三井住友フィナンシャルグループ（SMBC）。環境汚染が懸念される「東アフリカ原油パイプライン（EACOP）」計画に「現在は関与していない」として撤退方針を明らかに（RIEF）
2023-05-16 23:58:05
各紙の報道によると、三井住友フィナンシャルグループ（SMBC）は16日、仏エネルギー大手のトタルエナジーズ社が主導して、アフリカで計画している大規模な原油パイプライン事業「東アフリカ原油パイプライン（EACOP）」について「（SMBCは)現在は関与していない」と発言した。同事業は環境への重大な影響が懸念されるとして内外の環境NGOらが反対運動を展開しており、英Standard Chartered Bankも最近になって事業への参加を見送る方針を打ち出している。
Bloombergの報道によると、SMBCの「EACOP関与否定」発言は同社の高梨雅之グループCSuO（チーフ・サステナビリティ・オフィサー）が、SMBC全体での気候変動への取り組みに関する説明会で述べたという。
SMBCはEACOP事業を推進するフランスのエネルギー大手のTotal Energyの財務アドバ イザーと、投融資の大半を占めるプロジェクト・ファイナンスの共同幹事行も務めていた。Standard Charteredも財務アドバイザーだった。両金融機関の離脱で事業の財務アドバイザーは他の金融機関が新たに参加しない限り、中国の中国工商銀行（ICBC）だけとなる。https://rief-jp.org/ct7/132888
EACOP計画は、ウガンダのティレンガ油田等から採掘する原油（日量21 万6000バレル）を、電気で加熱した形でタンザニアのタ ンガ港から輸出するために、総延長1443kmのパイプラインを建設する計画。総事業費は50億㌦（約6700億円）。今年中にも着工の予定とされている。
しかし、パイプラインはビクトリア湖沿いを通り、事故等が生じると、数百万人の生活を支える水資源汚染が懸念されるほか、重要な生態系を保全している自然保護区への影響も指摘されている。石油生産ピーク時には、年間で石炭火力発電所9基分に相当する3400万㌧のCO2が排出されると見込まれる。
SMBC高梨CSuOの「現在は関与していない」発言は、これらの取り組みからの撤退をすでに決めたことを意味するとみられる。同事業のプロジェクトファイナンスに参加が見込まれているとされてきた金融機関の中には、中国のICBCのほか、中国銀行、中国建設銀行、中国農業銀行等の中国勢や、米銀ゴールドマンサックス、Bank of America、日本の三菱UFJフィナンシャル・グループ（MUFG）も含まれるとされる。
現在のところ、MUFGは同事業から撤退か残留かの方針については表明していない。共同事業開発企業には、中国国有石油企業の中国海洋石油（CNOOC）、ウガンダ国営石油会社（UNOC）、タンザニア石油開発公社（TPDC）等が名を連ねる。
EACOP事業による環境・社会面での深刻な影響の懸念に抗議する住民や市民団体への人権侵害も多数起きており、訴訟も複数提起されている。環境NGOの350.org Japanによると、これまで同事業に関与してきたSMBCグループの三井住友銀行は、事業を主導するTotal Energyに対して2016年から20年までに約10億㌦（約1360億円）の資金を提供してきたという。
350.org Japanは、2022年5月25日の「アフリカの日」にEACOP事業に反対する声明を発表したほか、これまでも内外でSMBCに対して事業からの撤退を求める抗議行動を展開してきた。今回のSMBCグループ幹部の発言について「世界の市民社会が声をあげ続けた成果だと言える。改めて、SMBCグループ及び三井住友銀行に対して、EACOP事業について、将来にわたって関与しないとの言明を求める」との声明を出した。https://world.350.org/ja/press-release/20230516/
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-05-16/RUMSB9T1UM0W01
Research Institute for Environmental Finance