HOME10.電力・エネルギー |国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)、ブラジルで開幕へ。グテレス国連事務総長、「1.5℃目標」の超過不可避と危機感。化石燃料補助金廃止や「公正な移行」等求める(RIEF) |

国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)、ブラジルで開幕へ。グテレス国連事務総長、「1.5℃目標」の超過不可避と危機感。化石燃料補助金廃止や「公正な移行」等求める(RIEF)

2025-11-10 01:25:41

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写真は、ブラジル・ベレンで開いたCOP30の事前の首脳級会合で発言するグテレス国連事務総長㊨=国連サイトから引用)

 

 国連事務総長のアントニオ・グテレス( António Guterres)氏は、10日からブラジル・ベレンで開く国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)に先立って7日に開催した首脳級会合で演説し、パリ協定が定める世界の気温上昇を産業革命前から1.5℃以下に抑える目標は「遅くとも2030年代前半に一時的に超えることは避けられない」と認めたうえで、「これは道徳的な失敗であり、致命的な怠慢だ」と各国の「野心の不足」を批判した。そのうえで①市場を歪め過去への依存を強いる化石燃料補助金の廃止②移行の中心に人と公正性を据える③送電網・蓄電・効率化へ投資ーーなど5つの分野への迅速な取り組みを各国に求めた。

 

 グテレス氏は、10月に開いた世界気象機関(WMO)での会合で「一つはっきりしていることがある。今後数年間で地球温暖化を1.5℃以下に抑えることはできない」と述べ、「1.5℃目標」の達成は今後、数年間は無理であることを認める発言を初めてした。今回の発言はそれを改めて強調したうえで、10日からのCOP30に向けて、「ではどうすればいいのか」との問いをCOP参加各国・関係者らに示す形をとった。https://rief-jp.org/ct8/161815?ctid=70

 

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 同氏は、各国の気候対策が十分に進展しない一方で、昨年、新規発電容量の90%が再生可能エネルギーによるものだった点を強調。「クリーンエネルギーへの世界投資額は2兆㌦に達し、化石燃料投資を8000億㌦上回った」という「事実」を踏まえ、「再エネは、今や、ほぼ全ての国で新規電力源として最も安価な選択肢となっている。再エネは繁栄の原動力となり、長年暗闇に置かれてきた地域社会に力を与えている」と、エネルギー転換が確実に始まっていると述べた。

 

 さらに「再エネへの1㌦の投資は、化石燃料への投資に比べて3倍の雇用を創出する。今や、クリーンエネルギー関連雇用は世界的に化石燃料関連雇用を上回っている。再エネ革命はすでに始まっているのだ」と、気候政策が政治的要因で足を引っ張られ続けていても、再エネ利用が経済的効率性においても、化石燃料を上回る流れになっているとした。

 

 そのうえで同氏は「しかし、われわれはさらに(再エネの流れを)加速し、すべての国がその恩恵を共有できるよう確保しなければならない」とした。再エネ発電の経済的優位性については、2年前のアラブ首長国連邦(UAE)ドバイでのCOP28で各国が合意した「公正かつ秩序ある公平な方法で化石燃料からの移行を進めること」ですでに確認していると指摘。同合意では、2030年までに再エネ容量を3倍に、エネルギー効率を2倍に高めるとした約束でも合意している。

 

 同氏は、こうした近年のCOPでの成果の積み重ねを指摘し、「再エネ革命はすでに始まっている」と脱炭素化への「希望」を示した。その再エネ革命を後押しするために、「われわれは(その動きを)さらに加速し、全ての国がその恩恵を共有できるよう確保しなければならない」とした。そして、「(われわれの)使命は明確だ。今こそ実行のギャップを埋める時だ」と述べて、5つの分野での取り組み進展を求めた。

 

 各国が取り組むべき分野として、第一に、(気候政策の)明確さと一貫性を提供することを求めた。「公正なエネルギー転換に沿った法律・政策・インセンティブを整備する」ことを求め、その具体例として、市場を歪め過去への依存を強いる化石燃料補助金を廃止する、とした。

 

 第二には、移行の中心に人と公正性を据えること(Just Transition)だ。脱炭素化で転換を求められる石炭・石油・ガスの化石燃料事業に依存する労働者と地域社会を支援するほか、それらの産業のうち、特に若者と女性に向けて、訓練・保護・新たな機会を提供することを求めた。

 

 第三に、送電網・蓄電・効率化へ投資することを求めた。発電分野で再エネ電力が急拡大する中、それらの電力を安定的に送配電するための電力インフラの整備が迅速に追いつかねばならない、とした。

 

 第四に、AI革命を牽引するデータセンターを含む、新たな電力需要の全てをクリーンエネルギーで満たすことを求めた。データセンターの電力需要を化石燃料発電でカバーすることは時代に逆行するとの指摘だ。

 

 第五に、途上国向けに大規模な資金調達を可能にすることをあげている。現在、アフリカが受け取る世界のクリーンエネルギー投資はわずか2%でしかない。途上国でのクリーンエネ転換が進まないと、脱炭素化の将来展望が開けず、先進国の脱炭素化も効果が半減してしまう。途上国の脱炭素化の再エネ投資を進めるため、同氏は「障壁を取り払い、資本コストを削減し、民間投資を呼び込むための国際協力が必要」と指摘した。

 

 これらの取り組みを求めたうえで、同氏は各国に対して念押しの発言をした。「各国の道筋は異なるかもしれない、だが、到達点は同じでなければならない」。それは、「再エネで支えられた『ネットゼロの世界』、その後一貫して続く『ネットネガティブの世界』だ」と強調した。

 

 「われわれは、化石燃料からの移行という約束を実行するために、開発途上国を支援しなければならない。より強力な協力、投資、技術移転を通じて。そして、それぞれの能力や依存度に合わせて調整しながら。公平性を加速の原動力とし、クリーンで包摂的かつ強靭な経済を構築しよう。気候変動対策の必要性を、あらゆる地域における開発の機会へと転換しよう」