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神戸製鋼、天然ガスより約2倍のCO2排出量の石炭火力発電を新規稼働。国の2030年排出量46%削減公約と整合せず。先進国で新規石炭火力を推進するのは日本政府だけ(RIEF)

2022-02-01 19:03:59

Kobelcoキャプチャ

 

  神戸製鋼所は1日、神戸市灘区で建設を進めてきた石炭火力発電所事業のうち、3号機の営業運転を開始したと発表した。同火力発電の建設を巡っては、地域住民らが神鋼が実施した環境アセスメントを認めた国(経済産業省)の確定通知の取り消しを求める行政訴訟や稼働差し止め訴訟等を提起しているほか、政府が2030年に定めた温室効果ガス46%削減目標との不整合が指摘されている。

 

 (写真は、㊨の煙突が神戸市のど真ん中で新たに稼働した3号機。㊧の煙突はすでに稼働している1、2号機。神戸新聞より)

 

 神戸製鋼は、「3号機については、必要な法的手続きをすべて終え、同機の性能が所定の条件を満足していることを確認、本日、関西電力との間で電力受給契約に基づく 営業運転を開始した」と発表した。3号機は石炭火力としては最新鋭とされる超々臨界圧火力発電設備(USC)だが、CO2排出量は同規模の天然ガス火力より約2倍も多い。

 

 発電規模は65万kWで、全量を関西電力に供給する。既存の1、2号機と3号機を合わせると、総出力は合計205万kWになる。さらに同社は2022年度中にも4号機の稼働を予定している。発電とともに、周辺地域への蒸気利用の熱供給も実施するとしている。

 

 同発電所の建設に対しては、神鋼が実施した周辺環境への影響を検証する環境アセスメント報告書について、経産省が認めた確定通知を取り消すよう住民らが行政訴訟を提起し、現在、大阪高裁で争っている。また住民らは、神鋼などに建設や稼働の差し止めを求める訴訟も神戸地裁に起こしている。

 

 神製の石炭火力発電所計画に対して、反対運動を展開している市民団体「神戸の石炭火力を考える会」は同日、「3号機の営業運転開始で、年間346万㌧のCO2の排出増加が見込まれる。『排出削減対策が講じられていない(unabated)』通常の石炭火力を、2030年以降も長期に稼働させ、脱炭素社会の実現に大きく逆行し、国際的信用を喪失する事例」と強く批判する声明を公表した。

  EUは現在、石炭火力よりCO2排出量の少ない天然ガス火力発電の取り扱いをめぐって、域内各国が激しい綱引きをしている。石炭火力は各国とも全廃を前提としており、先進国の中で新規の石炭火力発電建設を推進するのは唯一日本だけ。EUで天然ガスの扱いが焦点になっているのは、2030年の温室効果ガス55%削減目標の達成との整合が問われているためでもある。国の公約を実践するための手段の妥当性が議論になっている。

 わが国の場合も、2030年46%削減の中間目標を国際公約としている。したがって本来、日本国政府は、その目標実現のために個別の発電所等のCO2排出源からの排出量をどれくらいに抑えるかという具体的な「政策」を立案し、国民に示す説明責任を負う。ところが、経産省はそうした政策も、説明も果たさないまま、公約と個別政策のギャップをむしろ拡大する政策を展開している。日本の司法もそうした政策の矛盾を十分に指摘できない状況にあるようだ。こんな政府では、恥ずかしいね。

https://www.kobelco.co.jp/releases/files/20220201_1_01.pdf

https://kobesekitan.jimdo.com/press-release2022-2-1-kobelco-p2-3start/