第11回(2025年)サステナブルファイナンス大賞個別インタビュー②優秀賞:みずほ銀行「削減貢献量インパクトファイナンス」開発。脱炭素で『攻めのインパクト』を創出(RIEF)
2026-02-14 13:02:26
(写真は、みずほ銀行サステナブルプロダクツ部部長の平野裕子氏=1月23日のサステナブルファイナンス大賞授賞式でスピーチ:日本記者クラブで)
みずほ銀行は、企業が製品・サービスを通じて社会全体の温室効果ガス(GHG)排出削減に寄与する「削減貢献」を推進する独自の金融商品を開発しました。みずほ銀行が企業の削減貢献量に関する開示状況を評価し、一定のスコアを満たす企業に対して同行がラベル付き融資を提供するというものです。世界でも例のない「削減貢献量インパクトファイナンス」で、第11回サステナブルファイナンス大賞の優秀賞に選ばれました。みずほ銀行サステナブルプロダクツ部ビジネス推進チーム部長代理の竹井英則氏と、同チーム兼グローバル環境室上席部長代理の白石恭平氏に聞きました。
――削減貢献量に取り組む企業に対してインパクトファイナンスを提供する金融商品の開発に取り組んだ狙いをまず教えてください。
竹井氏 : 気候変動対策の指標として、GHGのスコープ1~3がよく知られていますが、これらは、排出量を減らすことに重点を置いた指標です。いわば「守り(ネガティブインパクトの緩和・管理)」の側面が強い。これに対して、企業が提供する製品・サービスの省エネや環境性能等を通じて、社会全体のGHG排出削減にどれだけ貢献するかという「削減貢献量」は、「攻め(ポジティブインパクトの創出)」に着目した指標と考えています。
企業は「自社製品・サービスが取引先のGHG排出削減に何㌧貢献できるか」を示すことで、経済活動による脱炭素への貢献を可視化できます。みずほ銀行は中期経営計画の重点戦略で、「サステナビリティ&イノベーション」と「日本企業の競争力強化」を掲げており、それを金融商品化したのが、「Mizuho削減貢献量インパクトファイナンス」です。
また、企業はモノをたくさん作って売れば売るほど、財務上の売上や収益が増えますが、炭素会計の観点ではGHG排出量が増え、スコープ1~3も増加します。そこで、財務会計と炭素会計をバランスさせる考え方が削減貢献量にあると考えています。

――そうした企業の削減貢献量をインパクトファイナンスとして金融商品化した狙いはどういう点にありますか。
竹井氏 : 削減貢献量にフォーカスすることで社会全体の脱炭素を目指しています。本商品は、削減貢献量について企業が開示した内容を評価しています。商品の直接的なインパクトは、開示の促進です。そして、削減貢献量を重要な指標として浸透させ、削減貢献への取り組みを世の中に広めていくことが狙いです。
多くの企業が削減貢献量に取り組んでいたり、取り組みたいと思ってはいるものの、社会の認知度が低い現状を、どう打破するかが課題であることが、商品化前のマーケティングでわかりました。また、削減貢献量に特化したファイナンス商品の開発により、企業の削減貢献量の取り組みに対する認知度の高まりを期待する声もいただきました。
削減貢献量の開示状況を調べたところ、日本企業では、2023年度に122社、24年度には180社と約50%増加しており、関心が高まっていると感じました。引き続き多くの企業で自社の削減貢献量を開示しようという動きがあると思っています。
――でも、企業は貢献量の開示によって、ライバル企業等と比較されることは好まないのではないですか。またインパクトファイナンスなので、企業側にファイナンスニーズがない場合は、特に銀行に評価してもらわなくてもいい、といったネガティブな反応や戸惑いはなかったですか。
竹井氏 : そういう感じは特に、ありませんでした。当たり前のことですが、われわれは銀行なので、企業に提供するのは融資であったり、為替だったりの金融取り組みになります。したがって、削減貢献量も、その一つとして融資に紐づけています。ファイナンスニーズがあって、かつ削減貢献量をアピールしていきたいようでしたら、ご活用ください、ということです。
商品的には、削減貢献量の開示状況を基に、企業の取り組みをスコアリングで評価します。評価は5段階でAAからDまで。AAまたはAとなる企業のみ、「Mizuho削減貢献量インパクトファイナンス」のラベルを付けて、融資することが可能とします。評価フレームワークの軸は、みずほ銀行とグループ会社のみずほリサーチ&テクノロジーズが共同で作成しています。みずほリサーチ&テクノロジーズは削減貢献量に以前から取り組んでおり知見も豊富です。

