HOME10.電力・エネルギー |国際エネルギー機関(IEA)。2018年のGHG排出量2年連続増加、アジア等でのエネルギー需要増を反映。2050年のネット排出ゼロ、現状では困難。思い切った温暖化対策を要請(RIEF) |

国際エネルギー機関(IEA)。2018年のGHG排出量2年連続増加、アジア等でのエネルギー需要増を反映。2050年のネット排出ゼロ、現状では困難。思い切った温暖化対策を要請(RIEF)

2019-11-13 22:05:12

IEA11キャプチャ

 

 国際エネルギー機関(IEA)によると、2018年の世界の温室効果ガス(GHG)排出量は2年連続で増加に転じた。このままでは2040年までに一段と増加する懸念が高まっている。IEAは「パリ協定」順守のためには、2050年までに石炭発電由来のCO2排出量を実質ゼロにする必要があると指摘した。つまり石炭火力をゼロにするか、カーボン回収貯留技術(CCS)の実用化等が求められる。

 

 IEAは13日に「世界エネルギー見通し2019」を公表した。18年のエネルギー起源のCO2排出量は前年比1.9%増となり、17年に続いて2年連続の増加。それまでは14年から16年にかけてCO2排出量は横ばいだった。このため、温暖化要因の増加はピークを打ったとの見方もあった。

 

 しかし、2年連続の増加で、IEAは各国政府が抜本的な措置を講じない限り、2040年までに一段と増加する方向に進む、と警告している。

 

IEA12キャプチャ

 

 CO2排出量増加の最大の要因は、石炭火力発電の需要増だ。同需要はアジア太平洋地域を中心に、18年で2年連続で増えている。増加分の4分の3を同地域が占めた。現在、石炭火力は世界のGHG排出量の3割に相当する100億㌧以上を排出している。

 

 石炭需要は米欧では減少している。だが、経済成長が続くアジア諸国では、低コストエネルギー源でもあるため、特にインド、東南アジア等で需要が増えている。石炭火力は一度建設すると40年以上稼働することから、アジア等で現在、建設中の発電所が稼働すると、2050年時点でも約60億㌧の排出が続く。

 

 IEAのシナリオ分析では、現在各国のエネルギー政策を続けると仮定した「Current Policies Scenario」の場合、エネルギー需要は2040年まで年間1.3%増で推移する。一方、各国が現在の政策を強化する「Stated Policies Scenario(New Policies Scenario)」の場合は少し減るが、それでも年間1%増で増え続ける。

 

IEA13キャプチャ

 

 このScenarioでは、エネルギー増加分のうち半分は再生可能エネルギー発電で供給され、残りの3分の1はガス火力による。石油需要は2030年代に横ばいになり、石炭需要は低くなる。国によっては「ゼロ排出量」を実現できる。

 

 ただ、世界全体では、成長と人口増によるエネルギー需要増をオフセットするには不十分。CO2排出量は2040年以前にピークアウトすることは難しい。ネットゼロの実現も、気候問題の科学者が、気候変動の激化を抑える期限とする2050年より20年も遅い2070年になるという。

 

 パリ協定が目指す2℃目標~1.5℃目標を達成する「Sustainable Development Scenario」の実現には、世界のエネルギーシステムの急速で幅広い変革が求められる。思い切った排出削減のためには、エネルギー全体の効率性と費用対効果の高い多様な燃料と技術の導入が必要、と指摘している。エネルギー需要増を踏まえた排出削減の実現には、CCSの実用化等、技術革新のブレークスルーが求められる。

 

UEA13キャプチャ

 

   上記2つのグラフは、主要な化石燃料からの排出に関するIEAの各シナリオを示している。左側のグラフは石油とガスによる汚染レベルが2040年まで上昇し、石炭がほぼ横ばいとなるシナリオで、既存の政府の政策を反映。右側のグラフは気候変動を抑制する国連目標の達成に、各燃料の排出量をどの程度減らす必要があるかを示している。

 

https://www.iea.org/newsroom/news/2019/november/world-energy-outlook-2019-highlights-deep-disparities-in-the-global-energy-system.html