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世界の主要金融機関の『2021年化石燃料ファイナンス成績表』環境NGOが公表。最多供給銀行は米JPモルガンチェース銀。米銀が上位を占め、日本勢は6位にMUFG、8位にみずほFG(RIEF)

2021-03-24 17:50:28

Rabn22キャプチャ

 

   環境GOのレインフォレストネットワーク(RAN)などは、世界の主要金融機関の「化石燃料ファイナンス成績表 2021」を公表した。対象は日本の3メガバンクを含む世界60機関で、パリ協定後の2016年から昨年2020年までの5年間で、石炭・石油・ガスの化石燃料事業に合計で約3兆8000億㌦(約413兆円)を提供した。最も多かったのが米銀のJPモルガンチェース、上位4位までを米銀が占め、日本勢は三菱FJフィナンシャル・グループ(MUFG)が6位、みずほフィナンシャル・グループ8位、三井住友フィナンシャルグループ18位だった。

 

 調査はRANのほか、オランダのバンクトラック、米シェアクラブ、先住民族環境ネットワーク(IEN)、オイル・チェンジ・インターナショナル、リクレイム・ファイナンス等がまとめた。

 

  主要銀行の化石燃料産業等への資金供給(融資、株式・債券発行の引受による主幹事など主導的な役割の金額総合 )は、パリ協定を結んだ2015年の翌年以降も、前年を上回る伸びを続けた。しかし、2020年は新型コロナウイルス感染拡大により、世界経済が低迷したことから、化石燃料 事業への資金供給も前年比で730億㌦、約9%の減少となった。ただそれでも、16年、17年の総額よりも多い。

 

化石燃料ファイナンスの多い個別金融機関ランキング
化石燃料ファイナンスの多い個別金融機関ランキング

 

 報告書は全体を統括して、「過去5年における 化石燃料ファイナンスの全体傾向は、依然として悪い方向に向かっている。銀行には、従来通りのビジネス に2021年に戻らないようにするために、化石燃料への資金提供を2020年の減少水準にとどめるような方 針を確立する必要性が高まっている」と指摘している。

 

 各金融機関別では、最もファイナンス額の多いJP モルガン・チェースの資金提供額は、5年間総額で全体の約8%を占める3170億㌦に達した。 さすがに2020 年の融資・引受額は前年度に比べて大幅に減少したが、引き続き、パリ協定以降の世界ワースト銀行の座を保っている。2位がシティ、3 位ウェルズ・ファーゴ、4 位バンク・オブ・アメリカと米銀が占めた。5位にカナダのロイヤル・バンク・オブ・カナダ(RBC)、6位がMUFGの順。

 

 報告書は、化石燃料事業を拡大している世界の上位100社への各金融機関の資金供給状況も調べた。その結果、過去5年の融資・引受額が最も大きい銀行は JP モルガン・チェース、シティ、バンク・オブ・アメリカで、パリ協定への支持を表明しているにもかかわらず2020年の資金提供額が大幅に増えている。「宣言」と行動が不一致となっている。

 

パリ協定後の2016年から20年のにかけての主要金融機関の化石燃料ファイナンスの推移
パリ協定後の2016年から20年のにかけての主要金融機関の化石燃料ファイナンスの推移

 

 「成績表2021」では、個別銀行が、化石燃料への資金提供を制限するなどの行動をとっているかどうかも評価した。その結果、ウニクレディト(イタリア)の方針が総合的に最も厳しく、グリーン度が高いと評価された。

 

 ただ、同行の評価点数でも満点の半分でしかなく、化石燃料産業への資金提供からの撤退には依然 として程遠いことも分かった。 2位はフランスのBNPパリバで、2位から6位までを仏銀が占めた。また上位11位までを欧州銀行、12位にやっと米銀シティとなっている。欧州銀行の「グリーン度」が高いことが再確認された。

 

 日本勢は全体にランクが低い。38位にSMBC、39位MUFG、40位みずほ、43位三井住友信託銀行となっている。中国勢はさらに低く、45位の興業銀行が最も高い。中国金融界の化石燃料事業へのコミットメントの高さを表した。

 

 投融資先の分野では、オイルサンド部門はトロント・ドミニオンとRBCを筆頭とするカナダ勢と、JPモルガンが5年間を通した最大の投融資・引き受け先になっている。北極圏での石油・ガス開発事業向けでは、JPモルガンと、中国工商銀行(ICBC)、中国民生銀行、英バークレイズ等が最大の融資・引き受け先として続けている。

 

 海洋の石油・ガス開発では、BNPパリバが、非在来型の石油・ガス開発に関して厳しい内務規制を設けているものの、使途が特定されていない資金供給によって、同部門で最も多額の資金供給をしていることがわかった。シェール油・ガス開発では、ウェルズファーゴやJPモルガン等の米銀が同市場での融資・引き受けを独占しているという。米銀以外では、英バークレイズ、日本のMUFG、みずほの投融資・引き受けが大きい。

 

 報告書は、主要金融機関の多くが、「2050年ネットゼロ」を宣言しているほか、新規の石炭火力発電事業等への投融資停止等も打ち出している点についても分析した。金融機関のこれらの気候コミットメントは、「実際に2021年の化石燃料への資金提供が改善しない限り、50年までの気候コミットメントに真剣に取り組んでいる銀行は一つもないのと同じ」と厳しくみている。

 

 各金融機関が「ネットゼロ」の「ネット(正味)」を実現するため、大量のカーボンオフセットやCCSなどの将来の炭素回収計画に関する非現実的仮定に基づいている点に疑問を示している。科学が求める排出目標に達しない余地を与えたり、カーボンオフセット市場や炭素市場で、多い権利侵害や不正行為が起きる「グリーンウォッシュ」が高まる余地を残していると警戒している。

https://www.ran.org/bankingonclimatechaos2021/