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三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)も、新規石炭火力発電事業への融資原則停止を宣言。ただし、超々臨界圧石炭火力発電は「別途検討」と微妙。環境NGOらは疑念示す(RIEF)

2020-04-16 22:00:40

SMBC34キャプチャ

 

 三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)は16日、先に示した「サステナビリティ宣言」に基づき、石炭火力発電事業等の環境・社会に影響を及ぼす事業・セクターに対するグループ方針をまとめた。新規石炭火力発電事業については「原則支援しない」とする一方で、超々臨界圧石炭火力発電(USC)事業等については「慎重に対応を検討する場合がある」として、例外扱いの姿勢を示した。先にみずほフィナンシャルグループが示した例外措置よりも範囲が広く、環境NGOらは懸念を示している。

 

 SMBCは「ESGに関するリスクの考え方」として、①石炭火力発電②水力発電③石油・ガス④炭鉱採掘⑤タバコ製造⑥自然保護地域⑦パーム油農園開発⑧森林伐採⑨クラスター爆弾やその他殺戮兵器の製造、の9分野についての対応策を整理、公開した。同方針はSMBCグループの主要企業である三井住友銀行、SMBC日興証券、三井住友ファイナンス&リース、SMBC信託銀行の4社のビジネスに、5月1日から適用するとしている。

 

 サステナブルファイナンスの具体的な方針の開示は、昨年5月の三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、今月15日のみずほフィナンシャルグループに次ぐ。https://www.mufg.jp/dam/pressrelease/2019/pdf/news-20190515-001_ja.pdf 

https://www.mizuho-fg.co.jp/release/pdf/20200415release_jp.pdf

 最大の焦点である石炭火力事業向け融資については、「新規の石炭火力発電所への支援は原則実行しない」とする一方で、USCや改定前からの案件については「慎重に対応を検討する場合がある」として「原則」の枠外とする考えを示している。さらに、カーボン回収・貯留技術(CCS)については「技術開発を支援する」とした。

 

新規原発建設の「例外」になると懸念されているベトナムのブンアン石炭火力発電所の完成予想図
新規原発建設の「例外」と懸念されているベトナムのブンアン2石炭火力発電所に隣接するブンアン1石炭火力事業

 

 他のメガバンクの方針は、「新設石炭火力事業は原則停止」では共通する。例外措置で微妙に表現が異なる。MUFGは「(途上国向けで)OECD公的輸出アレンジメント等を参照」、「CCSは支援」。みずほは「(途上国等の)エネルギー安定供給に必要不可欠でかつ、温室効果ガスの削減を実現するリプレースメ ント案件は慎重に検討」「エネルギー転換に向けた革新的、クリーンで効率 的な次世代技術の発展等(は支援)」。

 

 MUFGもみずほも、途上国向けとして、USCの使用もあり得ると読める。ただ、国内には言及していない。これに対してSMBCはUSCを内外の区別なく「慎重に対応」対象としているので、国内でもUSCならば例外扱いの可能性があると読める。CCS支援は共通する。

 

 炭鉱採掘については、3グループともほぼ同じ。①取引先の環境・社会配慮の実施状況の確認と、生態系への影響、地域住民との関係、労働安全衛生への対応を検討②Mountain Top Removal(山頂除去)方式で行う炭鉱採掘事業への投融資等は停止、としている。

 

北極圏の環境を悪化させる石油・ガス採掘事業
北極圏の環境を悪化させる石油・ガス採掘事業

 

 SMBCは「石油・ガス」については①オイルサンド②シェールオイル・シェールガス③北極圏での石油・ガス採掘事業④石油・ガスパイプライン、の4分野に分けて定めている。いずれについても融資に際して環境・社会リスク評価を行うとし、融資を否定していない。MUFGとみずほは、いずれもSMBCほど具体的には記載していないので、原則として投融資対象に入れていると理解される。

 

 ただ、このうち北極圏開発へのファイナンスについては、JPモルガンチェースやゴールドマンサックス等の米銀や、HSBC、BNPパリバ等の欧州勢はそろって融資停止を宣言している。

https://rief-jp.org/ct6/99582  http://rief-jp.org/ct6/78779

http://rief-jp.org/ct6/73507

 SMBCは「SMBCグループ サステナビリティ宣言」の中で、2020年度から29年度までの10年間で総額10兆円のグリーンファイナンスの実行を目標とするほか、傘下の三井住友銀行の事業活動から生じるCO2排出量を29年度までに30%削減(18年度比)とするなどのKPI(主要業績指標)を掲げている。https://rief-jp.org/ct1/100943

 

 SMBCの方針改定で、3メガバンクのサステナブルファイナンス方針が出そろったことになる。環境NGOからは、各グループの対応の不ぞろい部分への不満が出ている。気候ネットワーク(KIKO)は「SMBCの方針は、MUFGが昨年5月に表明したものとほぼ同じ。SMBCのスピードは非常に遅々たるもので、他の邦銀に追い付いただけの不十分なもの」と指摘。https://www.kikonet.org/info/press-release/2020-04-16/SMBC_Coal_Finance_Policy

 

 グリーンピースジャパンも「SMBCの新方針には失望した。新規の石炭火力発電事業に今後も資金を提供する余地を残すことは非常に無責任。世界的なESG投資のトレンドから、SMBCがいかに遅れているかを示している」などと批判している。https://www.greenpeace.org/japan/nature/press-release/2020/04/16/13337/

https://www.smbc.co.jp/news/j602058_03.html