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地球温暖化による気温上昇と都市人口の増加で、世界の都市でネズミが増加傾向。16都市中11都市で増加。東京は逆に「減少」。都市再開発の集中で「東京のネズミ」は逃げ場を失った(?)

2025-02-03 19:48:01

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写真は、ニューヨークの街を「散歩」するネズミ=National Geographicより)

 

  地球温暖化の影響による、都市の気温上昇と人口増加で、世界の主要都市に生息するネズミが増えていることがデータで裏付けられた。世界16都市を対象にネズミの生態や被害に対する苦情・検査等のデータを調べたところ、対象都市のうちニューヨークなどの11都市(約7割)で増加が確認された。気温上昇と都市人口の増加により、都市部のネズミの活動期間とエサの入手可能性が拡大しているためとみられる。ただ、東京を含む3都市では逆に個体数が減少しているという。研究者らは「東京では、文化的な規範や清潔さへの期待から、人々がネズミの目撃情報をすぐに報告するため」と推測しているが、都内各地で展開される大規模な都市再開発の影響で、「東京のネズミ」は逃げ場を失っているのでは、との指摘もある。

 

 調査は米リッチモンド大学の生態学の専門家、ジョナサン・リチャードソン(Jonathan L. Richardson)氏をはじめとする各国の研究者が共同で実施した。その結果について共同論文「Uncreasing rat numbers in cities are linked to climate warming, urbanization, and human population」が、1月31日付でネットの学術論文サイト「ScienceAdvances」に掲載された。

 

 調査対象の都市は、ワシントン、ニューヨーク等の米国の年が中心で、米国以外では、トロント(カナダ)、アムステルダム(オランダ)、東京(日本)が加わっている。ロンドン、パリなどの欧州都市は調査データの問題で、今回の調査の対象外としている。

 

対象とした16都市でのネズミの増減状況
対象とした16都市でのネズミの増減状況

 

 研究チームでは、ネズミは、人間の人口密集に伴う資源を利用して都市で繁殖する「共生害虫」と位置付けている。それらの都市に生息するネズミの数の長期的な傾向と、環境変化が生息数にどのような影響を与えるかを特定することで、ネズミの生態を理解し、将来的な脆弱性と緩和の必要性を予測することにつながるとしている。

 

 調査によると、ネズミの推定生息数は、過去10年間でワシントンDCで390%、サンフランシスコで300%、トロントでは186%、ニューヨークでは162%の増加が見られたとしている。これらの推計は、公共の場所での目撃情報や住宅などへの侵入報告を分析した結果とされる。

 

 最もネズミ被害がひどい都市のひとつとされるトロントでは、「完璧なネズミの嵐」が吹き荒れており、カナダ最大の同都市の住民は、人口以上に急増するネズミの増大に直面している。同国最大の害虫駆除会社Orkinの主任昆虫学者アリス・シニア氏は「トロントの街を歩くと、足元の下水道にはネズミがうようよいる」と証言している。

 

ネズミの発生要因
都市に生息するネズミの発生要因

 

 同市のヘルプラインには、2023年時点で、年間1600件の市民からのネズミ関連の通報・苦情等が寄せられるという。その数は2019年には940件だったので、4年間で約7割増と膨らんでいることになる。Orkin社にも同様に市民からの「ネズミ通報」が急増しているという。

 

 リチャードソン氏は、「ネズミの個体数の増加には、温暖化による気温の上昇と、都市人口の増加により、都市部のネズミの活動期間とエサの入手可能性が拡大している可能性がある。都市の管理には、これらの都市生態系で生じる変数の生物学的影響を、今後の管理戦略に組み込む必要がある」と指摘している。トロント以外の11都市でも「ネズミの数が著しく増加する傾向」が見られ、この傾向は今後も続くとみられるとしている。

 

 トロント市の議員であるアレハンドラ・ブラボー氏とアンバー・モーリー氏は、こうした「ネズミ増」に対応するため、昨年危機的状況を緩和するための正式な管理計画の立案を求める提案をしている。ブラボー氏は「突然、自宅や職場にネズミが現れる事態に遭遇すると、人々の生活の質は著しく低下する」と指摘。現在、トロントで起きている事態は「『ネズミの嵐』に直面しているような状況」と付け加えた。

 

 ネズミの個体数が急増している都市は、ほかにも、オークランド、バッファロー、シカゴ、ボストン、カンザスシティ、シンシナティなどの米都市で共通する。論文では、気温の上昇とネズミの数の増加には相関関係があるとの分析結果を示している。ネズミは小型哺乳類であるため、通常は冬を乗り切るのに苦戦を強いられる。だが、年間を通して気温が高いと、1年を通じて繁殖が可能となり、エサを漁ることができる。

 

 主要都市のうち、カナダのトロントでは、これまで寒い冬が「自然の害虫駆除」の役割を果たして、ネズミの個体群の減少につながってきた。だが最近の冬は、温暖化の影響で温暖な気温が続いており、同市ではあらゆる種類のネズミの繁殖がし易くなっているとみられる。都市でのネズミの増加は、住民にとって不快感を高めることに留まらず、毎年建物に侵入して、あちこちをかじって不具合を起こしたり、汚染したりもする。

 

 研究によると、ネズミが媒介する病原菌の拡散という点では、人間が影響を受ける病原菌を少なくとも60種類はネズミによって媒介されている可能性があるとされる。さらに、人間にだけ影響が及ぶのではなく、ペットの犬や猫などのほか、都市に生息する他の生物種の生態系にも影響を与えている。

 

 同調査で「謎」として浮き彫りになったのが、東京などの3都市での「ネズミ個体の減少」という状況だ。減少がみられたのは、東京のほか、米国のルイビル、ニューオーリンズ。リチャードソン氏は、「東京では、文化的な規範や清潔さへの期待から、人々がネズミの目撃情報をすぐに報告しているためではないか」と推測している。一方、ニューオーリンズでは、ネズミの蔓延を防ぐ方法についての教育活動が行われていることが、効果をあげている可能性がある。同氏は「これらの都市から得られる教訓は重要だ」と述べている。

 

 東京の場合、「文化的規範」と言われても、にわかには納得しかねる思いだ。かつて「銀座のネズミ」は有名だったが、近年の「どこでも再開発」というほどの都市の急変貌が各地で続いていることから、ネズミも行き場を失っているのかもしれない。研究者たちは、すでに存在するネズミを駆除するよりも、都市環境をネズミにとって住みにくいものにするのが最善の害虫対策だと指摘している。例えば、ゴミはコンテナに収納し、路上にゴミ袋を置かないようにすることなどを提唱している。

https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.ads6782?adobe_mc=MCMID%3D05710777951578076561234034921323328485%7CMCORGID%3D242B6472541199F70A4C98A6%2540AdobeOrg%7CTS%3D1738055786