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日立製作所、風力発電機製造から撤退へ。大型化競争についていけず。保守管理や蓄電池活用の次世代サービスに特化。原発輸出撤退に続く「技術の日立」の後退鮮明に(RIEF)

2019-01-26 02:04:52

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 日立製作所は25日、風力発電機の生産から撤退すると発表した。提携する独大手エネルコン(ENERCON GmbH)からの調達を拡大し、自社は風力発電所の保守運営や蓄電池と組み合わせた次世代サービスなどに注力する。風力発電市場は日本政府も力を入れ始めたが、日立の発表は風力発電機開発の「技術競争」での敗北を認めた形でもある。

 

 日立はこれまで、茨城県日立市の埠頭工場(茨城県日立市)で発電容量2000kW(2MW)クラス風車を年100基程度生産している。これまで、日立本体が自社製のダウンウィンド型風力発電システムを開発・製造するとともに、グループの日立パワーソリューションズがエネルコン社製の風力発電機を販売してきた。

 

 しかし世界の風力発電は洋上、あるいは浮体式洋上へと展開し、風車の大型化が加速している。日立はこうした大型化競争に対応するには、現在の体制では、開発費の増大や人材・リソースの分散などの課題に対応できないと判断。機器についてはエネルコンに一本化することとした。

 

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 洋上風力発電機開発でのライバルの欧州勢は、北海地域等で実用化市場を抱えている。これに対して日本の洋上風力発電市場は、これから展開する、という段階。しかも、遠浅の海が続く北海での着床式洋上風力発電とは異なり、沿岸部の海域が深い日本では、コストの高い浮体式洋上風力が主流になる見通しのため、コストのカベが課題となっている。

 

 日立は、エネルコンとの間で1997年から協業契約を結んでいる。同社は創業以来、2万9260基の発電機を各地に納入しており、最近では超大型の7.5MWのプロトタイプモデルを95基納入した実績もある。欧州市場で2割強のシェアを持つ。

 

 一方で日立は、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」基盤の「ルマーダ」を活用し、風力発電システムの故障を事前に予測し、安定稼働につなげるサービスのほか、蓄電池などと組み合わせて電力を無駄なく利用するサービスなども開発していく、としている。「ハードよりソフト」というわけだ。

 

 だが、風力発電機は1MWクラスで1基3億円前後の売り上げにつながる。洋上風力発電では100基を並べるのは珍しくなく、1プロジェクトで300億~400億円の売り上げが期待できる。一方の風力発電事業の運営・システム管理等は長期間契約によって収益を積み上げていくビジネスだ。

 

 経営資源の選択と集中という意味では、今回のソフト特化の判断は、合理的ともいえる。ただ、風力発電機器の技術競争で「敗北」を認めた形であるだけに、先の英国での原発輸出の事実上の断念宣言とともに、「技術の日立」の看板が色褪せたことは間違いない。

 

 日立は再エネ事業全体の売り上げは2018年度見通しで800億円となっている。今後これを大幅に拡大するとしているが、国内市場のソフトビジネスだけで大幅な収益向上につながるかは不明だ。

http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2019/01/0125.html