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過剰海外出張問題を指摘された国連環境計画(UNEP)のソルヘイム事務局長が辞任(RIEF)

2018-11-27 16:48:21

Solheim1キャプチャ

 

  頻繁な海外出張と公私混同の疑いが指摘されていた国連環境計画(UNEP)事務局長のエリック・ソルヘイム(Erik Solheim)が辞任した。UNEPはケニアのナイロビが拠点だが、同氏は2016年5月の就任後の668日のうち、約8割の529日を海外出張に充て、 その中には週末の間だけ自国のノルウェーやパリに往復するケースもあり、国連専門組織のガバナンスが問われていた。http://rief-jp.org/ct5/82991?ctid=0

 

 同氏の辞任は、国連事務総長のアントニオ・グテレス氏がソルヘイム氏に直接促したという。後任の事務局長が決まるまで、副局長の Joyce Msuya氏が事務局長を代行する。

 

 ソルヘイム氏がほぼ22ヶ月間で使った海外出張費用(ファーストクラスの航空機とホテル代)の総額は48万8518㌦(約5520万円)だった。英紙Guardianが入手した内部監査の中間報告書では、事務局長の過剰な海外出張について「気候変動問題と闘っているUNEP組織にとって、評判リスクを高めるもの」と指摘している。

 

 国連職員組合も、国連専門組織トップの“不祥事”に驚きを隠せず、ある気候学者は「下劣なCO2欺瞞ヤロウだ」と怒りをぶつけた。過剰海外出張問題以外にも、夫人が務めるノルウェーの企業へのUNEPの支援問題も浮上していた。

 

solheim2キャプチャ

 

 こうした問題の噴出に、デンマーク、オランダ、スウェーデンの3カ国がUNEPへの拠出金を凍結を決めるなど、組織運営にも支障を来たす事態になりかけていた。こうしたことから、グテレス国連事務総長が事態を重視し、ソルヘイム氏に引導を渡したとみられる。http://rief-jp.org/ct5/83238?ctid=0

 

 ソルヘイム氏の過剰海外出張は確かに耳を疑う問題だった。だが、同氏が辞任した後に漏れてくる話の一部にも耳を傾けると、国連組織内で微妙な駆け引きがあった可能性も伝わってくる。それは、ソルヘイム氏がそれほど頻繁に世界中を飛び回った理由のひとつに、中国の「一帯一路」イニシアティブを「グリーン化」させる狙いがあった点だ。

 

 「一帯一路」は今も期待と課題が入り混じっている。だが、グローバルなインフラ建設推進の必要性と、それらをグリーン化させる必要性が高まっている点は無視できない。膨大なインフラ建設で温暖化が加速しないように、UNEPが中国への支援・アドバイスを強化しても不思議ではない。

 

 ただ、国連機関による「一帯一路傾斜」に、米国は懸念を示し、今年の4月には膨大な質問書をUNEP事務局に送ってきたという。米国の関心は同イニシアティブの資金面及び、米国が重視する知的所有権保護が保てるのか、といった点も含んでいたとされる。

 

 ソルヘイム氏が国連専門組織のリーダーとしての立場を利用して、奔放に飛び回っただけだったのか、あるいはその抜群の行動力が各国間の政治バランスを揺さぶり、どこかの国の反発を買ったのか。真相は藪の中だ。

 

 ソルヘイム氏が最後にUNEO職員向けに送ったEメールでこう述べている。

 

 「私はUNEPを、(社会の)改革をリードする組織にしたかった。たとえ多少の問題を起こしてもだ。従来と違うことをすることは易しくはない。そうした改革を目指し、UNEPを、よりやりがいのある、よりインパクトのある組織にするために、私は一瞬の時も無駄にはしなかったことを皆さんに伝えて辞任する」

 

https://www.unenvironment.org/

https://www.theguardian.com/environment/2018/nov/20/un-environment-chief-erik-solheim-resigns-flying-revelations