HOME |南極と北極で先週末、ほぼ同時期に異例な気温上昇発生。南極では平年を40℃以上上回り、北極でも30℃以上。熱帯地域で温められた大気流還流の影響か。海氷・氷床の融解加速化懸念(RIEF) |

南極と北極で先週末、ほぼ同時期に異例な気温上昇発生。南極では平年を40℃以上上回り、北極でも30℃以上。熱帯地域で温められた大気流還流の影響か。海氷・氷床の融解加速化懸念(RIEF)

2022-03-21 22:09:10

pole001キャプチャ

  北極と南極で、ほぼ同時期に、平年を大きく上回る気温上昇が続き、各国の気候科学者を驚かせている。夏のピークを過ぎようとしている南極大陸の南極高原にある観測拠点では今月18日、平年を約40℃以上、上回るマイナス11.8℃の「暖かさ」を記録した。一方、冬のピークを超えた北極でも、北極点近くで平年を30℃上回ったほか、各地で記録的な暖かさになった。熱帯地方で温められた大気流が両極に還流する「Poleward transport」現象によるみられる。気温上昇を受けて、両極の海氷、氷床等の融解が進行する懸念も出ている。

 (写真は㊧が18日の北極の気温、㊨が同日の南極の状況)

 南極で40℃以上の気温上昇を記録したのはコンコルディア基地。同地は海抜3233mの南極高原に建設されたフランスとイタリアの共同基地だ。またロシアのボストーク基地でも同日、この季節では過去最も高いマイナス17.7℃を記録した。これまでの最高気温より15℃高かった。同基地は1983年7月21日にマイナス89.2℃と、地表における世界最低気温を記録している。南極全体での18日の平均気温は1979~2000年のベースラインより4.8℃、暖かかった。

 一方、北極でも同日、北極点近くの複数の観測拠点で平年を30℃上回る「高温」を記録した。またノルウェーでは過去最高気温を、グリーンランドや、北極海の一部であるロシアのバレンツ海にあるフランツ・ヨシフ諸島でも、平年を大きく上回る気温上昇が記録された。18日の北極全体での平均気温は、1979~2000年平均を3.3℃上回った。

何とかして~
何とかして~

 両極でほぼ同時に起きた異例な気温上昇について、各国の気候学者たちは敏感に反応した。米コロラド州立大学の気候科学者のZachary Labe博士は「これらの気候現象は両方とも、熱と湿気が大気流に乗って極方向に循環する『PPleward trasport』現象に関連している。だが今回の現象は非常に異例だ」と注目している。

 オーストラリアのニューサウスウェール大学の准教授のAlex Sen Gupta氏は「南極での異常な高温は、オーストラリアからの強い風が南極に吹き込んだことが影響しているとみられる。オーストラリアから東南極に伸びる非常に強い『Poleward winds』が形成されたことが大きい」と指摘している。
 同じくオーストラリアのモナッシュ大学の気候研究者のJulie Arblaster教授は「大気中の強い気流の流れが、南極東部の高温に影響している。湿気を大量に含んだ大気の流れが南極の一定の地域に集中的に流れ込んだとみられる」と説明している。湿気を含んだ気流が大陸を超えて移動する間に地表から熱を吸収し、流れ込んだ南極の地表の気温を急上昇させたとみられる。
南極高原にあるコンコルディア基地
南極高原にあるコンコルディア基地
 同教授によると、平年だと、この時期の南極の海氷は大陸側に閉ざされているが、今年は、その多くがすでに海洋に流れ込んでいるという。暖かい大気の流れによって海氷の氷床からの分離が促進されている可能性があるかもしれない。同教授は「海氷の流出と異常な高温との間には興味深い関連性がありそうだ」と指摘している。
 今回の南極での気温上昇は、今月15日くらいから始まり、現在も継続している。特に南極東部の気温上昇が著しい。南極全体では平年より平均4.8℃の上昇だが、東部の大部分では平均20℃以上の上昇となっている。
 北極では過去10年の間に、平均気温はほぼ1℃の上昇が記録されている。特に北シベリアや、カナダの北極圏地域では、世界の他地域よりも3倍のスピードで気温上昇が進行している。2020年6月にはロシアのシベリアの北極圏内のサハ共和国のベルホヤンスクで、観測史上最高の38.0℃を記録している。https://rief-jp.org/ct4/104019
「Australian Centre for Excellence in Antarctic Science」のMatt King教授は、長期的な気温の記録は、1950年代後半から始まっており、データが不足していることから、熱波の影響を明確に検証するのは難しいと指摘したうえで、「気候危機の影響はこうした気候現象によって『将来を示唆』しているのかもしれない。通常の現象を逸脱するケースが増え、こうした異例な気温上昇等が、より頻繁に起き、常態化する可能性がある」と警告している。

 気候学者たちが懸念するのは、気温上昇によって南極の氷床に生じる溶融化の影響だ。北極の海氷の減少スピードも早まっているが、北極の場合は海氷全体がすでに海に浮いていることから溶融が進んでも海面上昇には直接はつながらない。しかし、南極大陸を覆っている氷床の海洋流出スピードが速まると、その分、海氷量が増え、海面上昇の要因を増やすことになるためだ。

 King教授は、「最近の観測では、南極東部地域での地表での気温上昇による氷床の溶融と、沿岸地域での降雪分のソフト化(溶融化)現象がみられている。過去50年間、北極圏で起きてきたような気温上昇が南極の未来にも起きそうだ」と懸念を示している。北極圏でのノルウェー領のスヴァールバル諸島では、今月に入って、異常は気温上昇の影響で海氷の急減現象が起きている。

 http://www.karstenhaustein.com/climate

https://geography.name/poleward-transport-of-heat-and-moisture/

https://twitter.com/ZLabe/status/1505713610110107648?s=20&t=EpNG8RtYawcvAQU0O9iUtg