HOME |2021年度の与党税制改正大綱決定、カーボンニュートラル税制導入。生産プロセスと製品の「脱炭素化」設備に税額控除適用。洋上風力発電設備や自動車用リチウム電池等を想定(各紙) |

2021年度の与党税制改正大綱決定、カーボンニュートラル税制導入。生産プロセスと製品の「脱炭素化」設備に税額控除適用。洋上風力発電設備や自動車用リチウム電池等を想定(各紙)

2020-12-11 15:23:50

yotouzeichoキャプチャ

 

 自民・公明両党税制調査会は、2021年度の税制改正大綱をまとめた。その中で、カーボンニュートラルに向けた投資促進税制を設けた。産業競争力強化法の改正で導入される予定の「中長期環境適応計画」に基づき、生産プロセスの脱炭素化や脱炭素化を加速する製品の生産設備等を税制面から支援する。風力発電設備も税額控除の対象になる。自動車の車体課税の全面的な見直しは、新型コロナウイルス感染の影響があるとして先送りするが、エコカー減税の特例措置からクリーンディーゼル車を除外する。

 

 (写真は、自民党の甘利明税制調査会長㊨と公明党の西田実仁税調会長㊧:10日午後、衆院議員会館で)

 

  カーボンニュートラル税制は、「環境と経済の好循環」を促すことを目指す。産業競争力強化法に導入予定の「中長期環境適応計画」に基づき、中長期環境適応生産性向上設備(仮称)または中長期環境適応需要開拓製品生産設備(仮称)の認証取得を条件として税額控除で支援する。国内事業の場合は、取得金額の50%の特別償却とその取得価額の5%(温暖化ガスの削減に著しく資するものは10%)の税額控除との選択適用ができる。

 

 対象となる投資額の上限は500億円。控除税額はデジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制との合計で当期法人税額の20%を上限にする。適用は、改正法施行日から2024年3月31日までの約3年間の時限策とする。温室効果ガス削減につながる製品の生産設備導入や、生産プロセスの省エネ化等が対象になる。

 

 主な対象事業としては、新型リチウムイオン電池やパワー半導体などを製造する設備が想定されている。リチウムイオン電池は電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)などの電動車に搭載される主要部品であり、国際的にも価格低下競争が起きている。日本企業、自動車業界の競争力向上のためにも、一段のコスト削減を進めたい考えだ。

 

 自動車については、政府は2030年代半ばに新車販売を全て電動車に切り替える目標を設ける方針だ。国内のCO2排出量の2割弱は自動車からの排出量で、運輸部門の脱炭素化は「2050年ネットゼロ」実現のカギを握る重要な課題の一つだ。ただ、今回の税制改正では自動車の車体課税の全面的な改定は、コロナ感染の影響を考慮して先送りする。エコカー減税については、見直しを行ったうえで適用期限を2年延長を決めた。

 

 主な自動車関連の改正点は、乗用自動車(軽油自動車を除く)は自動車重量税の免除か、税率を50%もしくは25%軽減する自動車に係る燃費性能に関する要件について、▼30年度燃費基準に対する達成度が90%以上であるもの(20年度燃費基準を達成しているものに限る)▼30年度燃費基準に対する達成度が75%以上であるもの(同)▼30年度燃費基準に対する達成度が60%以上であるもの(同)。新車に係る新規検査後に受ける最初の継続検査等の際に納付すべき自動車重量税を免除する自動車は30年度燃費基準に対する達成度が120%以上であるものーー等とする。

 

 環境性能に応じた非課税または1%もしくは2%の税率(営業用自動車の場合は、非課税または0.5%もしくは1%の税率)の適用区分については、乗用車車の燃費性能に関する要件として、▼30年度燃費基準に対する達成度が85%以上(20年度燃費基準を達成しているものに限る)▼30年度燃費基準に対する達成度が75%以上(同)▼30年度燃費基準に対する達成度が60%以上(同)

 

 風力発電設備も税額控除の対象となる。これまで再エネ市場では太陽光発電に偏った展開となっていた。その太陽光発電の大規模な開発余地が相対的に少なくなる中で、海に囲まれた日本の洋上での風力発電開発に大きな期待がかかっている。ただ、特に期待される浮体式洋上風力発電の場合、発電区域が広がる一方で、現状のコストも高いという課題がある。

 

 今回の税額控除を適用することで、そうしたコスト削減に貢献することを期待するとしている。政府は7月に「2030年に1000万kW」の発電容量の導入目標を示したが、来年に予定されるエネルギー基本計画の改定では、2030年の中期目標設定のために、再エネ発電の割合を大幅に引き上げる必要が示される見通し。洋上風力発電のコスト引き下げはその課題を担っている。

https://www.jimin.jp/news/policy/200955.html

https://jimin.jp-east-2.storage.api.nifcloud.com/pdf/news/policy/200955_1.pdf