HOME8.温暖化・気候変動 |再生可能エネルギー市場は2030年まで着実に成長する見込み (Bloomberg NEF) |

再生可能エネルギー市場は2030年まで着実に成長する見込み (Bloomberg NEF)

2013-05-17 09:48:37

solar250px-Giant_photovoltaic_array

solar250px-Giant_photovoltaic_array現在の市場状況の困難さにもかかわらず、コスト競争力の向上により、再生可能エネルギーは、全世界で2030年までに追加される新規発電容量の69%から74%を占める見込み。


ロンドン、ニューヨーク、2013517(日本時間) – ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスの調査によると、再生可能発電の新規容量への年間投資額は、現在から2030年までの間に、最小で2.5倍、最大で4.5倍以上増加すると予想される。最も可能性の高いシナリオによると、2030年の年間投資額は、現在より230%多い6300億ドルになる。この増加を促す要因は、風力・太陽光発電の化石燃料発電に対するコスト競争力のさらなる向上と、水力、地熱、バイオマスといった間欠的でないクリーンエネルギー源の普及である。

 

これは、ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスが公表した新しい調査の内容である。また、この結果は4月22 – 24日、ニューヨークで行われた、同社主催の6回目の年次サミット(Bloomberg New Energy Finance – Summit 2013)の場で発表された。そのサミットの詳細及び結果は、http://bnef.folioshack.com/document/summit2013に記されている。


ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスによる2030年までの世界エネルギー市場予測は、同社のグローバル・エネルギーおよび排出量モデルに基づいている。このモデルは、景気、全世界と地域別の需要増加、技術コストの変化、気候変動防止政策の予想される展開、化石燃料市場の動向といった、エネルギー環境を左右する主要な要因すべてを総合したものである。これらの要因から、3つのシナリオが導かれる。すなわち、「新しい標準(New Normal)」、「障壁打破(Barrier Busting)」、「従来の領域(Traditional Territory)」の3つである。

「新しい標準(New Normal)」シナリオは、最も可能性が高いとされている。これによると、2030年の新規クリーンエネルギー資産に必要な投資額は6300億ドル(名目額)で、2012年に建設された再生可能エネルギー設備への投資額の3倍以上になる。この2030年の投資額は、ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスが1年前に公表した前回の予想を35%上回っており、この時点での導入済み再生可能エネルギー合計容量の予測値は、この前回の予測を25%上回る3,500ギガワットとされている。

電力部門では、同社の最新の予測によると、2012年から2030年までに追加される新規発電容量の70%が再生可能技術(大規模水力を含む)によるものである。石炭、ガス、石油はわずか25%で、残りが原子力である。このシナリオは、ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスによる石炭およびガス価格の最新の予測に基づいている。ガス価格については、米国、欧州、アジアでの実勢価格はそれぞれ6ドル、9ドル、11ドル(100万BTU当り)で安定すると仮定している。

比較として、国際エネルギー機関(IEA)の「新しい政策(New Policies)」シナリオでは、この期間に追加される発電容量の57%が再生可能エネルギー源(大規模水力を含む)によると予想している。ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスの予測では、2030年までに追加される新規発電容量のうちギガワットベースで最も割合が大きいのは風力と太陽光で、それぞれ30%および24%を占めるとされる。2030年には、全世界で導入される新規発電容量の50%が再生可能エネルギーになると見られる。2012年にはこれは28%であった。発電される電力に関しては、再生可能エネルギーの割合は2012年の22%から2030年には37%に増加する見込みである。

さらに、「新しい標準(New Normal)」シナリオでは、全世界のバイオ燃料生産量は、2012年の1200億リットルから、2030年には約200%増加して3700億リットルになると予想されている。

ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスの他の2つのシナリオが描く未来は、これとは多少異なるが、どちらの場合も再生可能エネルギーの需要は現在より増加すると見込まれる。「障壁打破(Barrier Busting)」シナリオでは、再生可能エネルギーに必要な資本は2030年に8800億ドル(2013年からの累計で9兆3000億ドル)に達するとされる。これにより、長距離伝送システム、スマートグリッド、エネルギー貯蔵、デマンドレスポンスといったサポートインフラのために、さらに2兆ドル(22%の増加)の追加投資が必要となる。「従来の領域(Traditional Territory)」シナリオの予測はこれより悲観的であり、2030年に再生可能エネルギーに必要な投資額は4700億ドル(累積で6兆1000億ドル)とされている。

ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスの経済・商品担当責任者のGuy Turnerは、次のように語る。「世界のエネルギーシステムの未来に関して、複数のシナリオに基づくこれほど詳細な予測を公表するのは、当社にとって初めてのことだ。これから分かるのは、2011年以降クリーンエネルギー投資が低迷しているという状況にもかかわらず、世界の経済と政策選択に関して最も悲観的な予想を採用したとしても、新規発電容量の追加において再生可能エネルギーが中心的役割を果たすということだ。

さらに、「この期間の再生可能エネルギー部門の成長を促す最大の要因は、政策支援からコスト低下と自然需要への移行にある。一方で、この調査からは、間欠的な再生可能電力を送配電網と電力市場に統合するための計画の重要性も浮き彫りになった。このためには、送配電網インフラ、負荷管理、エネルギー貯蔵技術への多額の新規投資が必要になる。」と続けた。

また、ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス最高責任者のMichael Liebreichは、次のように述べている。「現在、一般の関心は、クリーンエネルギーの供給過剰から生じる痛みと、安価なシェールガスの誘惑に集中している。しかしこれは、再生可能エネルギーと、それをエネルギーシステムに統合するためのすべての技術のコスト低下を軽視した見方だ。そして、結局はコスト低下が勝つのだ。この調査が示すのは、クリーンエネルギーが主流となる未来への転換点にわれわれが立っているということだ。

上記3つのシナリオと、将来のエネルギー市場に対するその影響の詳細は、『世界再生可能エネルギー市場の見通し』レポートに記載されている。