温暖化の影響による北半球高緯度地域での永久凍土の融解による温暖化加速の影響と、森林生育の進展によるCO2吸収増大のバランス、後者に軍配。日本の研究チームがデータで示す(RIEF)
2024-12-03 12:54:24
(写真は、 共同研究チームが、米国アラスカ州フェアバンクスの永久凍土上のクロトウヒ林に設置した気象観測タワー)
アラスカやシベリアなどの北半球の高緯度地域に広がる永久凍土が温暖化の影響で溶けると、土壌中のCO2が放出されて温暖化がさらに加速する可能性と、永久凍土の森林が成長してCO2吸収が進み、温暖化に一定の歯止めになる可能性のどちらが、上回るのかという議論があるが、日本の研究チームの観測結果から、CO2吸収が2割ほど上回るとの報告が公表された。大阪公立大学等の共同研究グループが研究論文で指摘した。
研究結果を公表したのは、大阪公立大学大学院農学研究科の植山雅仁准教授、信州大学学術研究院(理学系)の岩田拓記准教授、新潟大学大学院自然科学研究科の永野博彦助教らの研究グループ。国際学術誌「Proceedings of the National Academy of Sciences」のオンライン版で紹介された。
それによると、高緯度地域の生態系のCO2収支は、急速な温暖化、それに伴う水循環の変化、大気中のCO2濃度の上昇等の複数の要因によって変化する可能性がある。そこで研究グループはその実態を探るため、2003年から、米国アラスカ州フェアバンクスの永久凍土上で広がるクロトウヒ林に、森林のCO2吸収力を評価するための気象観測タワーを設置。20年以上にわたって、30分ごとの森林によるCO2吸収量を連続的にモニタリングしてきた。
収集したデータの分析の結果、2013年~2023年間のCO2吸収量は、その前の10年間に比べて約20%増加していることがわかった。吸収量が増大した主な要因は、近年の降水量増加と、CO2濃度の上昇による光合成量の増加であることが明らかになった、としている。温暖化の進行で、地中の永久凍土が解けて、土壌中に含まれた大量の有機炭素がCO2として放出される可能性がある一方で、永久凍土上で生育する森林が気温の上昇や光合成の促進等によって成長してCO2吸収量を増やす可能性の比較で、後者の要因が上回ったことになる。
永久凍土は地球の陸地の約11%を占めている。その生態系は、高緯度地域の温暖化に伴う急速な環境変化の影響を受けやすくなっているほか、低温、短い植生生育期間、ゆっくりとした無機化による栄養分の乏しい状態が特徴とされる。また浅い有効層深度と低い蒸発散量により、水はけの悪い状態にある。こうした環境で、泥炭中に長年にわたって有機炭素を蓄積しているが、温暖化による急速な環境変化により、炭素貯蔵地が炭素放出地へと変化している可能性が懸念されている。
気候変動の影響としては、1971年から2019年の間に、北緯60度以上の地域では、地表気温が10年あたり0.73℃上昇している。地球全体の気温上昇の2倍以上の速さで進行している。温暖化の影響と、低緯度地域からの水分輸送と対流の増加により、高緯度地域では降水量が増加している。アラスカ内陸部やシベリアなどでは記録的な降水量が観測されており、将来の気候シナリオでは、温暖化と湿潤化がさらに深刻化すると予測されているという。
大阪公立大の植山雅仁准教授は「過酷な環境にさらされる観測システムを20年以上に渡って維持管理して高品質なデータを蓄積させることには、相当の忍耐を要した。しかし、毎年のメンテナンス時に目にする極北の原野やオーロラ、研究の展開と共に広がる国内外の研究者とのつながりは、折れそうな心を癒して余りある活力の源となった」と述べている。

































Research Institute for Environmental Finance