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みずほフィナンシャルグループ、サステナビリティ基本方針改定。新規の石炭火力事業者との取引停止等盛り込む。移行リスク対象セクターに鉄鋼とセメントも盛り込む(RIEF)

2022-05-18 20:03:48

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 みずほフィナンシャルグループは17日、同グループのサステナビリティ基本方針を改定し、新規の石炭火力発電所事業を行う企業向けの投融資の禁止のほか、既存発電所のリプレースメント事業も融資対象外とするなどを盛り込んだ。石炭火力企業の新規顧客との取引を禁止したのは邦銀では初めて。投融資を通じたGHG排出量(Scope3)をネットゼロにする「financed emission」の中期目標(2030年度)として、電力セクターの目標を設定した。

 

 これまでの同グループの方針でも、石炭火力事業の新規建設、既存発電所の拡張向けの投融資等は行わないことを規定していた。だが、既存発電所のリプレースメント案件は除外扱いだった。今回、新規の石炭火力発電事業者への投融資を行わないことを明確化するとともに、プレースメント案件も投融資を行わないとした。同様に、一般炭採掘事業を主業とする企業との新規取引も行わない。

 

 投融資先のGHG排出量削減の対象に加えた電力セクターの2030年の中間削減目標は、138 ~ 232 kgCO2/MWhとした。同じ3メガバンクの三菱UFJフィナンシャル・グループは156〜192gCO2e/kWh、三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)は138〜195gCO2e/kWhで、それらに比べ、みずほは相対的に水準が高いともいえる。

 

 TCFD提言に基づいて移行リスクの高い炭素集約産業として、これまで電力ユーティリティー、石油・ガス、石炭の各セクターを対象としていた。今回、新たに鉄鋼、セメントを追加した。これらのセクターについては1.5℃を含む複数のシナリオ分析によりモニタリングを実施し、対象企業の移行リスクへの対応状況をエンゲージメントを通じて、年一回確認する手順としている。

 

 新たな2セクターを含め、これら移行リスクの高リスク領域企業向けの同グループが抱える信用エクスポージャーは1.6兆円(2022/3末時点速報値)となった。これは前年度の1.8兆円(2021/3末時点)より減少している。減少分は、これまでの炭素集約産業のエクスポージャー削減の効果といえる。

 

 人権の尊重等の社会分野への対応では、セクター横断的に投融資を禁止する対象に、これまでの強制労働、児童労働に加えて人身取引を引き起こしている案件を追加した。また紛争地域での人権侵害を引き起こす、または助長する事業、あるいは人権侵害と直接的に結びついている事業も対象に加えるなどの改定を行った。

 

 2019~21年度の3年間のサステナブルファイナンス等の実績は、13兆1000億円、このうち環境ファイナンスは4兆6000億円となっているとしている。

 

  みずほの今回の方針改定に対して、環境NGO 350.org Japanのシニア・キャンペーナーの渡辺瑛莉氏は「みずほが石炭火力や一般炭採掘事業等への新規融資を行わない方針を掲げたのは邦銀で初めて。企業融資の制限に踏み込んだ点は評価できる。だがパリ協定の目標達成のためには、2030年に先進国で、2040年に世界全体で石炭火力の稼働をゼロにするという気候科学が示す道筋と整合しているとは言えない。ネットゼロ実現のためには新規の石炭火力、炭鉱、ガス・油田の開発の余地はなく、多くの建設中のLNG設備も必要ないとするIEAのネットゼロシナリオに従い、早急にさらなる方針強化を行うべき」と指摘している。

https://www.mizuho-fg.co.jp/release/20220517release_jp.html

https://www.mizuho-fg.co.jp/release/pdf/20220517release_jp.pdf

https://world.350.org/ja/350media/