HOME |国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)主催のブラジル。「米国不在」の“大波”を乗り切るため、レジェンドの女性サーファーやニュージーランド元首相ら「特使30人」任命(RIEF) |

国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)主催のブラジル。「米国不在」の“大波”を乗り切るため、レジェンドの女性サーファーやニュージーランド元首相ら「特使30人」任命(RIEF)

2025-05-16 22:55:38

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写真は、COP30の気候特使に選ばれたブラジルのマヤ・ガベイラさんのインスタグラムから引用)

 

   ブラジル政府は、11月に同国で開催する国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)において、「優先分野と地域」との連携強化を担当する30人の「特使」を任命した。その中には、高さ73.5フィート(約22.4m)のビッグウェーブを乗りこなした世界記録を持つ女性プロサーファーや、ルラ・ダ・シルバ大統領の夫人、ニュージーランドの元首相ジャシンダ・アーダーン氏らの多彩な顔ぶれがそろう。米国不在のCOPとなるが、多様な分野を代表する30人の「特使」の参加によって、COPを盛り上げる狙いのようだ。

 

 注目されるのがブラジル出身でプロサーファーのスーパースター、マヤ・ガベイラさん。マヤさんは2020年のポルトガルのナザレで開いた大会で、女性サーファーが今までに体験した最も大きな波(高さ73.5フィート)を乗りこなし、ギネス記録を作ったことで知られる。

 

 彼女は単に大波を乗り越えただけでない。女性スポーツの分野に変革をもたらし、ギネスでは彼女の世界記録を認定するための特別カテゴリーを作ったほどだ。COP30が直面する「トランプリスク」という大波を乗り越える秘訣を、マヤさんから学びたいということかもしれない。

 

 同国大統領のルラ・ダ・シルバ氏夫人のロサンジェラ氏も特使入りした。夫人は社会学者でもあり、ジェンダー問題などで言論をリードする「型破りなファーストレディー」として知られる。3月に大統領とともに国賓として来日した際も、「より公平で友愛あふれる世界のため、女性差別と闘い続ける」とメディアにアピール。「日本の女性たちよ、団結力と強さ、愛情が必要だ。一緒に進んでいこう」呼びかけ、話題を集めた。

 

 ニュージーランドの元首相ジャシンダ・アーダーンさんも特使の1人に加わった。同国労働党の政治家で、2017年10月から23年1月にかけて、同国で最年少の首相に就任、気候変動問題にも積極的に取り組んだ。世界で初めて首相在任中に産休を取得するなど、政治の世界に「普通の感覚」を持ち込んで多くのニュージーランダーの支持を得た。

 

 フランスの気候担当外交官でパリ協定のCOP21で特別代表を務めたローレンス・トゥビアーナ氏、米大統領気候特使を務めたジョン・ケリー氏のカウンターパートとして、長く中国の気候特使を務めた解振(Xie Zhenhua)氏らも加わっている。市民社会、先住民指導者、経済界・産業界の代表らも選ばれている。


  ブラジル政府は、これらの特使については、ボランティアとして個人的な立場での活動として参加を依頼したとしている。特使の役割として、「各自が代表する地域からの情報や見解の伝達において重要な連絡役を務め、より迅速かつ効果的な交流を可能にする」と期待を示している。

 

 ブラジルの気候担当副大臣のアナ・トニ(Ana Toni)氏は、「特使たちは戦略的分野や地域におけるわれわれの声と耳となり、気候変動対策を実施する強力かつ効果的な COP30 の実現に向けた共同の取り組みに貢献してくれる」と述べた。

 

 最近の気候関連のCOPでは、柔軟な気候合意を求めるエネルギー関係の産業界のロビイストと、気候リスクの高まりを懸念するNGOや市民団体との「対立」が目につくケースが少なくなかった。「30人の特使」が情報の効果的な仲介によって、迅速な合意を後押しすることが期待される。30人の中には、日本人は誰も選ばれなかった。

https://www.climatechangenews.com/2025/05/15/surfer-first-lady-and-former-pm-among-brazils-cop30-envoys/