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石炭火力存命の「切り札(?)」、三菱グループ主導の石炭ガス化複合発電(IGCC)所が福島・広野町で営業運転開始。CO2排出量は通常の石炭火力より約15%低減。インフラ輸出目指す(RIEF)

2021-11-24 12:12:59

nakoso001キャプチャ

 

 三菱グループが主導して開発を進めてきた石炭ガス化複合発電「IGCC(Integrated coal Gasification Combined Cycle)」の発電所が福島県広野町で営業運転を開始した。CO2排出量が少ないとされる超々臨界圧石炭火力(USC)より熱効率が高く、CO2排出量は通常の石炭火力より約15%少ないという。それでも年間262万㌧のCO2を排出する。出力は54万3000kW。IGCCとしては世界最大級で、年間発電量は一般家庭約15万世帯の年間電力使用量に相当する。

 

 (写真は、営業運転を開始した「広野IGCCパワー」のIGCC)

 

 IGCCは石炭火力発電の「生き残り」のために開発を進められてきた。温暖化対策の強化のため、石炭火力廃止が求められる中で、USCよりCO2排出量が15%少ないとはいえ、天然ガス火力発電よりは依然、多くのCO2を出し、営業運転に伴い排出されるCO2量は年間262万㌧となる。

 

 

 営業を開始したのは、三菱商事、三菱重工、三菱電機が主導し、東京電力も加わった「広野IGCCパワー合同会社」。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故からの復興支援と地元への雇用創出を目的として、2016年8月に同社を設立、18年4月に建設に本格着手していた。IGCCは石炭をガス化し、ガスタービンと蒸気タービンで構成される複合 発電設備(コンバインドサイクル)で発電する仕組み。

 

広野IGCC発電所の全景
広野IGCC発電所の全景

 

 従来の石炭火力では、ボイラー内で石炭を燃焼した時に発生する熱を利用して水を蒸気に変え、蒸気の膨張力で蒸気タービンを回転させて発電する。IGCCの場合、ガス化炉内で石炭をガス化させ、そのガスをガスタービンで燃焼させてタービンを回転させて発電するほか、タービンで生じた高温の排熱をボイラーに導き、その熱で水を蒸気に変えて蒸気ター ビンを回転させることでも発電する。

 

 その分、熱効率は約48%と、USCの約42%よりも向上させることができる。熱効率の上昇で使用石炭量を抑えることができるため、CO₂排出量は従来型石炭火力に比べて約15%削減できるとしている。また従来型では利用が困難だった灰融点の低い(約1,400℃以下)石炭を利用できるメリットもあるという。

 

  石炭灰が溶けてガラス状になったスラグ(鉱さい)は、建材資材として再利用する。温排水量も従来型より少なく、同社では「優れた環境性を兼ね備えている」としている。使用する石炭量は日量約3,400㌧。地元への経済波及効果としては、環境影響評価着手から運用を含め た数十年間で、福島県内に1基当たり総額800億円と試算している。

 

 三菱グループでは、今回のIGCCの稼働を世界初の大型商用機の本格運用と位置付け、今後、アジア地域等を対象に、USCに代わるインフラ輸出の柱に据える考えのようだ。「世界最高の熱効率によりCO₂排出量の削減に貢献し、福島をクリーンコール技術の世界的拠点とし、海外技術者の往来を促進する」との展望を描いている。

 

 福島を「脱原発」の拠点ではなく、「石炭維持」の拠点に移行させる狙いともいえる。

 

http://www.hirono-igcc.co.jp/topics/20211119254/