国際エネルギー機関（IEA）特別報告書公表、２℃目標達成には2020年までにエネルギー関連のCO2排出量ピークアウト化を。石炭火力は既存分の使用を減らし、新規は認めず（ＦＧＷ）
2015-06-17 01:11:00
国際エネルギー機関（IEA）は15日、「世界エネルギー展望」の特別報告書を発行し、その中で気候変動の加速を防ぐために、世界的にエネルギー関連のCO2排出量を2020年には増加から減少に切り替える必要があるとして、エネルギー部門での対策を「まず優先し、真っ先に取り組むべき」と指摘した。このIEAの基本路線は、温暖化ガス削減よりも、原発再稼働を優先した日本の新エネルギー計画のスタンスと、明確に方向性を異にする。
また原発建設を進めている中国について「2030年までに米国を抜いて世界一の原発保有国になるだろ」との見通しを示した。
IEAは報告書の中で、地球温暖化対策に向けて、地球規模での削減行動に取り組むことを最優先事項とすると宣言した。そのための合意を、年末にパリで開く国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議（COP21)で得るためのカギとして、4つの施策の柱（4 pillars）を提示した。
４つの柱は、「早期にエネルギー関連CO2排出量のピークアウト化」、「国別気候変動目標の定期的レビュー」「世界の気候変動目標を総合的な長期排出目標へ移し替え」「エネルギー部門での達成追跡のプロセスの確立」の4点だ。
IEAによると、エネルギーの生産・消費から排出される温室効果ガス（GHG）は、それ以外のすべての排出源を合わせた量の倍に達している。したがって、IEAはエネルギー部門において気候変動と闘う活動が真っ先に取り組まれ、最も優先されるべきだと位置付けた。
IEA のExecutive Directorを務める Maria van der Hoeven氏は、「我々の分析によると、GHG排出量を抑制する費用と困難さは毎年増加している。時間が極めて重要だ」と述べた。また、「GHG排出量削減を成功裏に導くためには、エネルギー部門こそが重要な役割を担っている」とも強調した。
報告書では、原発について低炭素電源の「二番目に大きな発電源」とみなしている。原発建設が進んでいるのは、規制が緩い電力市場か、あるいは国営の発電会社が原発の建設から操業、保有までを担っている国が中心だ。中国は現在、建設中の原発の発電容量は 28 GWeに達しており、2030年までに「原発世界一」の座を米国から奪う勢いだ。
Four pillars
4つの柱のうち、「国別気候変動目標の定期的レビュー」としては5年ごとのレビューサイクルを提案した。IEAは、これ以上各国が温暖化対策への取り組みを遅らせると、対策費用が増大するばかりだとした。5年のレビュー期間は、各国が国別目標を弾力的に変更したり、温暖化対策にへの投資家の信頼を確保するのに適している。
IEAはこれからの世界の気温上昇を長期的目標として、産業革命前のレベルから2℃以内に抑えることを提唱している。そのためにもエネルギー部門でのGHG排出量削減が重要であるとしている。そうしたエネルギー部門での取り組みが投資決定を導き、新規技術を発展に対するインセンティブとなり、市場の改革を促し、国内政策の実施を刺激する成果が期待される。
また COP21での合意はエネルギー部門での対策の進展を追跡するプロセスをも築かれる見通し。報告書は、こうした政策が積み上がれば、コツコツと対策を積み上げている国々や、実施に苦戦している国々などを見極め、必要な支援を打つことができる、としている。
すでにCOP21に向けて、世界のエネルギー関連の排出量の約3分の2を占める国々が、公式手に各国の気候変動約束（目標の提出）を提出している。こうした各国の対応は、まず評価できるが、これらの約約束目標を集約しても、2℃達成は難しい、としている。
IEAは2020年までにエネルギー関連排出量をピークアウトさせるための対策として「ブリッジ・シナリオ」を提示している。その中には5つの主要政策手段が盛り込まれている。①産業、建物、輸送分野において、エネルギー効率化を増大させる②もっとも効率の悪い石炭火力発電所の使用を減少させ、新規建設を禁じる③電力分野での再エネ技術投資を2014年の2700億㌦から、2030年には4000億㌦に増やす④2030年までに化石燃料向けの補助金を段階的に廃止⑤石油ガス生産に伴うメタンガス排出量を削減する――などを盛り込んだ。
Research Institute for Environmental Finance