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三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)。気候対応策「強化」。非OECD諸国向けの一般炭向け融資は2040年までにネットゼロ化。サステナブルファイナンス総額50兆円に増額(RIEF)

2023-05-18 17:04:16

SMBC003キャプチャ

 

 三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)は、「気候変動に対する取組の強化」策を改定、石炭鉱業(一般炭)の融資残高をOECD諸国向けを2030年までにゼロに、非OECD諸国向けは40年までとする方針を盛り込んだ。ただすでに融資先の三井松島や出光興産等はオーストラリアの石炭採掘事業からの撤退を決めており、「SMBCの目標設定は保守的過ぎる」との指摘もある。Scope3の投融資先の排出量(financed emissions)の中期目標を、鉄鋼と自動車の両セクターについて今年中に設定し、2024年中に対象となる9セクターすべての目標設定を完了する。

 

 石炭向け融資方針については、すでに石炭火力発電向け融資について昨年8月の改定で、新規および拡張事業向け融資の停止を宣言している。既存の同事業向け融資残高は22年3月末で、プロジェクトファイナンスで約2300億円、コーポレートファイナンス(設備紐付き分)で約800億円。これらの融資残高のゼロ化は2040年度としている。

 

 石炭鉱業(一般炭採掘向け)融資についても昨年8月の改定で新規・拡張事業への融資停止を打ち出している。今回、それに加えて既存の融資残高の削減目標として、OECD諸国向けは2030年度まで、非OECD諸国向けは2040年度までに、それぞれネットゼロとするとした。22年3月時点の融資残高はそれぞれ約200億円、約560億円。融資はプロファイ、コーポレートファイナンスの合計。

 

SMBC001キャプチャ

 

 SMBCの融資先では出光興産が今年2月、100%出資の出光オーストラリアが保有する豪州エンシャム石炭鉱山の全権益を現地企業に売却して撤退した。三井松島ホールディングスも今月15日に、権益を保有するオーストラリアのリデル炭鉱について、既存鉱区が終掘する9月以降は採掘を継続せず、今年度で生産・販売事業を終了すると発表した。

 

 三井松島は豪州の石炭採掘事業について、採掘許可期限が切れる24年3月期の後も採掘継続を目指し、隣接地域への鉱区延長を豪州当局に申請していた。しかし豪州当局は延長先の地域にある先住民族の文化的施設を優先し、同社の申請を否認した。オーストラリア自体、温暖化対策のため、開発事業を石炭から天然ガス、さらに再エネへとエネルギーシフトを促進している。

 

 こうしたグローバルなエネルギー転換の動きを踏まえると、「OECD向け2030年度」「非OECD向け2040年度」とするSMBCの一般炭採掘事業のネットゼロ目標は「緩すぎる」。石炭火力発電のネットゼロ目標も40年度だ。これらの「保守的な目標」設定は、日本政府のグリーントランスフォーメーション(GX)構想により、石炭火力発電が「延命」できるとの前提に立っているようだが、果たしてそうなるかどうか。

 

SMBC002キャプチャ

 

 SMBCは高炭素排出セクター向けのScope3(financed emissions)の削減目標については、すでに電力、石炭、石油・ガスの3セクターの2030年度中期目標を設定している。今回、今年中に鉄鋼と自動車について設定することを明らかにした。セクター別目標設定は、ネットゼロ銀行同盟(NZBA)が定める9セクターを対象とする予定で、残り4セクターとなる。

 

 昨年に目標設定した3セクターのうち、石炭部門の削減率(2021年3月比)は22年3月末で45%削減を実現し、30年目標(37~60%減)の目標を1年で達成した形だ。石油・ガス部門も、22年3月末比で20%削減で目標(12~29%減)の範囲内にある。これに対して、電力部門の削減率は4%で、目標(41~58%)との隔たりは大きい。石炭、石油・ガス両部門では、中期目標自体が「保守的過ぎる」ことを裏付ける結果となっている。

 

 今後、両セクターの目標見直し、あるいは30年度目標の前倒し修正が必要になりそうだ。また、電力部門については、グローバルな脱炭素化の動向を踏まえたエンゲージメントの強化が求められる。

 

 今年中に中期目標を設定する鉄鋼、自動車セクターについては、SMBCの鉄鋼向け融資による排出絶対量(21年度)は8.5Mt-CO2e、原単位で2.0tCO2e/t-Steel、自動車は原単位で217t-CO2e/vkm。目標設定に際しては鉄鋼の場合、「1.5℃シナリオ達成を見据えつつ、 国内外の需要見通しや技術革新の進捗を考慮する」とし、自動車については「SBTiガイダンスを参照し、WTW(Well to Wheel)でライフサイクル排出量を対象とする」としている。

 

 サステナブルファイナンスの目標額は、これまで2030年度に30兆円としていたが、50兆円に引き上げる。22年度末比の累積の実績は15兆円。22年度単年度は7兆円となっている。

https://www.smfg.co.jp/news/pdf/j20230515_01.pdf

https://www.smfg.co.jp/news/pdf/j20230515_02.pdf