米環境保護庁(EPA)、乗用車等の新燃費規制公表。2026年までに現行基準より27%引き上げ。EV化推進で、温室効果ガス30億㌧超の削減へ(RIEF)
2021-12-21 15:51:25
米環境保護庁(EPA)は20日、自動車の新たな燃費規制を公表した。乗用車の燃費基準について、現行の1ガロン当たり43㍄(1㍑当たり約18.3km)とされてきた基準を、2026年までに27%引き上げて同55㍄(同約23.4km)とする。EPAは今回の燃費規制強化によって、2050年までに米国民の燃料支出を2100億~4200億㌦(約24兆~48兆円)節約できるほか、温室効果ガス(GHG)を30億㌧以上削減できるとしている。
EPA長官のマイケル・リーガン氏は「われわれは科学に従い、ステークホルダーの意見も聞き、人々と地球に害をなしている汚染を積極的に削減し、同時に家計の節約にもつながる強固で厳格な基準を設定する。EPAは人々の健康を守ることを最優先する」と表明した。
新燃費規制の対象となる車種は、乗用車と多目的スポーツ車(SUV)など「小型トラック」となる。EPAは今年8月に公表した案では1ガロン当たり52㍄に設定する考えだったが、さらに5%強化して55㍄に引き上げた。
新基準はトランプ前政権が制定した現行基準より25%厳しいほか、オバマ政権が2012年に制定した基準(25年に54.5㍄)に近い。欧州や米カリフォルニア州がガソリン車の実質廃止を含めた厳しい燃費規制を掲げるなか、米政府も自動車メーカーに踏み込んだ対応を求めることになる。
EPAは今回の基準強化による燃費の改善効果は、2026年発売の対象車両のライフタイム平均で、自動車のコストアップ費用を超え、消費者一人当たり1000㌦以上安くなると試算している。
EPAは今回の基準強化に加えて、大統領令「Strengthening American Leadership in Clean Cars and Trucks」に基づいて、2027年以降の基準強化の作業も開始するとともに、大気清浄化法(CAA)による自動車からの複数の排気ガス基準も設定し、乗用車やSUV等をネットゼロに移行させるスピードアップを図るとしている。
今回の規制強化で排出削減されるGHG量の約30億㌧は、米国全体の排出量(2019年実績)の半分以上に相当する。規制強化の効果は、費用対効果分析、健康影響の改善、ウェルフェア享受等を踏まえており、米国経済社会が享受するベネフィットはコストを上回り、1900億㌦(約21兆4700億円)に達するとしている。
EPAの規制強化を想定して、米主要自動車メーカーのゼネラル・モーターズ(GM)などはEVシフトを打ち出している。連邦議会で成立した「超党派インフラ法(Infrastructure Investment and Jobs Act)」では、2030年までに全米で50万のEV向けの充電ステーションの建設に75億㌦を投じるほか、蓄電設備の製造やリサイクル等に70億㌦超の出費を決めている。EV購入者に対する最大1万2500㌦(約140万円)の税控除策にを盛り込んだ歳入・歳出法案は審議中。
EPAでは今回の燃費基準の強化で、米国の新車販売に占めるEVとプラグインハイブリッド車(PHV)の比率について、20年の2%台から23年に7%、26年に17%まで高めることを目指す。