ルクセンブルク、国内の公共交通機関をすべて無料化実施。道路混雑緩和、自動車の排ガス削減での温暖化対策、低所得者への生活支援。隣国からの通勤者対策で(RIEF)
2020-03-03 15:27:16
ルクセンブルクは、国内の公共交通機関の料金を無料にした。道路混雑緩和と自動車の排ガス削減による温暖化対策、さらに低所得者支援等を目的とした措置だ。対象となる交通機関はバス、路面電車、鉄道のすべてを含む。さらに現在、鉄道・バスネットワーク等の改築を進めており、渋滞と温暖化促進をもたらす自動車中心の交通からの脱却を目指す。
(写真は、もう不要となったバスのチケット)
同国は人口60万人、国土面積2586㎢で日本の神奈川県(2416㎢)より少し広いくらい。一人当たりGDPが世界一高いことで知られる。人口は60万人の小国だが、隣接するドイツ、フランス、ベルギー等からの毎日の通勤人口が21万4000人と、国民の3分の1にものぼることから、通勤時の道路は毎日大混雑する。
同国政府はこの混雑緩和と、温暖化対策等に資するため、今回の公共交通無料化を決めた。すでに先週末から実施に移している。同国の温室効果ガス排出量の半分以上は、自動車からの排出によるという。
交通機関の無料化は通常のスタンダードクラスへの適用で、列車等の一等車の有料料金は継続する。スタンダードの料金はバスも列車も路面電車も無料。これまで440ユーロ(約5万2800円)だった年間パスが不必要になる。一等車用の年間パスは660ユーロ(約7万9200円)で変わらない。
運輸相の Francois Bausch氏は「低所得者や最低賃金生活者にとって、今回の交通料金無料化は大きな恩恵だ。無料化措置の最大の要因は、移動手段の品質向上であり、その結果として温暖化対策等の環境上の利点も生み出される」と強調している。
隣国から同国への通勤者の多くは自動車通勤だ。その結果、毎朝夕の道路渋滞は同国の定番の風景となっている。また2028年までに39億ユーロを投じて、鉄道・バス網の改善を進めているほか、郊外まで車で来て、バスに乗り換えて都心に入る「Park-and-ride」拠点を、国境沿いに展開する計画だ。
だが、こうした同国政府の対策にもかかわらず、自動車通勤の労働者の比率は2025年までで、全体の65%と過半数を超えたままとなる見通し。2017年の73%からの改善度は10ポイントに満たない。
温暖化対策と道路混雑緩和のために、ルクセンブルクのように公共交通機関の無料化を検討しているのは、ドイツやベルギーのブリュッセル、エストニアの首都タリンなどの名があがる。ただ、自動車運転になじんだ欧州の人々の意識の転換を促すには、まだ時間がかかりそうだ。
https://luxembourg.public.lu/en/living/mobility/transport-gratuit.html