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アジア開発銀行(ADB)。地球温暖化によるヒマラヤ山系の氷河融解の影響緩和と適応対策での資金調達で、グリーンボンド1億㌦発行。これまでの合計150億㌦(RIEF)

2026-03-05 02:00:11

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 アジア開発銀行(ADB)は4日、地球温暖化で進行する氷河融解への人々の意識向上を目的としたグリーンボンド1億㌦(約157億円)を発行した。ADBはアジア地域の山岳コミュニティが氷河融解の影響に対する回復力を高めるプロジェクト・プログラムを推進している。調達資金は、ネパールのヒンドゥークシュ・ヒマラヤ地区で、氷河融解による影響を受けている地域のインフラ増強と生計手段支援、統合的な水資源管理、早期警報システム、災害リスク軽減を支援するプロジェクトなどに振り向けられる。ADBは2015年にグリーンボンドプログラムを開始して以来、この地域全体の気候影響の緩和・適応事業支援で150億㌦の資金をグリーンボンドで調達している。

 

 ADBは今回の資金調達を、氷河のモニタリング、リスク評価、レジリエントなインフラ、水ガバナンス等をネパールの国家戦略に統合する ための、ADBの継続的な取り組みポートフォリオを補完するものとしている。資金使途先は、ヒンドゥークシュ・ヒマラヤ地区での適応とレジリエンス策の構築のほか、融解する氷河の水資源を活用した農場開発事業、氷河湖の決壊に対処するレジリエントな河川流域管理、中央アジア地域経済協力(CAREC)水ピラー事業等に充当する。

 

 ADBが今回発行したグリーンボンドは5年物。ボンドは、BNPパリバとモルガン・スタンレーが引受を担当した。ボンドはADBが設定しているグリーン・ブルーボンド枠組みに基づいて発行・資金充当された。発行後のボンドはルクセンブルク・グリーン取引所(LGX)に上場される。

 

氷河が融解してむき出しになった大地と、決壊リスクが高まる氷河湖=ADBの資料から引用
氷河が融解してむき出しになった大地と、決壊リスクが高まる氷河湖=ADBの資料から引用

 

 ボンドの発行に際してADBの財務・リスク管理担当副総裁ロベルタ・カザーリ(Roberta Casali)氏は「今回のグリーンボンドを通じ、ADBは世界の資本を動員し、高山地域における気候適応・水資源管理・災害リスク軽減を強化する。この革新的な発行は、気候圧力が強まる中、脆弱地域コミュニティを支援するADBの決意を反映している」と強調している。

 

 世界的な平均気温の上昇が続く中で、氷河の融解は確実に進行している。ウクライナやミャンマーの「終わりの見えない」戦争の継続、イランでの新たな紛争勃発など、人間同士の憎悪と怒りのぶつかり合いの結果としての戦火と、人々の犠牲が累積する一方で、人為による戦火を含む人間活動が引き起こしてきたCO2の過剰排出は、静かに累積し、アジアの山岳地帯にある氷河の過剰融解によるリスクを確実に高めているのだ。

 

 カザーリ氏は「氷河はアジアにおいて最も重要でありながら気候変動の影響を受けやすい自然システムの一つ。その加速度的な後退は河川流量を変化させ、災害リスクを高め、飲料水・農業・エネルギー源として山岳河川に依存する数億人の人々の水安全保障と生計を脅かしている」と述べている。

 

 ヒマラヤやカラコルム等の世界最高峰の山々を抱えるアジアの山岳地帯では、氷河や積雪によって支えられた河川流域に、約20億人の人々が生活する。氷河の融解水は、人々の飲料水だけでなく、農業や産業、生活用水等の多様な水環境の安全保障を支えている。しかし、気温上昇は氷河の融解を加速化し、継続的な後退を年々加速させ、降雪パターンを変化させている。特に南アジア、中央アジア、西アジアにおいて、短期的な洪水リスクと長期的な水ストレスの両方を深刻化させている。

 

 こうした水循環の変化が顕著になるにつれ、気候適応と強靭な水システムへの投資はますます緊急性を増している。ADBはグリーンボンドおよびブルーボンド発行によって調達した資金を原資として、気候変動に強いインフラと生計手段、統合的な水資源管理、早期警報システム、災害リスク軽減を支援するプロジェクトなどへの融資を続けている。

                         (藤井良広)

https://www.adb.org/news/adb-issues-green-bond-raise-awareness-glacier-melt