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バングラデシュでの日本政府主導の「マタバリ石炭火力発電所事業」、アクセス道路建設が違法として、現地の高等裁判所が工事差し止め命令。資金供給先の国際協力機構(JICA)ガイドラインにも違反(RIEF)

2021-09-14 17:20:57

Bangradeshuキャプチャ

 

 日本政府主導で建設が進むバングラデシュのマタバリ超々臨界圧石炭火力発電事業に関連して、現地のダッカ高等裁判所が同発電所のアクセス道路建設に伴う河川の埋め立て工事が違法として差し止め命令を出した。同事業は国際協力機構(JICA)が政府開発援助(ODA)で支援しているが、違法な工事を支援する形となる。同事業の中止を求める同国及び日本の環境NGOらは、1JICAに対して資金貸付の停止を要請している。

 

 (写真は、バングラデシュ・ダッカの高等裁判所)

 

 違法工事と認定されたのは、同発電所に通じるコヘリア(Kohelia)川沿いに建設中のアクセス道路。バングラデシュ政府の実施機関が同川を埋め立てて工事をしていることで、住民の川へのアクセス等に支障が生じているほか、埋め立てによる生態系への悪影響も懸念されている。しかし、環境アセスメント報告書には同埋め立て工事の影響評価が含まれていないという。

 

 差し止め提訴はバングラデシュ法律家協会(BELA)が求めていた。高等裁判所は政府当局に対して、河川の保全ができていない理由を問い、工事に付与された環境影響評価と環境改善措置は取り消されるべきではないと質した。さらに国家河川保全委員会と環境省に対して、工事で生じた損害評価を提出するよう命じた。

 

 環境省によると、同省は今年1月に、マタバリ火力発電に通じる6.5kmの長さの川沿いの道路建設を認めている。現地での報道では、道路・ハイウェイ省は、この許可を受けて、コヘリア川の7.4km分を埋め立て、4車線の道路建設計画を打ち出している。

 

 同河川の埋め立て問題については、わが国でも今年の3月5日に開催された財務省とNGOの協議でも指摘されている。環境NGOの気候ネットワーク(KIKO)によると、NGO側から改善の要請を出したことを受け、財務省担当者は「適切な環境社会配慮が行われるように改めて関係者への伝達を図っていきたい」との回答が示されたという。しかし、現在に至るも、いまだに土砂は撤去されていない。

 

 KIKO等は、JICAの「環境社会配慮ガイドライン」では、JICAが「相手国及び当該地方の政府等が定めた環境や地域社会に関する法令や基準等を遵守している」ことを確認することが要件であるほか、相手国等がJICAの要求事項を満たしていない場合等は、JICAは資金協力等の変更を求めるとの規定がある点を指摘。ダッカ高裁の工事差し止め命令を踏まえ、JICAはガイドラインに従って本プロジェクトに対する貸付実行を停止すべき、と要請している。

 

https://www.dhakatribune.com/bangladesh/court/2021/09/12/high-court-issues-rule-to-stop-illegal-filling-of-kohelia-river

https://www.kikonet.org/info/press-release/2021-09-13/stop-matarbari