融資してお終いではありません。毎年モニタリングを行い、その結果を顧客にもフィードバックし、改善につなげるためのエンゲージメント活動を行う商品設計になっています。
――融資の資金使途は、削減貢献活動、特に、サプライチェーンの削減貢献支援などを重視しているのですか。
竹井氏 : 資金使途は制限していません。この商品は、コーポレートベースでの削減貢献量の取り組みを評価していますので、資金使途と対象となるアセットと紐づけるのではなく、あくまで融資先企業のコーポレートとしての取り組みを評価しています。
――この商品で融資を受けたい、あるいはみずほ銀行のファイナンスを得たいので、開示をしますよとか、来年度は削減貢献しますよといった取引先もありますか。
竹井氏 : 現状では、複数の企業に関心を示していただいていますが、今後そのように次のアクションにつながる動きが出てくるのを期待しています。評価が高い企業には、それをさらに伸ばしてもらいたいですし、評価がBの企業であれば、それをAに引き上げていくために、どのような取り組みをすれば良いかというエンゲージメントを行い、最終的にファイナンスにつなげることを考えています。
白石氏 : 企業によっては、削減貢献量をすでに一定程度開示しているものの、さらにレベルアップしたいというニーズもあります。そうした場合、みずほリサーチ&テクノロジーズに削減貢献量の計測等のコンサルティング機能があるので、同社を紹介して顧客企業の開示対応強化をサポートしていくこともできます。

――現在、インパクトファイナンスを実行した事例は何件ありますか。
竹井氏 : 昨年10月末に発表してから3カ月ほどの間で、2件です。川崎重工業を1号案件として、12月に芙蓉総合リースが2号案件となりました。他にもいくつか候補の企業があります。日本で削減貢献量を開示している企業は180社ほどなので、この金融商品を活用していただくべく推進していきます。利用件数を積み上げることにとどまらず、多くの企業が削減貢献量を積極的に開示できるよう、一社ずつエンゲージメントを進めていくことがより大事だと思っています。
――企業に削減貢献量の開示を促すには、みずほ銀行が開発したフレームワークに基づいて削減貢献量を測るように提案されれば、もっとリアクションがあるように思います。どうですか。
白石氏 : この商品の評価基準は、「持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)」のガイダンスやGXリーグの基本指針等を参考にして、われわれが独自に開発したものです。取り組みが進んでいる企業は、すでにこうした基準やガイダンスを参照して、自ら開示に取り組んでいます。一方、取り組みが十分ではない企業には、みずほリサーチ&テクノロジーズ等と連携し、開示をサポートすることも考えています。
――削減貢献量の開示には、製品・サービスの受け手企業の独自努力による削減の評価と、提供企業の貢献量評価で、ダブルカウントが生じる、との指摘もあります。
竹井氏 : WBCSDなどでも「ダブルカウントは許容する」としています。許容しないとあまりにも計算が複雑になり過ぎ、普及を妨げてしまう可能性があるためです。スコープ1~3の排出量削減に向けて企業は取り組んでいますが、削減貢献量の評価は量の多寡ではない、とされています。なぜかというと、削減貢献量はベースラインとの差分と販売量、使用期間の掛け算によって算出される面積の定量値であるからです。
われわれが目指すのは、単にこのファイナンスを増やすということだけでなく、社会全体の脱炭素化です。それに向けた一つのツールとして、このファイナンス商品を推進していきたいと考えています。
(聞き手は 藤井良広)

































Research Institute for Environmental Finance