英国のウィリアム皇太子。ブラジルでのCOP30に先駆けて開く「国連気候サミットCOP30」に出席へ。先進国首脳が「トランプ配慮」で(?)参加を逡巡する中、リーダーシップ示す(RIEF)
2025-10-12 22:28:45
(写真は、ロンドンの自然史博物館で開いた「COP30へのカウントダウン」の会場に一緒に訪れたチャールズ国王㊨とウィリアム皇太子㊧=英王室サイトから引用)
英国のウィリアム皇太子は、11月にブラジルで開催される第30回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP30)の直前に、国連とブラジル政府の肝いりで開く「国連気候サミットCOP30」への出席を表明した。トランプ米大統領が反気候政策を打ち出し、パリ協定からの離脱を決めている中で、同サミットへの出席は各国首脳にとって、気候対策を堅持するかを問う「踏み絵」のような場になりそうなだけに、スターマー英首相をはじめ先進国首脳は出席を逡巡していると伝えられる。そうした中で、英王室のプリンスが政治家たちに率先して「気候リーダーシップ」を示す形だ。
英紙ガーディアンが報じた。「国連気候サミットCOP30」は、ブラジル・ベレンで11月10日から21日の日程で開催されるCOP30の議長を務めるブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ(Luiz Inácio Lula da Silva)大統領と、国連事務総長のアントニオ・グテーレス(António Guterres)氏が話し合い、COP30の直前に開催を決めた。
ルラ氏は、パリ協定で目標として掲げた気温上昇幅の限度(産業革命前比1.5°C)の突破が確実視される今こそ、各国首脳から気候行動へ再度強いコミットメントを引き出さなければならないとして、COP30直前に開催することを呼び掛けた。先進国の首脳の間で気候変動問題に対する不退転の決意を醸成し、COP30でグローバルな気候政策に取り組む各国の協調の輪を改めて確認する狙いとみられる。

ルラ氏自身はその場で、現状より簡素な国連気候評議会の創設、熱帯雨林の破壊を止めるための資金メカニズム、先進国から途上国に気候資金を譲渡するための国連主導の「ロードマップ」構想を提案する用意をしているとされる。
しかし、トランプ米大統領が9月の国連演説で「気候変動は詐欺話」と主張し、先進諸国に化石燃料の利用継続を呼びかけるなど異例の行動に出たことや、欧州各国でも極右・保守政党等が気候変動問題よりも自国優先政策を打ち出すなどの動きが起きていることもあって、ほとんどの先進国首脳は現時点では、出席するかどうかの態度を明らかにしていない。
パリ協定締結時に国連事務総長だった韓国の潘基文氏は、「世界の指導者たちはCOP30のためにベレンに集まらねばならない。出席は単なる儀礼ではなく、リーダーシップの試金石だ」、「今こそ、より強固な国家目標とそれを実現するための資金を確保する時だ。特に気候危機の影響への『適応』のためにだ」、「世界は見ている。誰が出席したかを歴史は記憶する」と、出席を強く促している。

ウィリアム皇太子の参加表明はこうした状況の中、自国のスターマー首相に先んじて出席を決めた形になる。英国王室ではチャールズ国王(King Charles)が皇太子だった時からずっと環境問題に取り組んできたで知られる。チャールズ国王は、COPにも、2022年は王位に就いたばかりのタイミングだったため、2024年はがん治療に専念するため欠席したが、皇太子時代はほぼ毎回参加してきた。https://rief-jp.org/ct14/135261
同紙によると、英国内では、国王から皇太子へと王室内で環境問題への取り組みが継続されたことで、環境保護団体を中心に歓迎の声が上がっている。ウィリアム皇太子の参加決定でメディアの注目度が上がり、態度を決めていない先進国首脳の参加につながることを期待しているという。
パリ協定が結ばれた2015年11月のCOP21には、195カ国の首脳、科学者、外交官が集まった。米国のバラク・オバマ大統領(当時)も協定成立を受け、「パリは私たちが唯一持つこの惑星を救うための最良の機会を表すものだ」と宣言した。
しかし、昨年のアゼルバイジャンの首都バクーでのCOP29では、先進各国の首脳の姿は乏しかった。米国のジョー・バイデン大統領は大統領選で敗北した直後だったため欠席は仕方ないとしても、フランスのエマニュエル・マクロン大統領も、中国の習近平国家主席も、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長も参加しなかった。

今回のブラジル・ベレンでのCOP30は、パリ協定からちょうど10年の節目での開催だ。新型コロナウィルスのパンデミックやロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格の高騰を境に、主要国での気候変動問題への取り組みの退潮傾向を、ここで収められるのか、あるいは加速してしまうのか。期待と不安が入り混じるCOPとなりそうだ。各国の政治リーダーの動きがあまり見られない中で、次代の英皇室を担うウィリアム皇太子の話題だけが注目を集める「サミット」のままだと、COP自体の盛り上がりも期待できない可能性もある。しかし、その場合でも気候変動は確実に進展していくことになる。
英王室は長年にわたり環境保護と保全への取り組みを堅持してきた。故エディンバラ公は世界自然保護基金(WWF)創設に尽力し、今日まで続く王室による環境リーダーシップの伝統を確立したことで知られる。チャールズ国王も50年以上にわたり、人類と自然の根本的なつながりを強調する活動を展開し、「サステナブル・マーケッツ・イニシアチブ」などの組織設立や、過去のCOPサミット等の会議での基調講演を通じて、サステナビリティ課題に対する世界的な理解形成を主導してきたとされる。
チャールズ皇太子も同様に多くの自然保護慈善団体に関与するとともに、2020年にはアースショット賞を創設し、グローバルに地球を修復・再生するための画期的な解決策を発見し、加速させ、拡大する人々を顕彰する活動も主導している。
(宮﨑知己)

































Research Institute for Environmental Finance