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資料:環境省再エネファンド検討会報告「再生可能エネルギーファンドの情報開示について」(2016年3月)

2016-04-14 16:22:38

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 環境省の「再生可能エネルギーファンドの情報開示検討会」は、太陽光発電など3つの技術分類ごとの再エネファンドの情報開示の「手引き」を作成し、公表した。

 

 同検討会は、2014年11月、「グリーン投資促進のための情報開示及び評価の在り方検討会」がとりまとめた「中間取りまとめ」を受けている。同まとめでは、再エネファンド全般に共通するリスクに対応した情報開示の基本項目と、それぞれについての開示情報の事項をまとめた。いわば一般的な開示ルールである。今回は、再エネファンドの種別に応じたリスク評価を踏まえて整理した。

 

 基本となる「中間取りまとめ」が示した全般事項は16項目。このうち「制度・権利・ガバナンス関連リスク」として①用地確保②許認可③売電価格などの5項目。「技術・構造関連リスク」として⑥完工⑦工事による近隣環境への影響など8項目。

 

 また「関係者に関するリスク」として⑭スキーム関係者のデフォルトの影響。「市場関連リスク」として⑮エネルギー市場の動向の影響など2項目を選んだ。これ以外に「投資家の『グリーン』への期待」も、再エネファンドを評価する際に、必要になることも付言した。http://www.env.go.jp/policy/kinyu/report_h2611.pdf

 

 今回の技術分類ごとの整理では、「中間取りまとめ」で整理した16項目に基づいて、太陽光発電、風力発電、バイオマス発電(木質系、湿潤系)の3タイプの再エネ発電ファンドの技術類型ごとに、評価事項、開示項目(What)、開示の仕方(How)、特記事項の具体的な内容を、一覧性を持たせる形で示した。

 

 たとえば太陽光発電ファンドの場合、①の「用地確保」を「観点」としてとらえ、「評価事項」は、土地の所有権・賃貸権等と、第三者対抗要件の2点をあげている。このうち、土地の所有権・賃貸権の「開示項目」は、それぞれの権利関係を記載し、第三者対抗要件については「開示の仕方」で「借地権の登記」などの記載事例をあげている。

 

 「特記事項」では、「屋根置き太陽光発電」の場合は屋根のみの賃貸権には、有効な対抗要件がないので、条件を明記することなどを付言している。このように報告書は、再エネファンドの事業者が「何」を「どのように」開示すればいいかがわかるような「手引き」になっている。

 

 風力発電の場合、騒音・振動対策の効果として、講じる対策による騒音・振動の予測値と実測値を記載を求めるとともに、それらの対策の元となる環境影響評価等の結果や、稼働時の対策として二重サッシや防音壁の効果等の開示を求めている。

 

 バイオマス発電(木質系)では、「コンプライアンス・ガバナンス」の観点として、原料に海外のパームヤシ殻(PKS)を使う場合は、特記事項として、「輸出国でのPKS収集に関連する児童労働や環境破壊等の恐れが発生する可能性がある」ことに留意し、それらの対策に関する情報の開示を求めている。

 

 グリーン特性に関する主な開示情報として、各再エネファンドとも共通してCO2排出量の削減をあげている。バイオマス発電の場合、海外からPKSを輸入する事業も増えていることから、「輸入にかかわる排出量も考慮することが必要」と特記事項に定めた。

 

 湿潤系のバイオマス発電の場合、スキーム関係者のデフォルトリスク評価の一つに、燃料調達先である食品関連産業情報をあげるとともに、その開示の仕方については「同企業の名称、経営状況、生産規模」の開示を例示している。各ファンドとも、売電価格については、「系統側の要請により、想定外の送電・発電停止になる可能性がある」という特記事項を備えている。

 

<検討会委員は以下の通り>

・池知彦  イーアンドイー・ソリューションズ株式会社、環境事業部副事業部長

・後藤英樹 株式会社クレアン ESGアドバイザリーコンサルタント

◎藤井良広 上智大学客員教授、一般社団法人環境金融研究機構代表理事

・吉田淳 株式会社ザイマックス不動産総合研究所 取締役主研究員

・若林泰伸 早稲田大学法学部教授

 

◎は委員長

 

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