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戴冠式を終えた英チャールズ国王。これまでの環境問題への積極言動から「グリーンキング」となるか、それともウイリアム皇太子が「クライメートプリンス」の名称を継承か(RIEF)

2023-05-09 01:10:33

Charles002キャプチャ

 

  昨年9月に英国王に即位したチャールズ3世英国王の戴冠式が6日に行われ、英国の伝統儀式が内外に伝えられた。国王は気候変動問題をはじめ、長年にわたって環境問題に積極的に関わってきたことから、英国内では歴史上初の「グリーンキング」、あるいは「クライメートキング」誕生の呼び名も出ている。ただ、比較的自由に行動できた皇太子と違い、国王の場合、政治的な意見表明や行動は、政府の制約を受ける。特に気候政策をめぐっては、政治的駆け引きがグローバルに続いている。そこで、新たに期待が集まるのがウイリアム皇太子だ。「クライメートプリンス」の名声を継承できるか。

 

 チャールズ国王は21歳の学生時代(ケンブリッジ大学)に、ウェールズのカントリーサイド委員会に対して、発がん物質汚染のリスクを警告する活動を行ったことを皮切りに、以後、国王即位までの半世紀にわたって、環境問題、気候問題に熱心に取り組み、時に積極的過ぎるとされる発言、行動を行ってきた。そのため、世界でもっとも首尾一貫した「(もっともあり得ない)環境アクティビスト」の一人と呼ばれる。https://rief-jp.org/ct6/95489?ctid=

 

 たとえば、英国が北海沖合いに、汚水を長年放棄し続けながら黙認してきたときの内閣の大臣に対して、皇太子が激怒したことで知られる。その関心は、湿地や野生施物の保全、都市のデザインと建設、有機農業、グリーンビルディング、羊にやさしい羊毛刈り、社会的責任ビジネス、ヘルスケア、電気自動車等多岐に及んだ。環境団体等を顕彰する多くの賞や支援のための財団も設立してきた。

 

「グリーンキング」になるか(?)
「グリーンキング」になるか(?)

 

 ただ、これらの活動が「自由に」できたのは、皇太子時代が長かったからともいえる。国王になっても環境活動を続けられるかとなると微妙だ。すでにそのハードルが示されている。それが国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP)への参加の可否だ。

 

 皇太子時代は、ほぼ毎回、国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP)に参加してきた。特に、2021年に英国・グラスゴーで開いたCOP26では、新たに「Sustainable Markets Initiative」を立ち上げ、エネルギートランジションに積極的なグローバル企業45社を顕彰する活動を展開した。

 

 ところが、昨年9月の即位後、11月にエジプトのシャルル・エル・シェイクで開いたCOP27に出席しようとした国王は、当時のトラス首相から出席を止められた。トラス氏から代わったスナク首相も同様の態度。国王は仕方なく(?)、バッキンガム宮殿に200人以上のゲストを招いてCOPに賛同するイベントを自ら開いた経緯がある。

 

国王戴冠式でのウイリアム一家
国王戴冠式でのウイリアム一家

 

 皇太子ならCOPに出席が出来て、国王ならできないという線引きは、COPの議論が南北間、あるいは先進国間で、政治的な対立が激化していることへの政府の配慮かもしれない。あるいは、途上国での自然資源の乱開発・荒廃等の遠因に、欧米の植民地主義の影響があるとの指摘が近年なされており、国王がCOPに出席するとその「歴史的責任」を問われるリスクを英政府が懸念したとの見方もある。

 

 いずれにしろ、英国王が政治的意見を表明することは政府によって厳格に制限される。国王が政府と対立して自説を押し通すと、17世紀のイングランド王チャールズ一世のように、斬首された歴史的事実もある。そう考えると、国王に「グリーンキング」の役回りを期待するよりも、より自由なウイリアム皇太子に、国王の皇太子時代のような行動力を期待したいというのが英国民の期待のようだ。

 

 ウイリアム氏は2020年の王子時代に、バイオロジストで知られるデビッド・アッテンボロー氏と共同の形で「アースショット賞(Earthshot Prize)」を創設している。グローバルな環境活動を展開しているスタートアップ企業や環境団体等を毎年5団体選んで、各団体に賞金100万ポンド(約1億6000万円)を贈呈する活動だ。https://rief-jp.org/ct12/119300?ctid=

 

「アースショット賞」を立ち上げたウイリアム王子(当時)夫妻
「アースショット賞」を立ち上げたウイリアム王子(当時)夫妻

 

 「アースショット」の名前は、ジョンFケネディ米大統領が米国の月着陸計画を打ち出す際、有名なムーンショットを行い1960年代の米国の技術開発に大きな影響を及ぼしたことにちなむ。同様に、2030年までの10年間にわたり、地球環境を回復させるための取り組みを5分野に分けて顕彰し、技術と熱意の普及を目指すのが狙いだ。

 

 ウイリアム氏は同賞の設立に関して、英国放送協会(BBC)のインタビューで、世界の富豪たちが宇宙ツーリズム競争に興じている状況を念頭に、「世界で最も偉大な頭脳と知性は、地球から移住するための別の星を見つける試みではなく、この惑星を修復する試みに取り組む必要がある」と発言。グローバルに話題を集めた。同発言について、「チャールズとそっくりな言い回し」との評価で、英国民の納得を得た形だ。

 

 ウイリアム皇太子、がんばって!

 

https://www.corporateknights.com/leadership/charles-the-man-who-would-be-climate-king/

King Charles III, the UK’s renewables focussed ‘green king’ (energyvoice.com)

                    (藤井良広)