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気候変動の適応策の遅れと緩和策事業の影響が問われた茨城県常総市の水害裁判。水戸地裁は、国の河川管理に問題があったとする原告住民の主張を認め、4000万円賠償金支払いの判決(各紙)

2022-07-22 15:48:33

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  各紙の報道によると、2015年9月に起きた関東・東北豪雨で、茨城県常総市で鬼怒川の堤防が決壊して、市内の約3分の1が浸水、15人(災害関連死を含む)が死亡した水害の原因として、国の河川管理に不備があったとして、住民らが国に約3億6000万円の損害賠償を求めた訴訟で、水戸地裁(阿部雅彦裁判長)は22日、国の責任を認め、約4000万円の賠償金の支払いを命じた。

 

 朝日新聞等が伝えた。「関東・東北豪雨」では、常総市内で鬼怒川の堤防が決壊し、市内の3分の1に相当する約40㎢が浸水した。その結果、13人の災害関連死を含めて15人が死亡、53軒の家屋が全壊、1591軒が大規模半壊した。

 

記録的な豪雨で氾濫した鬼怒川=茨城県常総市、2015年9月10日=朝日新聞から
記録的な豪雨で氾濫した鬼怒川=茨城県常総市、2015年9月10日=朝日新聞から

 

 原告の訴えによると、決壊した河川から大量の水が流入した常総市若宮戸地区では、歴史的に砂丘が自然の堤防になっていたが、掘削時に河川管理者の許可を必要とする河川区域に国が指定していなかったことから、太陽光発電事業者による掘削で堤防としての機能が失われたと主張した。また堤防が決壊した上三坂地区では、堤防の高さが不十分だったのに、国が改修を急がなかったと指摘していた。

 

 若宮戸地区では、2014年3月ごろから自然の砂丘を太陽光発電事業者が掘削し、地盤が低くなった場所から河川の水があふれたとされる。原告は、国は砂丘の場所を「河川区域」に指定して開発を制限しておくべきだったのに怠ったと主張した。

 

 堤防が決壊した上三坂地区では、他の流域と比べても堤防が低い状態にあり、国は優先的にかさ上げすべきだったのに放置したと訴えていた。

 

 原告側の主張に対し、国側は、若宮戸地区で掘削された砂丘には、元々、堤防としての役割はなく、河川区域として指定しなかったことが過失とは言えないと反論。上三坂地区についても、堤防整備は過去の災害や川の上下流のバランスなど、多様な観点から検討して優先順位をつけて整備を進めてきたと反論していた。原告の主張は「堤防の高さのみをことさら重視するもの」と指摘していた。

 

 気候変動対策である太陽光発電事業の推進策と、気候変動の影響である適応対策のバランスが問われた裁判として注目されていた。

https://digital.asahi.com/articles/ASQ7P4R5JQ7PUJHB002.html