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丸紅、石炭火力事業を転換、新規事業は原則中止、既存の発電権益も2030年までに半減。再エネ事業を重視(各紙)

2018-09-16 10:21:26

marubeniキャプチャ

 

  各紙の報道によると、大手商社の丸紅は石炭火力発電所の新規開発事業から撤退するという。新規の石炭火力事業を原則停止するほか、保有する既存の石炭火力権益も2030年までに半減させる。人材や資金を太陽光発電など再生可能エネルギー事業にシフトさせる。丸紅は商社の中で石炭火力事業へのウエイトが高く、海外の環境NGOやシンクタンクから批判が相次いでいる。

 

 日本経済新聞が報じた。丸紅は出資比率に応じた出力で世界に計300万kW分の石炭火力発電事業の持ち分を保有する。これは原子力発電所3基分に相当する。今回の方針では、この持ち分を2030年までに資産の入れ替えなどで半分に減らすという。現在、内外で参画している十数件の石炭火力事業のうち、すでに数件で売却交渉に入った、としている。

 

 一方、再エネ事業については、発電出力に占める再生エネの比率を現在の約1割から23年までに2割に引き上げる。CO2排出量の多い石炭火力から成長分野の再エネ開発に人材や資金をシフトする。

 

 丸紅は日本企業の中でも、突出して石炭火力事業に傾斜してきた。米国の エネルギー経済・財務分析研究所(Institute for Energy Economics and Financial Analysis 、IEEFA)は先に、丸紅が日本勢として石炭火力に突出した活動をしているとして「風評被害とコスト負担のリスクを創り出しつつある」と警告する報告書を公表し、再エネ分野への早急な事業転換を求めた。今回の丸紅の方針はこうした外部の指摘を受け入れた形でもある。http://rief-jp.org/ct4/81484

 

 IEEFAによると、丸紅が計画中の石炭火力新設による発電能力(合計13.6GW)では、世界第11位の石炭火力発電所開発事業者となる。日本の企業では、住友共同電力(7.5GW)、電源開発(J-Power)(4.6GW)、東京電力(4.6GW)、中国電力(4.2GW)に比べて、ダントツの大きさだ。このためIEEFAは「丸紅は石炭火力開発においてトップ企業」と評している。日本の他の商社では三菱商事は1GW、三井物産はゼロだ。

 

 しかし、丸紅がアジアとアフリカで展開する石炭火力事業 は、地元のキャンペーン団体から強い反発に遭うなどの課題が表面化している。

 

IEEAFの報告より
   IEEFAの報告より

 

 IEEFAによると、丸紅への金融機関の資金供給(2014~17年)では、みずほフィナンシャルグループ(69億9900万㌦)、三菱フィナンシャル・グループ(67億8800万㌦)が軸になっており、今年3月末の累積融資残高は、明治安田生命(14億6100万㌦)、みずほ銀行(14億1800万㌦)、日本政策投資銀行(11億1400万㌦)が中心だ。

 

 環境NGOの350.org.Japanの調査によると、融資額がもっとも多かったのは、みずほフィナンシャルグループ、投資分野で三菱UFJフィナンシャル・グループだった。http://rief-jp.org/ct1/82716?ctid= 両金融グループも今年、石炭関連事業向け融資を厳格化している。

 

 また欧米の機関投資家は石炭等の化石燃料事業比率の高い企業からの投資資金引き揚げ(Divestment)活動を強化している。丸紅の今回の石炭火力事業からの転換方針は、こうした内外の「目」を重視して、市場規模が拡大する再エネ事業への経営資源を転換することにしたとみられる。

 

 ただ、2030年の既存資産の半減目標は、投資家からみると、30年でもかなりの石炭関連資産を抱え続けることになる。Divestment懸念が残ることは、株価の不安定要因が続くともいえる。

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180916&ng=DGKKZO35435680V10C18A9MM8000