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三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)、気候対応の「ネットゼロ銀行同盟(NZBA)」から脱退へ。野村ホールディングスも追随の検討。米トランプ政権配慮で金融庁も了承か(各紙)

2025-03-04 17:01:40

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  各紙の報道によると、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)が脱炭素をめざす国連主導の「ネットゼロ金融同盟(NZBA)」から脱退することがわかった。野村ホールディングスも同様の検討をしているという。米国のトランプ政権下では、共和党主導の反ESGキャンペーンの圧力で、JPモルガンチェース等の米大手銀行がそろってNZBAから離脱したほか、カナダの大手行も離脱した。日本の金融機関には反ESGの圧力はほとんどないとみられるが、日本の大手銀行が米銀等に追随離脱するのは、トランプ政権に配慮する日本政府による「要請」との見方もある。

 

 日本経済新聞が電子版で報じた。NZBAに参加している日本の金融機関は、3メガバンクと、野村、農林中金、三井住友信託銀行の6行。このうち、SMFGが離脱を明確にし、野村も検討中としている。NZBA自体は世界44カ国の銀行135行が署名しており、2050年のネットゼロ実現のための取り組みを宣言している。参加銀行の総資産額は56兆㌦(約8288兆円)に達する。

 

 NZBAからの離脱の動きは、日本の金融機関ではSMFGが初めてになる。同社は、現在、全国銀行協会の会長行を務めており、他のメガバンクやNZBA署名機関に先駆ける形で、離脱することになり、他の署名機関も追随する公算が高い。NZBAは国連が主導し、グローバルな主要銀行が投融資活動に際してネットゼロを促進する取り組みを確約する活動。

 

 米国の共和党主導の州当局等はここ数年にわたり、金融機関が投融資に際して脱炭素化等を促すため、排出量の多い高炭素集約型企業に脱炭素転換等を働きかけることについて、反トラスト法(独禁法)に抵触するとのキャンペーンを展開している。トランプ政権の再登場とともに、同政策が連邦の政策として拡大されるとの見方から、昨年末から今年にかけて、米銀、カナダ銀の大手行が相次いで、離脱を表明している。

 

 これに対して、欧州の銀行や、日本以外のアジアの銀行等は「静観」の形を続けている。今回のSMFGの動きは、日本の銀行が、欧州銀と同じ「従来の静観する立場」から脱して、トランプ政権が推進する反ESGの政策寄りの行動をとることを暗黙に示す形でもある。日本の大手銀行が、こうした行動を「自主的」にとるとは思えないことから、事前に金融庁の「暗黙の了解」を得たうえで、全銀協会長行のSMFGが率先する形で、離脱表明に動いたとみられる。

 

  日経の報道では、SMFGは「気候変動への対応は強化する」(幹部)と強調し、2030年に向けて掲げたサステナブルファイナンスの投融資目標を維持するほか、50年までに融資先の企業が排出する温室効果ガス(GHG)を実質的にゼロとする目標も続けるとしているという。また、国内企業の脱炭素を見据えた投資の重要性は増しており、金融機関としての支援を一段と強めると説明しているという。

 

 しかし、それならばNZBAから離脱する理由は見いだせない。米国の金融機関の場合、共和党系州当局や、連邦下院議会等から、脱炭素促進のための共同行動をとることは反トラスト法違反の可能性があるとの「圧力」を受けていたことが大きい。しかし、日本の金融機関に対して米州当局がそうした行動をとっているとは思えない。そう考えると、今回のSMFGの行動には、日本政府の「政治判断」が影響しているとみることができる。

https://www.unepfi.org/net-zero-banking/members/

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB2055N0Q5A220C2000000/?type=my#AAAUAgAAMA