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川崎汽船、みずほ銀行等から「トランジション・リンク・ローン」を最大1200億円調達。SPTは2050年までのネットゼロではなく、50%減止まりだが、経産省が「モデル」と推薦(RIEF)

2021-09-06 17:48:57

Kawasakiキャプチャ

 

 川崎汽船は6日、経済産業省等の「トランジションファイナンス基本指針」に基づくトランジション・リンク・ローン(TLL)を最大1200億円、今月末に借り入れると発表した。みずほ銀行がアレンジするシンジケート団から調達する。調達期間は未定としている。同社は、3月にトランジションローンを、みずほ銀等から借り入れている。

 

 初のTLLの対象となるサステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPT)は、①2050年までの温室効果ガス(GHG)排出量を08年比50%削減目標とし、それに沿った年度目標を設定②2030年までに同社の海運事業のトンマイル当たりのCO2排出量を08年比50%削減目標とし、それに沿った年度目標を設定③CDP評価でA-以上の評価の維持、の3つを定めた。

 

 3つのSPTにリンクするトランシェごとの借入額は、①400億~600億円②400億円③200億円としている。SPTの未達の場合の「ペナルティ」については「財務的特性が変化する取り決め」としているが、具体的な金利額等の明示はない。

 

  みずほ銀行がアレンジャーとなる。セカンドオピニオンは日本格付研究所(JCR)が付与した。トランジションローンは、融資対象となる事業を特定する。同社の3月の借り入れは、全額を「次世代型環境対応LNG燃料自動車専用船の購入資金」に充当した。

 

 これに対して、今回のTLLは一般のコーポレートローンと同様、資金使途の定めはない。設定したSPTの目標達成を条件とし、経産省のモデル事業として補助金を取得できる。

 

 公表したTLLのSPTでは、2030年目標は、菅政権が国際公約した「08年比46%~50 %削減削減」とほぼ整合する「50%削減」としているのに対して、2050年目標については国の「ネットゼロ」目標ではなく、「08年比50%減」にとどめている。

 

 同SPTを経産省が「モデル」として推奨することは、企業の50年目標はネットゼロでなく、50%削減でもいいとの「お墨付き」を与えたともいえる。企業活動での排出量がこのレベルでも、国全体のネットゼロ目標と整合するとの説明は、経産省が担うのだろう。

 

 融資期間の明示はない。だが、企業向け融資で2050年までの30年間に及ぶ超長期融資は考えられないことから、2050年目標よりも早い段階で借入金の返済になるとみられる。SPT目標の設定では、「2050年の削減目標を線形補間し各年度目標を設定する」としているが、借入金返済後に、年度目標と最終目標との未達状態になった場合の対応が担保されるかどうかは不明。

https://www.kline.co.jp/ja/news/csr/csr4719423195693538923/main/0/link/210906JA.pdf

https://www.jcr.co.jp/download/d0108df640f9282dc26a682a26c42265a86728a2c4aa02df41/21d0585.pdf