グラスゴー金融同盟(GFANZ)。日本支部を設置。アジア太平洋ネットワークの一環との位置づけ。6月に稼働へ。議長に第一生命会長の稲垣氏(RIEF)
2023-05-11 13:22:25

グラスゴー金融同盟(GFANZ)は10日、アジア太平洋(APAC)ネットワークの一環として日本支部を設立すると発表した。国単位の支部の設置は日本が初めて、としている。GFANZに加盟している日本の各金融業態の企業が参加する。GFANZは声明の中で、「国内の金融機関、パートナー企業、官公庁など、様々なステークホルダーと協働し、日本がネットゼロへの移行の機会を掴むために必要な変革を実行・加速し、ネットゼロ目標を達成できるよう支援する」と述べている。
支部は東京に置く。6月から稼働する。議長には、第一生命保険の会長の稲垣精二氏が就任する。
GFANZは、G7首脳会議が広島で開かれるタイミングで、GFANZ日本支部を立ち上げことを強調し、「日本の金融機関が自主的に協力し、気候変動ファイナンスに関してリーダーシップを発揮する形となる」としている。GFANZ傘下のネットゼロ金融連合から、米欧の金融機関の離脱が起きているタイミングでの日本支部の設立が、「GFANZ離れ」に歯止めをかける期待もあるようだ。
日本支部は、2022年6月に設立されたGFANZアジア太平洋(APAC)ネットワークの一環となる。APACネットワークは昨年11月にシンガポールで初会合を開き、「GFANZアジア太平洋CEOラウンドテーブル」を立ち上げたほか、①地域の金融機関の参加拡大②GFANZによる調査の地域への普及③公共セクターとの連携④新興国や途上国への資本の移動の支援ーーの4つの優先戦略を掲げた。
日本支部の立ち上げには、金融庁、財務省、日本銀行、経済産業省、環境省を含む国内官公庁・公的機関が支援している。日本のGFANZおよび傘下の金融連合への署名機関は、大手金融機関を中心に20社以上となっており、「APAC地域では日本からのメンバーが最多」と誇っている。これまでTCFDへの署名機関も全体の3割を占め、「国別では最多」を誇ってきた。
こうした参加機関数の多さから「日本は気候変動ファイナンスにおいて優れたリーダーシップを発揮してきた」と主張している。だが、TCFDが目指す気候情報開示を具体化する国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)での議論では、日本は、米欧が主導する流れに追随する「フォロワー」の立場にとどまってきた。アジア太平洋では、シンガポールや香港等がサステナブルファイナンスのアジア国際金融センターとしての座を巡って競っており、日本の金融界がアジアで真のリーダーシップを発揮できるか、正念場でもある。
GFANZ副議長のメアリー・シャピロ氏(元米証券取引委員会委員長)は「ネットゼロ目標を掲げた金融機関がお互いから学び、ステークホルダーと協働しながら国内、地域、世界のネットゼロ目標の達成に貢献するGFANZ日本支部の設立を通じて、日本が気候変動ファイナンスにおいてもリーダーシップを発揮する事を嬉しく思っている」と述べた。
議長に就任する第一生命保険会長の稲垣精二氏は「日本には世界有数の金融機関があり、APAC地域の脱炭素化に向けた資金調達は、気候変動との闘いを世界的に成功させるために極めて重要。GFANZ日本支部は、気候変動対策における日本のリーダーシップをさらに高めるために不可欠だ」としている。
GFANZと傘下の金融業態別ネットゼロ同盟には、50カ国の575以上の会員企業が参加している。脱炭素を金融面から主導する活動が、化石燃料エネルギー関連の企業等への投融資の停止・引き揚げ等を伴うことに対して、各国の独禁法に抵触する懸念等から、米欧の金融機関を中心に脱退する機関や、参加を見合わせる機関が増えている。