に達している」と強調している。ただ、使用済み核廃棄物の最終処分問題では、「特に廃棄物マネジメントにおいてもそうだ(高い安全基準がある)」とだけ触れている。

 

 そのうえで、操業中に温室効果ガスを排出しない原発を気候対策において、他の低カーボンエネルギー源と同様に扱うべきと主張。EUが現在進めているサステナブルファイナンスのタクソノミー分類作業のDelegated Act(DA)に、原発を盛り込むことを求めている。

 

 「気候変動との闘いに勝つためには、われわれは原子力が必要なんだ。原発は低炭素の未来のために、重要で信頼できる資産だ。原子力は欧州にとって、強い付加価値産業であり、多くの高品質の雇用を生み出し、環境リーダシップを高め、欧州の戦略的な自律性と、エネルギー自給を確かにする。この重要な機会を見逃すべきではない」としている。

 

 EUのサステナブルファイナンス行動計画の土台となるタクソノミー制定作業では、2050年ネットゼロの温暖化目標の達成に向けて、化石燃料の天然ガスと、原子力をどう位置づけるかが焦点となっている。今回の原発推進10カ国大臣の共同記事は、両セクターの取り扱いを巡るEU域内での綱引きで、一般の支持を得るために掲載されたとみられる。

 

 ただ、原発をサステナブルファイナンスのタクソノミーに盛り込むことについては、脱原発を目指すドイツや、オーストリア、オランダ等の国々が反対を示している。旧ソ連のチェルノブイリ原発事故や、日本の東京電力福島第一原発事故等の「予測不可能な事故リスク」に加え、使用済み燃料の最終処分問題がクリアしていない点が大きい。

 

https://tem.fi/documents/1410877/0/Why+Europeans+needs+nuclear+power_+en101021.pdf/1ee99c17-3bd4-e684-64a7-b176c3419758/Why+Europeans+needs+nuclear+power_+en101021.pdf?t=1634025879453