HOME10.電力・エネルギー |日本の金融機関のエネルギー融資・引き受けの約9割は化石燃料向け。再エネ向けの19倍。石炭向けはやや減少傾向だが、石油・ガス向けは高水準。3メガバンク主導。環境NGO調査(RIEF) |

日本の金融機関のエネルギー融資・引き受けの約9割は化石燃料向け。再エネ向けの19倍。石炭向けはやや減少傾向だが、石油・ガス向けは高水準。3メガバンク主導。環境NGO調査(RIEF)

2022-06-07 21:36:41

350001キャプチャ

 

  わが国の金融機関のエネルギー融資・引き受けの9割は石炭、石油・ガス等の化石燃料で占められていることが環境NGOの調査でわかった。2016年から21年6月までの5年間の、化石燃料事業向け融資・引受額は2856億㌦(32兆8325億円)で再生可能エネルギー事業向け147億㌦(1兆6905億円)の19倍だった。原子力関連企業向け融資は146億㌦(1兆6790億円)で再エネ向けとほぼ同額。再エネファイナンスは依然、わが国の金融では主流にほど遠いことが浮き彫りとなった。

 

 調査を実施したのは環境NGOの350.org Japan。日本の金融機関190社を対象とし、金融情報データベースや企業の公表情報等から各エネルギー企業・事業への投融資・引き受け状況を調査・調分析した。同団体はこれまでも同様の調査を実施してきたが、再エネについての調査は今回が初めてで、化石燃料、原子力、再エネの3エネルギー源への金融機関の取り組みを総合的に把握できる内容となった。

 

化石燃料企業と再エネ企業への融資・引き受けの推移
化石燃料企業と再エネ企業への融資・引き受けの推移

 

 2016年~21年を通してみると、化石燃料向け融資・引き受けのうち、石炭向けはわずかに減少傾向。だが、それよりもはるかに大きく石油・ガス向けに資金の流れが拡大している。他方、再エネ向けの融資等は横ばい。この点で350.org Japanは、国連のグテレス事務総長が、「(パリ協定の目標達成のためには)再エネへの移行速度を3倍にしなければならない」と述べていることを指摘し、「日本の金融機関はこれまでのところ、再エネ転換のための明確な前進を示すことに失敗してきた」と断じている。

 

 個別金融機関ベースでは、石油・ガス向け融資等の9割以上は、みずほフィナンシャルグループ、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)の3メガバンクが占め、このうちみずほが844億㌦(34%)でトップ。MUFG801億㌦(33%)、SMBC629億㌦(26%)。3メガは石炭向けの67%、原子力向けで61%を占めており、従来の「火力・原発融資」路線を、依然、崩していないことがわかる。

 

金融機関別の、石油・ガス向けの融資・引き受けの割合
金融機関別の石油・ガス向けの融資・引き受けの割合

 

 調査対象の金融機関190社のうち、60社については、化石燃料及び原子力関連企業への融資の事実が確認されなかったとしている。メガバンクをはじめとする大手金融機関等と、地方銀行や信用金庫等の中小金融機関の対応の違いも出ているといえる。

 

 化石燃料、再エネ、原子力の各エネルギー関連企業の債券・株式保有額が最も大きい投資会社では、オリックスが76億4200万㌦でトップ、次いでSMBC59億4200万㌦、MUFG45億9200万㌦、野村ホールディングス30億7700万㌦、日本生命28億7800万㌦と続く。オリックスは石油・ガス関連企業向けの引き受けで1位だったほか、再エネでも1位となっている。

 

投資会社別のエネルギー向け投資状況
投資会社別のエネルギー向け投資状況

 

 350.org Japan代表の横山隆美氏は「気候変動が深刻化し、世界各地で異常な気候災害が頻発する中、日本の主要な金融機関が、パリ協定の成立以降も、再エネと比べて19倍もの金額を化石燃料に資金提供したという事実は極めてショッキングだ。日本の金融機関は、気候科学に向き合い、これまでの延長線上にない、脱炭素社会に向けた抜本的な転換が求められる」と指摘している。

 

https://world.350.org/ja/press-release/20220607/