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書評:「データドリブン脱炭素経営」(筒見憲三著、幻冬舎)

2021-09-27 12:53:41

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 本書は、長年にわたってESCO事業等の省エネルギー・エネルギー効率化の事業化、啓蒙活動に携わっている著者が、2050年のカーボンニュートラルに向けて、改めて省エネを軸とした「脱炭素経営」への転換を企業と企業人に求める書である。脱炭素・サステナビリティと並ぶもう一つの国際潮流であるデジタル化を踏まえ、省エネ・再エネのデータに基づいた脱炭素経営を提案している点がポイントだ。

 

 著者は「失われた20年」と言われる中で、日本企業が国際競争力を低下させた要因の一つにデジタル化の遅れを指摘。一方で省エネ化が進まない要因となってきた石油危機以降に、役所や経団連で唱えられてきた「絞り切った雑巾」論の“虚構”を突く。そしてデジタル化を省エネ追求に活用することで、日本企業の競争力復活とカーボンニュートラルへの道筋を描く。

 

 データに基づいた新たな脱炭素経営の指標として「エネルギー生産性(EP)」と「炭素生産性(CP)」をあげ、現行の省エネ法の抜本改正も求めている。

 

 全体は6章に分かれ、最大のポイントとなる「データドリブン」の脱炭素経営では、経営がエネルギーデータをしっかり把握し、経営に反映させるための「全社的な統合エネルギー管理システム(EnMS)」の導入を推奨している。

 

 著者はこのEnMSを「脱炭素経営の体重計」と位置付ける。経営者はこの「データドリブン」の体重計に、日々反映される自社のエネルギー・炭素バランスを注視し、経営の舵取りに反映させることが求められる。

 

 本書の構成:

第1章 生産性伸び悩む日本産業

第2章 省エネは脱炭素社会実現の大前提

第3章 EP・CPを脱炭素経営への基本指標に

第4章 イニシアチブ参加で高める国際発信力

第5章 脱炭素経営への転換に向けた処方箋

第6章  データドリブン脱炭素経営へ

おわりに

 

著者紹介:

筒見 憲三(つつみ・けんぞう)

京都大学工学部建築学科、同工学研究科建築学専攻修了、大手建設会社を経て、ボストン大経営学修士(MBA)。日本総合研究所を経て、1997年ファーストエスコ社設立・代表取締役。2007年ヴェリア・ラボラトリーズ設立・代表取締役として現在に至る。愛知県犬山市。

 

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