11月のアゼルバイジャンで開く国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議（COP29）の「ハイレベルチャンピオン」に、同国女性政治家のアルパダライ氏を任命（RIEF）
2024-02-24 22:54:53
今年11月にアゼルバイジャンで開かれる国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議（COP29）の「国連気候変動ハイレベルチャンピオン（UN Climate Change High-Level Champion）」に、同国の女性国会議員の二ガール・アルパダライ（Nigar Arpadarai）氏が就任することがわかった。国民の大半がイスラム教徒という同国は男性優位社会で、今年初めに発表されたCOP29の国内委員会メンバー28人は当初、全員男性だった。各国からの驚きと批判の声を受け、その後、12人の女性メンバーを追加する騒ぎとなった。今回、内外の調整を担当する「ハイレベルチャンピオン」の役目を担うアルパダライ氏も女性で、何とか面目を保つ形だ。
COP29の議長は、同国のエコロジー・天然資源相のムフタール・ババエフ（Mukhtar Babayev）氏が任命されている。同氏は、バクー油田を中心とする産油国の同国の国営石油会社で四半世紀働いた経験のある「オイルマン」。その後、政界に移っている。昨年のアラブ首長国連邦（UAE）ドバイでのCOP28の議長もアブダビ国営石油会社を率いるスルタン・アル・ジャベール氏だったので、2年連続で化石燃料産業界との関係の深い人物がCOP議長を務める形だ。https://rief-jp.org/ct8/141843?ctid=
それだけでなく、各国を驚かせたのはイルハム・アリエフ大統領が今年1月に発表したCOP29のための国内委員会のメンバー28人が全員男性だったことだ。多様性の尊重どころか、女性起用を一切考慮しない人事に、元COP事務局長を務めたコスタリカの女性交官のクリスティナ・フィゲレロ（Christiana Figueres）氏は「ショッキング、かつ受け入れ難い」と形容した。
直ちにビジネス界や市民団体、学界などの女性リーダー75人がアリエフ大統領に対して、ジェンダーバランスを考えた委員会とするよう再考を促す公開書簡を送りつけたほか、欧米の市民団体等も強く反発する展開になった。さすがの大統領も事態の重大さに気づきし、同国の女性国会議員ら12人を気候委員会の追加メンバーに指名し、何とか、バランスを保った。
今回任命された「ハイレベルチャンピオン」は、COPの開催に先駆けて、国内外関係者と調整を担う実務的に重要な役割を担う。そのポストに女性政治家のアルパダイ氏を任命したことで、同国の今回の「ジェンダーバランスの修正」が数合わせだけではないと、対外的にアピールする狙いもあるようだ。
Wikipediaによると、アルパダイ氏は、同国首都のバクー出身の42歳。芸術家の父母を持ち、バクー・ステート・大学で修士号（国際法）取得の後、同国のギリシャ大使館、EU大使館にそれぞれ勤務した。その後、同国の電話会社のアゼルフォン、フォーミュラー1のプロモーター等の経歴を経て、2020年に国会議員となった。
国会では、外交・国際問題・議会間委員会、家族・女性・子供委員会に所属しているほか、欧州評議会の議会で、移民・難民委員会と、社会問題・健康・サステナブル開発委員会に所属している。民間ビジネスでの経験も豊かで、国際情勢にも明るい有能な女性政治家のようだが、経歴を見る限り、気候変動問題に直接、間接に携わったことはないようだ。
世界の気温上昇トレンドが年ごとに明確化し、温暖化の影響による暴風雨・豪雨の強大化、洪水の拡大、森林火災や干害の多発・激烈化等の現象が顕在化する中で、化石燃料産出国と気候被害増大国との対立、先進国と新興国・途上国との摩擦なども加速している。COP自体も、年に一度の気候関連者の「お祭り」の場ではなく、気候変動抑制の成果を上げる場となるかどうかが問われている。
アルパダライ氏が議長のババエフ氏の「右腕」として、2年連続の産油国でのCOP開催を仕切れるかどうかが注目されるとともに、アルパダライ氏には、家族、子どもたちを思いやる女性の視点で、現行の利権・利害の維持を重視する男社会の論理を排して、家庭と未来世代のために、より良い道筋を示すために「舞台回し」をする調整力を期待したい。
（藤井良広）
https://www.edie.net/azerbaijan-names-high-level-champion-for-cop29/
Research Institute for Environmental Finance