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原発の投資リスクと自然エネルギー市場の可能性(Greenpeace) 新たな内需市場の創設へ

2012-11-07 01:21:59

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放射線調査や講演のため、10月に来日していたグリーンピース・インターナショナル エネルギー担当部長のヤン・ベラネクが、二つのイベントで講演を行いました。

★世界銀行/IMF総会関連イベント市民社会団体政策フォーラム「ポスト福島:エネルギーの未来と金融セクターの役割」(10月13日高木仁三郎市民基金主催)で、「福島原発事故から見る投資家が見過ごしていたリスクとは」と題する事例報告

★グリーンピース主催の経済セミナー「原発の投資リスクと自然エネルギー市場の可能性 in 大阪」(10月19日)で講演

【フクシマの被害は続いている】

 

福島第一原発事故では、今も10万人を超える人々が避難生活を強いられ、事情によって避難できない多くの人々が、子どもも含めて、今も高い放射線量のもとでの生活を余儀なくされ ています。グリーンピースは10月に福島の放射線調査を実施しましたが、福島市では、今も多くのホットスポットが残されたままで、効果的な除染が進んでいないことが分かりました。

 

【原発事故の経済的影響は世界的に波及した】

その内容について簡単にご報告します原発事故の後、事故を起こした東京電力の株式の価値は10%以下に下がりましたが、それ以外の関西電力や九州電力など原発をもつ日本中の電力会社や、さらにフランスやドイツの原発をもつ電力会社の株も大きく下がるなど、経済の影響は世界に及びました(原発を持っていない沖縄電力はほとんど影響を受けませんでした)。

 

【事故の予兆はいくつもあった、でも見過ごされてきた】

。(以下、二つの講演内容より抜粋・編集)

 

福島の事故には予兆がありました。たとえば、原子炉(GE社のマークI原子炉)の設計に問題があること、データの改ざんが発覚しており安全対策に信頼性がなかったこと、地震や津波など自然災害への備えが不十分なままだったこと..。でもこのような「わかっていたリスク」を投資家や株主、格付け会社は、見過ごしてきました。そして、AA-~AAAという高い格付けにとどまっているときに、大事故は起こりました。

【原発をもつ電力会社と日本生命】

電力会社の株主は、会社を株という形で「所有」し、会社の経営にも影響力をもっています。日本生命は原発を持つ電力会社(9電力+Jパワー)いずれでも最大あるいは上位の大株主であり、合わせると最大の株主です。日本生命は他よりも大きな経済リスクを持っていて、実際大きなダメージを受け、事故で株の価値は平均50%下がり、日本生命は1年半の間に約2300億円の損を抱えてしまいました。

大株主として原発の禍を繰り返さないという社会的責任を果たすためにも、損失を損失で終わらせないためにも、日本生命は、電力会社が脱原発に向かうよう大株主としての影響力を行使すべきだとグリーンピースは考えています。

 

【投資市場も本当は脱原発を歓迎?】

今、投資リスクという観点から、原発はどのようにみられているのでしょうか。

6月16日に関西電力の大飯原子力発電所の再稼働が決定すると、再稼働が経済に良好な結果になるはずだという経済界の思惑とは逆に、当時1000円台だった株価は二か月あまりの間に500円台に下がってしまいました。

9月14日(金)に、原子力発電を2030年代にゼロにするというエネルギー・環境戦略を発表したときも、経済界の否定的な評価をよそに、翌取引日9月18日(火)には、関電の株は7%上がりました。

投資家たちは、経団連の言うように“原発が経済的に好ましい”、とみているとは限らないようです。

(詳細はブリーフィングペーパー「原発を好材料と仮定した金融分析は有効だったか」を参照)

 

【自然エネルギー市場の伸び-可能性ある成長市場】

1996年から2011年にかけての発電設備の市場の規模をみてみましょう。

これは、原発、太陽光、風力それぞれの発電システムの、一年間に世界で新設された設備容量のグラフです。

赤は原発。低迷しており、2008年の新設はゼロでした。

青は風力発電。2000年時点ですでに原発を追い越しています。

黄色は太陽光発電。近年飛躍的に伸びています。

2011には、風力、太陽光あわせると8000万キロワット(原発18基分)にものぼる一方、原子力は400万キロワットに過ぎません。

 

【投資市場としても有望な自然エネルギー】

自然エネルギーは投資市場としても成長を続けており、2011年には、世界で2600億ドルが自然エネルギーのために新規投資された一方、新規原子力への投資はその20分の1の150億ドルにすぎませんでした。

今、世界で、中心となるエネルギーが原子力や化石燃料から自然エネルギーへと転換していく大きな転換点を迎えつつあります。特に日本とドイツという自然エネルギー技術の二大国で、原子力をフェイズアウトし、自然エネルギーへ向かうという大きなダイナミズムが進行中です。

原発事故の災禍を経験した日本が、少しでも早く原発への依存や投資をやめ、自然エネルギーでリードすることが、企業の社会的責任という観点からも、経済、投資という視点からも、最も妥当な選択といえます。

 

http://www.greenpeace.org/japan/ja/news/blog/staff/blog/42840/