HOME |京都アスベスト訴訟 初めて建材メーカーの責任認める。国の責任とともに総額2億1600万円の支払い命ずる(各紙) |

京都アスベスト訴訟 初めて建材メーカーの責任認める。国の責任とともに総額2億1600万円の支払い命ずる(各紙)

2016-01-29 22:43:06

asbestosキャプチャ

 

 各紙の報道によると、京都府内の元建設作業員とその遺族らが求めていたアスベスト(石綿)訴訟で、京都地裁は29日、建設作業中にアスベスト(石綿)を吸い込み健康被害を受けたとして、国と建材メーカーに合計約10億円の損害賠償を求めた訴訟で、国とニチアスなどの建材メーカー9社に対し、総額約2億1600万円の支払いを命じる判決を言い渡した。メーカーの責任を認めたのは初めて。

 

 敗訴したメーカーのうち、ニチアスなど4社は即日控訴した。

 

 建設現場でのアスベスト被害によって、国と建材メーカーを訴える建設アスベスト訴訟は全国6地裁で起きている。今回の地裁判決は5件目。これまで国への賠償命令は東京、福岡、大阪地裁と3件連続で認めてきたが、建材ケーカーの責任は認めてこなかった。

 

 今回の判決((比嘉一美裁判長)は、国の責任だけでなく、初めてメーカーの責任も認めた。この結果、労働関係法令の保護対象ではない「一人親方」といわれる個人事業主の救済につながる司法判断が出たことになる。

 

 判決は、国に対して、原告15人に合計約1億400万円の支払いと、建材メーカー9社(原告ごとに企業は異なる)に対しても、原告23人に計約1億1200万円を支払うよう命じた。

 比嘉裁判長は判決の中で、メーカーと国は1971年には、石綿が含まれた建材を建設現場で使用することで、労働者に肺がんなどの病気が発症することを予見できたと指摘。にもかかわらず、メーカーが製造販売にあたって警告表示をしなかったことを「加害行為」と認定した。

 さらに、外壁材や断熱材などの建材の種類ごとの各メーカーのシェアをあげて、「おおむね10%以上のシェアを有するメーカーの建材であれば、労働者が年1回程度はその建材を使用する現場で従事した確率が高く、被害を与えた蓋然(がいぜん)性が高い」と指摘して、その基準を満たす被告企業の9社に過失責任があると示した。

 そのうえで国の責任について、吹き付け作業は1972年10月、屋内作業は74年1月、屋外作業は2002年1月以降には、それぞれ、防じんマスクの着用義務付けなどの規制を講じるべきだったと判断した。

 「一人親方」については従来の判例通り、労働関係法令の保護対象外とする一方、「(一人親方を)保護する法律を定めなかった立法府の責任を問うことで解決されるべき問題」と付言。メーカーの警告表示義務違反を認めたことで、作業現場にいた「一人親方」10人への賠償を初認定した。

 原告側の村山晃弁護団長は「企業はこれまで責任回避を続けてきたが、判決は言い逃れは許さないと明確に企業責任を認めた。被害者を救済しなければいけないという心のこもった判決だった。国と企業にしっかり履行を求めていく」と述べた。