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セーシェル共和国 初のブルーボンド国債発行。海洋保全と持続可能な漁業等を資金使途に。世銀、GEF等の支援を受け(RIEF)

2018-10-31 16:13:16

seshell1キャプチャ

 

 インド洋に浮かぶセーシェル共和国は、海洋環境の保全や持続可能な漁業などを資金使途とする世界初の「ブルーボンド国債」を発行した。2015年から計画を立ててきたが、このほど、世界銀行や国連の地球環境ファシリティ(GEF)などの支援を受け、発行額1500万㌦、10年債を出した。環境保全のグリーンボンド市場は拡大しているが、海洋に的を絞った環境ボンドが今後広がるか、期待が膨らむ。

 

 海洋保全関連の資金調達手段としてブルーボンドを発行するアイデアは、英国皇太子のプリンス・オブ・チャールズが運営するInternational Sustainable Unit(ISU)が最初に提案。EUやの漁業国なども普及を支援している。今年春には、EUやISU、WWFなどが共同で14項目からなる「Sustainable blue economy finance principles」を公表している。

 

 115の島々から構成されるセーシェルは、世界に知られた観光スポットであると同時に、インド洋上にあることからマグロ、エビなどの豊富な漁業資源の輸出が盛んだ。漁業は同国のGDPの1%を占める。しかし、漁業は自然資源に依存することから漁獲高の変動があるほか、地球温暖化の進展による海面上昇、海洋汚染のプラスチックゴミ問題などの影響も大きい。同国の海岸は19世紀以来、19cmの海面上昇による影響も受けている。

 

 こうした中で、同国は、海洋資源の保護、自然環境の保全とバランスのとれた持続可能な漁業を推進するため、ブルーボンドでの資金調達を計画してきた。債券発行で得た資金を漁業でのエネルギー削減、汚染の防止、資源のリサイクルを促進するプロジェクト、自然保護等に投じる計画だ。http://rief-jp.org/ct12/58115

 

  初めて発行されるブルーボンド国債のクーポンレートは6.5%。発行額1500万㌦の3分の1に相当する500万㌦分は、世銀から支払い保証を得ている。この世銀の保証によって、クーポンレートの2%分は担保される。また、GEFからもクーポン支払い確保のため、500万㌦の無利子ローンを供与される。これらの支援により、同国が負担する資金調達の実質レートは2.8%に下がる。投資家向けには高いリターンを確保しつつ、発行コストを下げる仕組みとする。

 

 セーシェルは国の信用格付けをFitchからBB-と評価されている。ただ、今回のボンドについては信用格付けは付与されていない。

 

 今回の発行分は、私募の形で、米年金TIAAの資産運用部門のNuveenのほか、 保険会社のプルデンシャル・ファイナンシャル(Prudential Financial)、  Calvert Impact Capitalの3機関がそれぞれ500万㌦ずつ引き受けた。

 

 調達資金はセーシェルの二つの機関に配分される。まず、セーシェル開発銀行に1200万㌦を供給し、適格プロジェクトへ融資するほか、セーシェルのコンサーベーション・気候変動アダプテーショントラストに300万㌦を供給する。同資金は海洋保全事業等に無償供与される。

 

 ボンドについては第三者評価は付与されていない。私募ということのほかに、世銀がボンドの設計から資金使途先事業の調整等にまで関わっており、世銀の担当者のBenoit Bosquet氏は「世銀の政策と手続きに基づいて進められた」と評価している。

 

 世銀の財務局リード金融オフィサーのGianfranco Bertozzi氏は「今回のブルーボンドの普及によって、海洋保全と経済についても、より持続可能な方向に発展できるよう資本の流れを促進したい。今後は、ブルーボンド原則(GBP)のような『ブルーボンド原則』の策定が必要かもしれない」と述べている。

http://www.statehouse.gov.sc/news.php?news_id=4184