ルラ・ブラジル政権、アマゾンの森林伐採阻止計画を発表。違法伐採禁止の法規制強化。300万haの保護区新設、衛星も活用し違法伐採監視強化。違法使用のチェーンソーの買い上げも（RIEF）
2023-06-06 12:49:05
ブラジル政府は5日、2030年までに世界最大の熱帯雨林地帯のアマゾンでの森林伐採を減少・阻止する計画を発表した。違法伐採に対する法的規制を強化する。300万haの保護区を新たに設定するほか、連邦警察による監視拠点を増やし、違法伐採の監視員を1600人配置する等だ。ルラ大統領は「気候変動の緩和と森林伐採の抑制の両面でブラジルのグローバルリーダーシップを回復していく」と述べた。
環境NGOらの衛星データ解析によると、「地球の肺」と呼ばれるアマゾン流域の自然植生は、1985年以来の37年間で、全体に占める自然植生の損失割合が19%に達している。自然植生の損失が20～25%に達すると、その地域は科学的に元の自然に回復することが不可能になるとされる。すでにアマゾンの森林消失は深刻な状況に陥っている。同地域全体での森林のネットでの損失率は10％に達している。https://rief-jp.org/ct12/131074?ctid=
特に前任の右派のボルサナロ前大統領が、アマゾンでの森林伐採、農場転換を奨励してきたことで、1985年時点ではアマゾン地域の6%に相当する約5000haが森林から牧畜用の草原や農場、鉱業、都市建設等に転換されていたのが、ボルサナロ政権下の2021年には2.5倍の全体の15%、約1億2500万haに達している。
今年1月に就任した左派のルラ大統領は、こうしたアマゾンの保全を真っ先に打ち出した。ボルサナロ政権時代の2021年、ブラジルは2030年までにグローバルに森林伐採を停止するための140カ国以上が参加する協定に参加しながら、実際には森林伐採を推進する政策を展開していた。ルラ氏は同協定に基づく森林伐採の停止を政策の柱に据えると宣言した。
具体的な森林伐採停止のための政府の行動計画として、関係閣僚10数人で構成する「The Action Plan for the Prevention and Control of Deforestation in the Amazon （PPCDAm）」を立ち上げた。PPCDAmは、2027年のルラ氏の大統領任期終了時まで活動を続ける。
同計画では、違法伐採等の環境犯罪の監視のために、監視員増員によるチェックのほか、衛星を使って定点監視等を展開する。特に衛星監視では、グローバルな気候変動の抑制に効果があると考えられる森林適正管理のために、監視対象地域の登録制度等を活用する。悪化した森林の発見を進め、現地の植生での回復を図る。森林保全や持続可能な森林管理のために、地域住民等も参加できる経済的インセンティブも導入するとしている。
森林伐採のためにこれまで使用されてきたチェーンソーや、違法な金採掘等のための掘削機等を回収するため、有料で買い上げる措置も導入する。さらに、アマゾン地域からの森林、家畜、その他の農産物等の追跡システムの導入も計画している。同システムにより、アマゾン原産のこれらの製品等を輸入する国は、該当する輸入品が森林伐採地からの輸入品でないことの証明を求めることになる。
また違法伐採等がなくても地域経済が成り立つように支援するため、持続可能な方法での認証付きの森林製品の生産や、そうした手法を生産者に対して教える技術支援の仕組み、インフラの整備、エネルギーやインターネットの配備、エコツーリズムの促進等にも取り組む。
ルラ氏はこうしたアマゾン再生政策の展開とともに、「現在最も多くの温室効果ガス（GHG）を排出しているのは裕福な国だ」と指摘。先進国が年1000億㌦（約14兆円）を途上国の気候対策のために支援することを約束した2009年の第15回国連気候変動枠組み条約締約国会議（COP15）での「約束の履行を求める」とも語った。アマゾン再生・保全への国際的な金融支援を求めていく考えのようだ。
2025年のCOP30は同国北部のベレンで開かれることが決まっている。ベレンはアマゾン川の河口付近にある港湾都市。ルラ政権が取り組むアマゾン再生・保全対策の成果をCOP30でアピールするとともに、ブラジルが主導する形で、世界に熱帯雨林保護を推進していく考えだ。
Research Institute for Environmental Finance