HOME8.温暖化・気候変動 |経産省、非効率な国内の旧式石炭火力発電所100基を2030年度までに段階的に休廃止へ。超々臨界圧石炭火力(USC)等は維持・拡大。「脱石炭」より「縮石炭」か(各紙) |

経産省、非効率な国内の旧式石炭火力発電所100基を2030年度までに段階的に休廃止へ。超々臨界圧石炭火力(USC)等は維持・拡大。「脱石炭」より「縮石炭」か(各紙)

2020-07-02 15:49:11

Coalpower001キャプチャ

 

  各紙の報道によると、経済産業省はCO2排出量が多く、温暖化加速の元凶とされる石炭火力発電所のうち、1990年代前半までに設立した非効率な発電所を、2030年度までに段階的に休廃止する方針という。現在、国内にある140基の石炭火力発電のうち7割相当の約100基が該当する。一方で、超々臨界圧火力発電(USC)などの高効率な発電所は維持・拡大するとしている。温暖化の加速で各国で石炭火力離れが進む中、日本でも対応を急ぐこととした。

 

 読売新聞等が報道した。同紙によると、梶山経産相が近く正式に表明する。今後、有識者会議を設置して、休廃止に向けた手法や道筋をまと目、来年にも法令や制度を改正するとしている。休廃止対象となるのは全体の7割程度だが、90年代前半までの非効率型では9割になる。

 

 経産省では、発電所縮減の方法として、まず、発電各社が保有する非効率な石炭火力発電の発電量に上限を設定。その上限の発電容量を毎年、縮減していくことで、段階的に休廃止に誘導する方針。休廃止に際しては、政策的な配慮を付与するとみられる。現在、国内で稼働中の発電効率の低い石炭火力は114基。USC等の高効率火力の26基は温存する。

 

日経新聞から
日経新聞から

 

 環境NGO等は、休廃止方針を原則的に歓迎する一方で、全廃ではないことや、USCはむしろ促進されるのではとの懸念の声も出ている。

 

 グリーンピースジャパンは「日本の気候・エネルギーの議論を大きく変えるもの。政府がこれまでの方針を転換し、CO2排出量の多い石炭火力の削減に乗り出すことを歓迎する」とする一方で、「いくつかの火力は稼働を続け、新たな建設計画が進んでいるが、これらは早急に中止すべき」(同)と求めている。

 

 先に、みずほフィナンシャルグループに対して気候変動対策の明確化を求める株主提案を出した「気候ネットワーク(KIKO)」も、「非効率石炭火力の休廃止に踏み込む動きは歓迎する。しかし、パリ協定の目標達成のためには、非効率・高効率問わず、また建設中・計画中も含め、先進国はすべての石炭火力発電を2030年までに全廃しなければならない」と指摘している。

 

 日本の2018年度時点の総発電量に占める石炭火力の割合は32%。天然ガス火力の38%に次ぐウエイトを持つ。今回の報道通りだと、CO2排出量は約6400万~1億1600万㌧の削減が見込まれることになる。日本の温室効果ガス排出量全体の5~9%分に相当する。現在、政府は電力構成に占める石炭カの割合を2030年度で26%としているが、これが20%程度にまで下がる見込みだ。

 

 経産省は石炭火力の発電量の減少分は、再生可能エネルギーの普及や原子力発電所の再稼働を進めてカバーする方針。一方で、「主要な電源としての石炭火力の位置づけは変えない」との姿勢は維持するとされる。となると、休廃止対象外の高効率とされるUSCなどの新規建設がむしろ促進される可能性もある。

 

https://www.yomiuri.co.jp/economy/20200702-OYT1T50041/

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61056470S0A700C2MM0000/