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みずほフィナンシャルグループ、新規の石炭火力発電事業への融資停止へ。6月から実施。既存火力向けも2050年までに段階的にゼロ。3メガバンクが新規石炭融資停止で足並みそろえる(RIEF)

2020-04-15 02:40:31

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 各紙の報道によると、みずほフィナンシャルグループは新規の石炭火力発電所向け融資を停止する方針を決めた。既存の石炭火力向け融資についても段階的に削減して2050年度までにゼロにするとしている。三井住友フィナンシャルグループも、近く同様の新規石炭火力事業向け融資停止方針を打ち出す。三菱UFJフィナンシャル・グループは昨年夏に新規融資停止方針を出しており、3メガバンクの足並みがそろうことになる。

 

 日本経済新聞が報じた。それによると、みずほFGはESGの基本方針を改定し、新規の石炭火力事業向け融資をしないことを明記し、6月から適用するという。現行の石炭火力向け事業融資(プロジェクトファイナンス)残高は20年3月末時点で約3000億円。これらについても融資資金の借り換えには原則として応じないことで30年度に半減させ、50年度までにゼロにするとしている。

 

 みずほが石炭火力向け融資で一歩踏み出したのは、石炭関連産業向けの同グループの融資の大きさが突出しているとの批判が高まったことが大きい。環境NGOによる世界の金融機関向け調査で、みずほFGは2017年から19年までに総額168億㌦(約1兆7640億円)の融資を実施、世界最大の「石炭火力支援銀行」と目されている。

 

みずほの石炭火力融資に抗議するNGOのメンバー
みずほの石炭火力融資に抗議するNGOのメンバー

 

 こうしたことから、先月半ばには、国内の環境NGO「気候ネットワーク(KIKO)」がみずほに対して、気候関連リスクおよびパリ協定の目標に整合した投資を行うための計画を開示するよう求める株主提案を提出した。気候変動に関する株主提案が出されたのは日本では初めて。http://rief-jp.org/ct1/100272?ctid=67

 

 同提案には、ノルウェー最大の企業年金・保険会社であるKommunal Landspensjonskasse (KLP)、同じくStorebrand ASA、デンマークの年金基金のMP Pensionなどが相次いで、株主総会で賛成することを表明をした。KIKOの株主提案への支持は他の機関投資家にも広がる勢いをみせているという。http://rief-jp.org/ct6/101052?ctid=67

 

 こうした動きを受けて、みずほは、このままでは株主総会で提案が承認されるか、もしくは高い賛成票を得る可能性があり、経営責任が問われると判断したとみられる。みずほ自身も、気候変動の進展と技術革新の展開で、国内の再エネ発電コストが欧米のように大幅に下がると、石炭火力発電所の競争力が低下し、融資資金の返済が滞るか、あるいは債権の債務者区分低下のリスクが出る可能性もあるとみているようだ。

 

 報道によると、みずほは、こうした将来の気候リスクによる潜在的なコスト増が、2050年までに最大で3100億円程度増えるとの試算もしているという。今後は、石炭火力事業を展開する電力会社等の融資先との対話を通じ、気候変動に応じた事業構造への転換を促すことで、貸出資産が劣化する事態を防ぐ行動もとっていくとしている。

 

 メガバンクでは、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が昨年7月から「MUFG 環境・社会ポリシーフレームワーク」を改定し、新規石炭火力発電向け融資は、超々臨界圧石炭火力(USC)を含めて原則禁止の方針を正式に盛り込んでいる。さらにMUFGは、2030年度までに総額20兆円の新規投融資等を実施する「サステナブル ファイナンス目標」も設定した。http://rief-jp.org/wp-admin/post.php?post=89889&action=edit

 

 三井住友フィナンシャルグループも、こうした両グループの動きに足並みをそろえる方針という。各金融機関は、TCFD提言に沿った気候リスク管理の体制整備を内外から求められている。欧米主要銀行は、すでに主要な機関投資家等の要請で、石炭関連事業への融資活動から基本的に撤退している。だが、日本の銀行は、経済産業省が化石燃料エネルギー維持の方針を変えず、電力会社も新規建設を続けることから、これまで明確な「脱石炭」の方針を打ち出せないできた。

 

 しかし、国内の旧来のエネルギー行政や重厚長大産業の都合に身を合わせ続けるよりも、国際市場での金融活動を強化する中で、欧米の機関投資家の圧力のほうが次第に重みを増している。金融機関自体の国際的なビジネス展開でも、国内事情によって化石燃料関連融資を続けていると、国際的なプロジェクトファイナンスのシンジケーション等に参加できにくくなるといった軋轢も生じている。金融が変われば、企業・事業も変わることになりそうだ。

https://www.mizuho-fg.co.jp/index.html

https://www.kikonet.org/info/press-release/2020-03-16/mizuho_shareholder_resolution

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58041780U0A410C2EE9000/