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三井住友フィナンシャルグループ、2021年度TCFDレポート。自社のGHG排出量は2030年にネットゼロに。投融資ポートフォリオを含むScope3の中長期目標は2023年に設定(RIEF)

2021-09-02 23:49:10

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  三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)は2021年度のTCFDレポートを公表した。2030年に自社の温室効果ガス(GHG)排出量をネットゼロにするとともに、Scope3の中長期目標を2023年に設定し、投融資ポートフォリオのネットゼロを2050年に達成するとした。シナリオ分析では、従来の「2.0℃目標」に代え、「1.5℃目標」で試算、移行リスクは現状に比べ、2050年までに単年度で約20~240億円の与信関係費用が増加するとした。

 

 自社のGHG排出量ネットゼロ目標はScope1、同2の合計。その80%以上は消費電力で占められるため、再エネ電力等への切り替えを進める。2050年までの長期的な気候変動対策では、Scope3の投融資ポートフォリオのGHG排出量の削減が必要になる。そのため、高排出セクターごとの排出量把握と評価を進める。

 

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 まず23年度中に、電力と石油・ガスの各セクターのGHG排出量を算定し、その後、順次対象セクターを広げていく。2020年度のグループの電力向け融資額は2.1兆円(融資総額に占める比率2.4%)、石油・ガスセクターは3.5兆円(同4.1%)、合計5.6兆円(同6.5%)。19年度比0.4%減。プロジェクトファイナンスとコーポレートファイナンスの両方を含む。

 

 石炭火力向け発電については、現在約3000億円の融資残を抱えるが、2030年までに半減、40年に残高ゼロとする従来方針を踏襲している。2021年5月には、石炭火力の新設・拡張案件への支援も実行しない方針を打ち出している。

 

  シナリオ分析では、移行リスク分析において、新たに1.5℃シナリオを用いた。前年はIEAの2℃シナリオに基づいていたが、今回はCurrent Policiesシナリオ(3℃)のほか、NGFSとIEAのそれぞれの1.5℃シナリオを含め3つのシナリオを試算した。対象地域も前回の国内向け貸し出しからグローバルに拡大した。その結果、2050年度までの与信関係費用の増加は、単年度で20億~240億円と、前年の20億~100億円より、最大値が増えた。

 

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 これはNGFSの「ネットゼロ2050」シナリオでは炭素価格をトン当たり673㌦で、IEAシナリオの250㌦と大きな開きがあるため。NGFSシナリオは、金融庁がSMBCを含む大手銀行に適用を想定している。今後、国内金融機関はNGFSベースのシナリオ分析への対応が求められることになる。

 

 物理的シナリオ(水災リスク)は、前回同様、IPCCのRCP2.6シナリオ(2.0℃シナリオ)と、RCP8.5℃(4℃シナリオ)を活用。ただ、対象地域を国内だけからグローバルに拡大した。その結果、増加が予想される与信関係費用は、前回の累積300億~400億円から、同550億~650億円に増加した。ただ、単年度平均では20億円前後の与信関係費用の発生で、融資の大半を抱える三井住友銀行の単年度財務に与える影響は限定的、としている。

 

 三井住友銀行の融資(プロジェクトファイナンスとコーポレートファイナンスの合計)に占めるセクター別のGHG排出量(炭素強度)の試算では、PACTAのアプローチに基づき、kWh当たりCO2排出量は382gだった。プロファイだけなら200~203g-CO2/kWh。日本の平均457g、世界平均508g、アジア太平洋平均640gをいずれも下回っている。

 

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 大手金融グループは投融資ポートフォリオのGHG排出量の把握、投融資先の脱炭素化へのエンゲージメントが求められる。Scope3対応だ。そのためには、投融資先の気候情報開示の促進に基づき、ポートフォリオのグリーンアセット、ブラウンアセット等の分類・把握が必要になる。SMBCは「セクター別の投融資ポートフォリオGHG排出量の試算と、グリーンアセット、ブラウンアセット等を念頭にモニタリング体制を整備し、気候変動に対する強靭性を確保していく」としている。

https://www.smfg.co.jp/news/j110324_01.html https://www.smfg.co.jp/sustainability/materiality/environment/climate/pdf/tcfd_report_j_2021.pdf